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テイル >
「くそ! どこいったんだ!?」
ヒロは走りながら考えた。
「とりあえず……アイツのいきそうな場所いってみるか!」
ヒロは走った。
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草薙珠璃 >
「畜生・・・・。一体何なんだよ」
色々考えたが結局のところ、何故スズが帰宅していないのかは解らないまま、ヒロは歌舞伎町
を走り回っていた。
「荒れた」青少年が一度は訪れるであろうこの眠らない街、スズも例外でない……そう考えた
結果なのかは、彼のみぞが知る所だ。
「……あれ?」
と、突然足を止めるヒロ。辺りを見回し、額から冷汗をたらした。
「迷った?」
……やはり、何も考えていないのかもしれない。
「……? あれ?」
その時ヒロは、自分が置かれた状況にまだ気づいていなかった。
あまり歌舞伎町に来た事が無いので、人通りが消滅した事にもあまり大きな感心を抱かなかっ
た。ただ、「人通りが異常に少ない所」という認識を得たのみ。
それがハッキリとした嫌な予感になったのは、先ほど通った場所に引き返した時。
この周辺の人通りも、皆無……というよりは、突然に消滅していたのだ。
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ツヴァイ >
大体、幼なじみと言っても、相手の好みを「熟知」している、と言うわけではない。特に考え
なくても、相手の嫌がる事、好きな事を解ってしまう、という。
そのため、「考え」て解る事ではない。
「どーすんだよ、コレ!」
ヒロが一人で叫んだ。
と、すぐに路地裏から人影が二つ、すぐに現れた。
「・・・あれかい?」
金髪を逆立て、右手に金色の布に包まれた槍を持っている男が、横に立つ少女に話しかけた。
「ひーちゃん!」
少女はスズ、男は雨紋だった。
「あーッ!」
ヒロは大口を開けて指差した。
「もう、こんな夜中になにやって――」
自分の姿を喜んでする、と思いこんだスズがお姉さんぶって説教を始めるが、ヒロはスズの横
をすり抜けて雨紋に握手を求めた。
「CROWの雨紋さんですよね!」
「ん? ああ。そうだ」
雨紋はギュッとヒロの右手を握った。
そして――
「まぁ、オレ様のファンなのは嬉しいが、さっさと帰るンだな。夜遊びなンて、いつだってでき
るぜ」
雨紋は二人の背を押し、駅の方へと歩かせた。
結局、それだけだった。
二人とも、何を喋るでもなく静かに帰宅し、翌日を迎えただけだった。
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テイル >
「……朝か……」
ヒロは起きたばかりである。
「……なんでスズ……一人で出歩いたんだ? そういう奴じゃないのに……と、時計、今何時っ
と」
ヒロは時計を見たとたんあせった。
「!!!! やべ! 遅刻だ!」
ヒロは全速力で走っている。
新宿は人が多い。避けるのに時間がかかるせいか、あせっている。
「ああ! いつも人が多い!! 昨日は全然いなかったのに……ん? ……そういえば、なんで
あの時の歌舞伎町……人がいなかったんだ?」
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