THE KINKS

キンクス

第1期メンバー。左からピート・クェイフ(B)、ミック・エイヴォリー(Dr)、レイ・デイヴィス(Vo,G)、デイヴ・デイヴィス(G,Vo)

 

「ビートルズを見たとき、彼らにできるなら

自分達にもできないはずはない、と思った」

レイモンド・ダグラス・デイヴィス


HISTORY



 レイとデイヴのデイヴィス兄弟を中心に1964年にレコードデビュー。 3枚目のシングル「You Really Got Me」が全英チャート1位の大ヒットを飛ばし、ビートルズ、ストーンズに並ぶイギリスのスター的存在に挙げられた。 You Really Got Meの独特のサウンド、リフなどから、当時の彼らの音楽は“キンキー・サウンド”などと呼ばれていた。 また後に、パンク・ムーヴメント到来時に、当時の彼らのサウンド(と、ザ・フーの作品)が再評価されることになる。 

 しかし主に曲を書いていたレイの作品の独創性は、サウンド面だけではなかった。 彼らの3枚目の全英No.1曲「Sunny Afternoon」は、当時主流のラヴ・ソングとはかけ離れた、「栄華を築いた後に、税務署や彼女になにもかも巻き上げられて、今は何も無い状態でビールを飲んでいる」男が主人公の歌である。 この作品のように、シニカルで乾いたユーモア、イギリス的な独特の言い回し、皮肉などを歌った作品が多いのも、キンクス(レイ・デイヴィス)の特徴である。

 さらに、ビートルズの「Sgt. Pepper ...」に影響を受けて制作されたと思われる「The Village Green Preservation Society」から、“トータル(コンセプト)・アルバム・メーカー”としての権威を築くことになる。 これから後の彼らの作品は、ほとんどがトータル・アルバムのつくりになっているのも特徴だ。 「Village Green ...」と、その後に発表された「Arther or The Decline And Fall Of The British Empire」[邦題:アーサー、もしくは大英帝国の衰退ならびに滅亡]、「Lola Versus Powerman And The Moneygoround Part One」[邦題:ローラ対パワーマン、マネーゴーランド組第1回戦](ハァ〜〜〜、長いぞ〜〜!!)はコンセプト・アルバム3部作として有名である。

 キンクスの楽曲は、数多くのアーティストによってカヴァーされている。 有名なところでは、ヴァン・ヘイレンの「You Really Got Me」、プリテンダーズの「Stop Your Sobbing」(ファースト「Kinks」収録曲)、ジャムの「David Watts」(5th「Something Else」収録曲)などである。 それだけ後のアーティスト達への影響の大きさがうかがえる。

 キンクスは幾多のメンバーチェンジ、レコード会社移籍(パイ 1964〜1971、RCA 1971〜1976、アリスタ 1976〜1986、ロンドン 1986〜1990、ソニー 1992〜)を繰り返して、現在も現役で活躍する、ローリング・ストーンズに次ぐ最長寿ロックバンドである(今年で活動35周年ですね)。 しかしオリジナル・アルバムは93年の「Phobia」以来発表されていない(ライヴアルバムは97年に出ました)。 新作の発表が期待されるところである。

第2期メンバー。左からデイヴ、ジョン・ダルトン(B)、ジョン・ゴスリング(Kbd)、レイ、ミック

 


私とキンクス

 なにをかくそう、私が60年代ブリティッシュ・ロックバンドで一番好きなのがキンクスなのです(こんな私って、ひねくれてますか?)。 キンクスのどんなところが良いのでしょう? たいして上手くないのに、1度聴くと忘れられない、レイの鼻にかかったけだるいヴォーカル? “コンセプト”にこだわり続ける姿勢? ひねくれてる歌詞? そうとう兄弟の仲が悪いらしいのに、その2人が中核を担って現在まで活動しつづけること? バンドのリーダーの顔が、どう見てもお笑い系に見えちゃうこと(笑)? いいんです。 そこが好きなんです。 それがキンクスなのです。 こんなバンド他にありますか? One And Onlyってやつでしょうか。 デビュー当時から、個性が際立ってたわけですよ。 それがキンクスの魅力なのではないでしょうか。

 キンクスって、今ビートルズやストーンズと比べてみたら、どうしてもマイナーに見られがちですよね。 60年代当時は、肩を並べられるほどの存在だったのに。 確かに70年代以降は、目立ったヒット作といえば83年の「Come Dancing」くらいしかないので、そう見られても仕方ないのかもしれません。 でも本人達は、そんなことどうでもいいと思っているはずです。 そうでなけりゃ35年もバンドなんかやってないでしょう。 そう、彼らはマイナーなのです。 “B級”なのです。 “超一流のB級”なのです。 そんなB級美学を、私はキンクスから学んだように思えます。 好きなバンドをこんな風に紹介してしまう私って、やっぱりひねくれて(KINKして)ますか?

  

余談その1:「You Really Got Me」の前に出した2枚のシングルは、全く売れなかったそうです。 デビューシングルは、ビートルズもカバーした、リトル・リチャードの「Long Tall Sally」。 しかしレイ本人が、「この曲を聴きたければ、僕だってリトル・リチャードのレコードを買うよ」と言うくらい。 2枚目の「You Still Want Me」にいたっては、全英で127枚しか売れなかったとか... 私はどちらの曲も結構好きなんですが...

余談その2:「Sunny Afternoon」は、あの「およげ!たいやきくん」の元曲と言われています。 真偽の程は、ご自分の耳で確認してみてください。

余談その3:またパクりの話ですが、ドアーズの「Hallo, I Love You」はキンクスの「All Day And All Of The Night」のパクりだという話は有名ですが、そのキンクスが、アルバム「Give The People What They Want」でドアーズをパクり返しているのは、興味深いです。


独断と偏見で選ぶこのアーティストのこの1枚

The Village Green Preservation Society

                 (ヴィレッジ・グリーン・プリザヴェイション・ソサイエティ)

 そういえば、この作品もキンクスの方向性を決定付けるアルバムですね(“コンセプト・メーカー”としてのキンクス)。 このアルバムを聴くたび、「あぁ、イギリスっていいなぁ」としみじみ思ってしまいます。 アルバム全体にわたって、イギリスの古き良き時代の習慣に対する憧れや、のどかな田園風景が描かれています。 タイトル曲や、「Village Green」(タイトル曲とは別のものです)なんか、とっても日本人受けしそうないい曲です。 この作品から続く“コンセプト・アルバム3部作”(タイトル長いから省略)や、レイがアメリカに対しての憧れを歌った、RCA移籍第1弾「Muswell Hillbillies」も必聴です。




アルバム紹介

タイトルが英語だけのものは、現在日本版はないかもしれません(未確認)。

 1 キンクス Kinks
 2 カインダ・キンクス Kinda Kinks
 3 キンク・コントラヴァーシー The Kink Kontroversy
 4 フェイス・トゥ・フェイス Face To Face
 5 サムシング・エルス Something Else By The Kinks
 6 ライヴ・アット・ケルヴィン・ホール The Kinks Live At Kelvin Hall
 7 ヴィレッジ・グリーン・プリザヴェイション・ソサイエティ
              The Village Green Preservation Society
 8 アーサー、もしくは大英帝国の衰退ならびに滅亡
              Arthur Or The Decline And Fall Of The British Empire
 9 ローラ対パワーマン、マネーゴーランド組第1回戦
              Lola Versus Powerman And The Moneygoround Part 1
10 パーシー Percy
11 マスウェル・ヒルビリーズ Muswell Hillbillies
12 この世はすべてショービジネス Everybody's In Show Biz-Everybody's A Star
13 プリザヴェイション 第1章 Preservation Act 1
14 プリザヴェイション 第2章 Preservation Act 2
15 ソープ・オペラ Soap Opera
16 不良少年のメロディ Schoolboys In Disgrace
17 Sleepwalker
18 Misfits
19 Low Budget
20 One For The Road
21 Give The People What They Want
22 State Of Confusion
23 Word Of Mouth
24 Think Visual
25 The Road
26 UK Jive
27 フォビア Phobia

 

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