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ツヴァイ >
「美里せんせは〜!?」
そう騒然する教室で、とっつぁんは言い放った。
「心労で倒れた。お前達のアホのしわ寄せだ」
それを聞いた瞬間、ヒロは立ち上がった。
「こんなトコでこんなコトしてる場合じゃねェじゃねェか! ……あばよ、犬神のとっつあん〜
!」
窓を開けると、二階なのも構わずに飛び降りた!
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遼来来 >
「ひーちゃん、ここニ階!」
血相を変えて窓に駆け寄るスズネ。
しかし、ヒロは身軽に着地するや、きょろきょろと左右を見まわすと、保健室方面へと走りだ
していた。
スズネの「ひーちゃんのバカ〜」の声を背中に。
しかし、保健室に葵せんせはいなかった。
「美里先生なら、具合が悪いとかで、帰られましたよ?」
だがヒロは、保険医の先生のその言葉を信じなかった。
(歩いて帰れる程度で、あの葵せんせが授業を放棄するか……?)
とりあえず、職員室方面にでも情報を収集せんと向かうヒロの襟首を、何者かの腕が、むんず
と掴んだ!
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ツヴァイ >
「……俺の前で堂々とエスケープとは、いい度胸だ」
とっつぁんのしんせい臭い吐息と、脅し文句が静かに炸裂する。
「とっつぁん、僕には今、補習以上に大事な使命があるんだ。見逃してくれッ!」
振り解こうとするが、とっつぁんの横から出てきたスズネに背後から羽交い締めされると、
「あんなに楽しみにしてた補習でしょ。受けてきなさいよ」
そして、そのまま教室へと連行された……。
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山椒亭Gまる >
下校時間を告げるチャイムの音が鳴り響く。
結局、面白くもないとっつぁんの補習を、涙をのんで最後まで受けることとなったヒロは、さ
まざまな精神的ダメージにエネルギーを吸い取られ、生きた干物と化していた。
「あうぅぅ……。何でミサトせんせえがぁ〜」
すでに涙も乾ききって、出てくるのは枯れたうめき声のみである。
「水でも、かけてあげようか? トイレの」
気遣うような優しい声音で、スズがさらっと残酷な台詞をのたまう。
しかし、その声ももう今のヒロにはほとんど届いていなかった。
と、その時。
「お〜い、ヒロぉ。生きとーと? 今さっき、美里先生、職員室に居ったとよ」
そのクラスメートの声が、ヒロの瞳に光をともさせた。
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