法律に違反する労働契約は有効か


●質問---------------------------

 「残業代が支払われないことを私は入社時に説明され、合意した上で入社しました。自分で納得して合意した以上、残業代が支払われなくても仕方がないのでしょうか」


●答え---------------------------

 たとえ残業代が支払われないことに対して従業員の側が合意していたとしても、会社は労働基準法に従って時間外賃金を支払う義務があります。

 普通は当事者同士が合意して契約などを結んだ場合、その契約は必ず守らなければなりません。しかし労働基準法は、強行法規。労働基準法の13条には「この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする」と定められています。したがって労働契約のうち労働基準法に反する部分は、効力を持ちません。たとえ当事者同士が合意していても、内容が労働基準法の規定に反していたら無効になるのです。

 当事者同士の結んだ労働契約と労働基準法の規定とが食い違う場合、その部分に関しては労働基準法の規定が優先して適用されます。たとえ残業代を支払わないという合意が従業員と企業の間で成立していても、企業は労働基準法で定められた通りの時間外賃金を支払わなければなりません。ただし正規の手続きを踏んで裁量労働制が採用されているなど、労働基準法38条の2に該当する場合は例外です。

 ちなみに労働契約のうち無効とされるのは、労働基準法「で定める基準に達しない」部分だけです。労働基準法の規定よりも従業員にとって有利な労働契約が結ばれた場合、それは無効とされません。企業には、その労働契約を正しく順守して履行する義務が生じます。

 入社時などに企業から、労働基準法に反する採用条件を言い渡される場合は多いでしょう。しかしその時に合意してしまったからといって、諦める必要は全くありません。その採用条件が労働基準法に反しているのなら、後からいくらでも訂正を求める権利が従業員にはあるのです。もちろん労働基準監督署などの公的な機関に訴えた場合も、あなたの主張が認められることになるでしょう。



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