賃金の減額は会社側の自由か


●質問---------------------------

 「会社は業績が不振なため、社員の賃金を2割ほど減額すると言い出しました。しかし、それでは生活が成り立ちません。賃金は会社が自由に決められるのでしょうか」


●答え---------------------------

 企業は従業員の賃金を、自由に減額できるわけではありません。賃金を減額するためには、さまざまな法律や判例上の制約があります。

 賃金の減額には大きく分けて、2つの種類があると言えるでしょう。1つめは、懲戒処分として特定の従業員だけを対象とした減額。そしてもう1つは、業績の不振などを理由にした減額です。

 従業員が何らかの落ち度を犯した場合、それに対する懲戒処分として賃金を減額する企業の例は多いことでしょう。しかし懲戒処分としての減給を行なうには、そのための規定が就業規則に定められていなければなりません。すなわち就業規則に減給の規定が存在しない場合、企業は懲戒処分としての減給を行なうことができないのです。しかも減給する額が、月給の1割を超えてはなりません。これは労働基準法の91条に定められている規定です。

 従業員の側には落ち度がないのに、業績の不振などによって賃金が減額される場合もあるでしょう。しかし、この場合の減給は懲戒処分による減給よりも慎重でなければなりません。企業が従業員にとって不利となる変更を行なう「不利益変更」は、どうしてもそれが必要だと見なされる合理的な理由がないかぎり、認められないからです。「みちのく銀行事件」に対して1993年に青森地裁が下した判決では、業績給と賞与の削減に合理性がないと判断されました。「不利益変更」を行なわなければ経営が危機に陥ってしまうなどの差し迫った事情がないかぎり、「不利益変更」は認められないと考えることができます。

 また、減給額の決定に際しても慎重な態度が求められると言えるでしょう。従業員が何らかの落ち度を犯した場合の減給額が月給の1割以下なのに、何の落度も犯していない場合の減給額がそれを超えてしまうのは、明らかに矛盾があると言わざるをえません。



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