気持ち
どたどたと、決して軽やかではない足音が近付いてきて、乱暴に扉が開いた。
僕は、その足音の主が分かっているから顔をあげない。
「こんな所にいたのかい……」
少し溜息混じりの彼の声が降ってきた。
「…ちょっと……調べたい事があったので…」
僕は下を向いたまま、少し突慳貪に答えた。
約束は、16時。
塾に行く前に話したい事があるからと、一方的に呼び出された。
今は、もう17時を少し回ったところ。
僕は待ち合わせの場所に行かず、こうして図書室で面白くもない本とにらめっこをしていた。
「ねぇ…光子郎?」
「……塾は、どうしたんですか?」
話し掛けようとしてきた声に、わざと別の話を振る。
「あぁ、今日はもう間に合わないからサボリ。どうせ受験も終わった事だし、1日くらい大丈夫だから」
苦笑しながら丈さんは、僕の隣の椅子に腰掛けた。
「それにしても、ひどいよ光子郎。どうして来てくれなかったんだい?」
僕はそれには答えず、俯いたまま、無言でやり過ごす。
そんな僕をみて、丈さんは一つ、小さな溜息を漏らした。
そして、僕も、丈さんも、お互いに口を開かずに無言のまま……
……何分が経ったんだろう。
僕はこの奇妙な静寂に耐えきれなくなって、重い口を開いた。
「………どうして怒らないんですか?」
僕はちらりと横目で丈さんの顔を覗いた。
丈さんは一瞬キョトンとした顔を見せたかと思うと、今度はニッコリ笑った。
僕は慌てて目を逸らして、また俯いてしまう。
「そんなの、光子郎の気持ちを考えたら怒ったりなんてできるわけないよ」
「だって、僕の方が一方的に話があるなんて呼びつけたワケだし」
「僕がちゃんと光子郎の返事を聞かなかったのも一因だし」
「ごめんね、光子郎。」
どうして、この人はこんな風に笑えるんだろう。
僕は、丈さんから逃げてたのに………
「だから、泣かないでいいんだよ?」
………泣いてなんかない…
でも、気が付いたら頬が濡れていて…
「…ごめ……さい……」
丈さんの手が、ゆっくり僕の頭を撫でた。
「泣かないでいいんだってば…」
そう言い乍ら丈さんは、僕の頭を肩に抱き寄せてくれた。
その、暖かな温もりが心地よくて、僕は目を閉じた。
「ごめんなさい…」
「もう、良いよ。僕の方こそごめんね、光子郎」
「光子郎の迷惑も考えなくてさ、自分の言いたい事ばかり言ってさ、本当にごめんよ」
暖かい……
僕はこんなにも丈さんのコトが好きなのに……
こんなにも、丈さんと一緒にいれて嬉しいのに……
どうして、僕は……?
「好きだなんて言って、ゴメンね…」
また、涙が溢れ出た。
好きなのに、こんなにも好きなのに
そしてまた、僕は返事を返せないまま……
END初のデジ小説はワケわからん丈×光子郎となってしまいました。
ショー太くんへのワイロのつもりで打ち始めたんですが、
想像以上のワケわからんっぷりに自分でも吃驚ですわ(殴)
『丈が光子郎に告白して、返事待ちの状態』…てなカンジでお願いします(爆)
2000.09.21. 草ムラ(中耳炎)うさぎ