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連載リレー小説「ヒロとスズ」そのに
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 遼来来 >

 (ほらみろ、やっぱり葵せんせは居るんじゃないかっ)
  次の瞬間、閃光のように職員室方面へ走り去るヒロ。
  たった今まで、しおれた白菜のように、ずるずると引きずられていた男とはとても思えない。
 「葵せんせ〜っ」
  職員室前の廊下を猛スピードで走るヒロの顔面に、犬神のとっつぁんの手にした出欠名簿が、
 派手な音を立てて炸裂した。
 「廊下は走るな」
 「と……とっつぁん……どうしてそこに……」
 「職員室前に教師が居るのは当たり前だろう。あと、美里先生なら、もう急用で帰ったぞ」 
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 ツヴァイ >  

  夕暮れに肩を落とし、ヒロは帰路に就いた。
 「何を暗い顔してんのよッ。」
  バンッと大きな音を立ててスズが鞄でヒロの背中を叩いた。
 「……うるせェ……。いっそ世界なんて星になっちまえばいいんだぁ……」
  既に反撃の力は残っていないらしい。
  そんな幼なじみを見て、スズは腰に手を当て、
 「まったく。じゃあ、元気が出るものあげるわよ」
  と、鞄から二枚のチケットを取り出した。
 「はい」
 「おお、これは!」
  ヒロが目を輝かせたそれは、プロレスのチケットだった。
 「元気が出たでしょ? メインのホワイトタイガー醍醐は、真神の卒業生なんだってね。 
 確か・・・3−Cだったって、とっつぁんも言ってたし。」
  そのスズの一言が、ヒロの眠っていた思考を呼び覚ました。
  ……3−Cの卒業生で晴れ舞台と言う事は……。
 「おらッ!何してんだよ!走るぞ!」
  モーリス・グリーンをも超える勢いで走り始めたヒロ。 
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 遼来来 > 

  結局、そのまま直で後楽園ホールまでへもやって来てしまった二人。
  アツいファンですし詰め状態の、5階ホールへ向かう階段で、二人は開場を待っていた
 「もう。こんな学生服(カッコ)であたしたち浮いてるじゃないの。なんでそんなに急ぐのよ」
 「ぐふふ〜、試合開始前の控室にこそ用がありけり、だからだ」
 「はあ?」
 「お、係員が出てきたぞ。開場だ!」 
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 ツヴァイ >  

  その時、ヒロの頭の中ではジェームス・ボンドのテーマが流れていたに違いない。
  しかし、係員が姿を見せると、ボンドならば首筋に種痘を叩き落とし、悲鳴ひとつあげさせ
 ないのだろうが、情けなく隠れる辺り「にわかボンド」だ。
  そしてたどり着いた控え室。呼吸を整え、ノブに手を掛ける。
  先ほどからスズは黙っていた。呆れ「過ぎて」いる。
 「関係者以外立ち入り禁止」を踏み越えようとしているのだから。
 慎重にドアを開けると、そこには厳つい巨体とショートカットの女性、そして――。 
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