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 連載リレー小説「ヒロとスズ」そのさんじゅう
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遼来来 >

「なに言ってやがる、てめぇの仲間の差し金だろうが」
 銃口を向けつつ、来須が決めつける。
「仲間……? あんな品性のないのがか……?」
 フリッツのつぶやきは、シェラたちにはとどかず、ただ不敵に笑ったように見えただけだった。
 次の瞬間。
 タタタンッ、と軽い破裂音が響いたと思うと、周囲に居たグールたちは、そのほとんどが地に
伏した。
 襲いかかろうとした連中の機先を制し、シェラと来須が連続射撃で撃ち倒したのだ。
 弾が足りずに撃ちもらしたヤツは、壬生が蹴り倒した。
「これで、文句はないかしら?」
 そう言いつつ、シェラがフリッツをにらむと、彼までもがグールを斬っていた。
 彼が斬ったグールは、みな彼の乗ってきたバイクに向かって倒れている。
「――私の『足』まで狙ってくるとは……。ヤツめ、本気で……?」
 シェラたちのほうなど見向きもせず、ぶつぶつとつぶやくフリッツ。 
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遼来来 >

 カキーンッ、と甲高い金属音が響き、フリッツはシェラたちに顔を向けた。
 シェラの手の銃口は、正確にフリッツに向けられ、明らかに、連続発射された形跡が見えた。
 頭と心臓に、正確に2発ずつ発射された弾丸を、フリッツは、剣の一振りで弾き飛ばしたのだ。
 両手持ちの巨大な剣を、普通の長剣のように振りまわせる彼にとっては、今手にしている長剣
など、弾丸よりも速く正確に振るのも、容易いことなのだろう。
 また、たとえ当たったところで、一発やそこらでは、ダメージを受けない自信もあるようだ。
 わかっちゃいたが、いまいましい――そんな顔のシェラに、フリッツはおもむろに口を開いた。
「……シェラ。悪いが私には、急用が出来た。さらばだ」
 そして、答えを聞く手間をかけずに、懐から取り出した「珠」を放り出す。
 とたんに、あたり一面が、鼻をつままれてもわからない、真っ暗な闇に包まれた。
「うわっ」
「なんだっ?」
「これは――『闇の珠』だよ!」
 不意を突かれたシェラたちの叫びを、巨大なバイクのエンジン音が掻き消す。
「あっ、この音はドゥカティ――逃げる気か、フリッツ!」
 エンジン音にむけて、数発の弾丸を撃つシェラ。だが、手応えはなく――。
 「闇の煙幕」が晴れた時には、フリッツの姿は、ドゥカティの巨体ごと消え失せていた。

「ち、なんてこった」
 舌打ちするシェラ。
「まあ――我々のクルマは壊されましたからね。足止めは出来た、と踏んだのでしょう」
 冷静な壬生。
「急用だと? あんたの仲間が回り道してたみたいだが――それか?」
 シェラに向かって尋ねる来須。
「まだ――もう少し、時間はかかるはずだよ。だから、ワザとダラダラ戦って、
時間を稼ごうと思っていたんだが――」
「向こうにも、いろいろあるんでしょうね。そのへんを、うまく突ければ――」
 考え深げな壬生の言葉を、バイクの爆音が断ち切った。
「――フリッツ!?」
 三人が顔を上げたその視線の先に現れたのは、フリッツのドゥカティではなく、あまり見なれ
ない、国産の大型車だった。それも、三人も乗っている!
「あっ……あれは、雨紋!?」
 壬生の言うとおり、そのバイクのハンドルを握っていたのは、歌舞伎町で「迷子」のスズを助
けた、ロックバンド「CROW」のボーカル、雨紋雷人であった。自慢の金髪ツンツンヘアーをノー
ヘルでさらしているので、どう間違いようもない。
 後ろの二人は、フィルに置いてきぼりを食った、如月と――雨紋の腰にしがみつき、ヘルメッ
トで顔も隠れているが、背中になびく黒髪は、間違いなく美里である。
 三人は、壬生たちに目もくれず、ものすごいスピードで走り去って行った。
 先行したフリッツを追っているのだろう。
「フッ……有名人がそんな無茶をして、大丈夫なのかい……?」
 壬生が苦笑する。
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