裁量労働制は社員にとって有利か不利か


●質問---------------------------

 「裁量労働制に移行するので、今後は残業代が出なくなると言われました。いくら働いても残業代が出ないというのは、会社にばかり都合のいい制度のような気がします」


●答え---------------------------

 裁量労働制を採用した場合でも、会社が従業員に対して残業を何時間でも自由に強制できるわけではありません。しかも裁量労働制を採用するためには、さまざまな条件が満たされている必要があります。

 裁量労働制とは本来、仕事を行なう上での時間管理を管理者が指示せず、個々の従業員の裁量にゆだねることを意味しています。決して企業が残業代を支払わずに済ませるための手だてではありません。

 仕事の種類によっては進め方や時間配分を管理者が指示できず、従業員が自分で臨機応変に判断しなければならない場合も考えられるでしょう。そのような場合は個々の従業員の裁量にゆだねて構わない、というのが裁量労働制の考え方です。

 このような裁量労働に関しては、企業や管理者が労働時間の管理を行なえません。すなわち労働した時間に応じて賃金を支払うという、通常の賃金の考え方が適用できないことになります。

 そこで労働基準法の38条では、このような場合の対処方法が定められました。その仕事を行なうために必要な時間をあらかじめ算定しておき、その時間だけ労働したものと見なすのです。

 8時間を要すると判断された仕事に関しては、8時間分の賃金が支払われます。その仕事を実際には7時間で終わらせる人や、9時間かかってしまう人などが出てくることでしょう。しかし7時間で終わらせた人の賃金が差し引かれないかわり、9時間かかった人にも残業代は支払われません。

 裁量労働制を採用できるのは、労働基準法施行規則の24条で定められている職種だけに限られています。現時点では研究者と技術者、および法律やマスコミ関連などの職種のうちの一部だけにしか裁量労働制は認められていないと言えるでしょう。
(なお2000年度より裁量労働制の対象となる職種は 拡大される予定)
 しかも裁量労働制を採用するためには、従業員と雇用者の合意が必要です。その上で様式13号という書式の書類を用い、「裁量労働に関する協定届」を所轄の労働基準監督署に提出しなければなりません。

 裁量労働制を採用しても、全く残業代を支払わずに済むわけではありません。普通ならば1日あたり9時間かかると見なされる仕事を行なう場合には、「三六協定」の締結と時間外賃金の支払いが必要です。深夜や休日に仕事を行なわせる場合も、それぞれ労働基準法に定められた割増し賃金の支払いが必要です。しかも裁量労働制を採用した場合、企業や管理者が個々の従業員に対して仕事の進め方や時間配分を指示することはできません。



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