「お前ってさ、寝なくても良いクセにどーしていつもパジャマに着替えるワケ?」
それは些細な疑問だった。
そりゃあ確かに、24時間ずっと同じ服を着ていろとは言わないが…
風呂からあがったらパジャマを着るのは普通だが…
寝なくても良いんだからオレ達につきあってパジャマを着る事はないと思う。
「パジャマって、リラックスできて良いですよね〜」
何だそりゃ。答えになってないじゃんよ。
ベージュにクマさんのプリントの入った可愛らしいパジャマを着たシオンは、ニコニコと微笑んでばっかりで何だか上手くかわされた気がした。
ベッドに寝転んで天井を見つめてみた。何だか寝つけない。
タツヤとアヤセの寝息が、やけに耳に障る。
クソッ… 何だかワケもなくイラつく…
ふと、ノブが回る音がした。
「………シオン?…」
「あれ?起きてたんですか?ドモンさん」
「…ああ、何か眠れなくて」
「そうだったんですか」
とてとてと足音が近付いてきた。
窓から差し込む明かりでシオンの顔がハッキリ見える。
「で?お前はどうしたんだ?」
「…その… そろそろ眠くなってきたんで…」
「へ?」
1年に1回しか眠らなくて良いのは知ってるけど、まさか今夜がその『1年に1回の睡眠日』なのか?
そんなコト、もっと早く言ってほしかった……シオンのベッドは滅多に使われないんだからと言って、勝手に私物(主に着替え等)を置いているのだ。
「あ…わりぃ… ベッド使えねぇな…」
我乍ら謝っているのかそうでないのか分からない言葉に、シオンは変わらず笑顔で頷く。
「じゃあ寝るの明日の夜にしますから」
いやいや、そこで「ハイソ−デスカ」と言うワケにはいかない。
何せ寝れない原因を作ったのはオレなワケだし…。
「あ、そうだ。それならこのベッド使えよ!…ほら、オレ何だか寝つけねぇしさ」
オレだって一晩くらい寝なくても大丈夫だし。 そう言うと…
「ダメです!!ちゃんと必要な睡眠は取らないと、体を壊したら大変ですから」
と、半分起き上がっていた体を再びベッドに押し付けられた。
でもオレの所為でシオンが眠れないなんて事があっちゃいけない…
「…じゃぁさ、一緒に寝るか?」
布団を捲ってポンポンと叩く。
するとシオンは少し躊躇ったのち、
「それじゃぁお邪魔します…」
と言って、ベッドに入ってきた。
何だかマトモに顔を見るのが照れくさくて、つい視線が泳ぐ。
「…あったかいですね、ドモンさん」
「ん?あ…あぁ、そだな…」
「ボクが毎晩パジャマを着るのは、いつ眠くなるか分からないからなんですよ」
クスクスと小さく笑うシオンの声に、そして至近距離で感じる体温にドキドキしてしまった。
………ヤバイ、余計眠れねぇ……
そんな気持ちを知ってか知らずか、シオンは小さな寝息を立て始めた。
「うわっ!同衾!!??」
そんなタツヤの叫び声で目が覚めてしまった。
眠れないと思っていたのに、いつの間にか眠ってしまったらしい。
「ドモン〜お前いくら欲求不満だからって、シオン連れ込むなよ〜」
「ばっっ馬鹿っ!違うよ、コレは…」
「ハイハイ、言い訳なんかしないの!」
「タツヤ… お前なぁ…」
ニヤニヤと笑い乍らタツヤが茶化す。…イカン、ムキになったら負けだ。
タツヤは「お邪魔虫は消えるから〜」なんて言って部屋を出て行ってしまった。
冷静になって起き上がろうとしたら、シオンがピッタリとくっついて眠っていることに気がついた。
起こすのも何だか躊躇われるので、そのままの体勢でいることにした。
……そういえば、眠るシオンなんて滅多にお目にかかれるモンじゃねぇよな…
ついまじまじと寝顔に見入ってしまう。
たまにはこんなコトも良いな…と思いつつ、再び訪れた睡魔に襲われ、オレは逆らう事なく眠りに落ちてしまった。
目が覚めると、きっとユウリの小言と
何か言いた気なタツヤの視線が待っているんだろう…
とまぁ、そんな事を考えつつ………
END
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