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遼来来 >
「そいつはどっちへ逃げた」 虚を突かれてぽかんとなるヒロを放り出して、フリッツは聞いた。 「……地下だ」 「ちよっと、答えてどうすんのよ、フィル」 あくまでも不信の態度を続けるシェラ。 「いや、この際、彼女の身柄を確保するほうが先でしょう」 どちらに肩入れするでもなく、如月。
南風野 >
「そうっスよ。敵の『敵』は味方!」 「ウン。今はスズちゃんを見つける方が大事なんだし」 如月の言葉に雨紋と小蒔が首を縦に振って肯定を示す。 葵も口にこそ出さないが、無駄な争いは避けるべきと瞳が訴えている。 彼らの目的はスズを助ける事。吸血鬼を退治する事では無いのだ。
コペ >
「敵の敵、ねェ……」 シェラが半ば呆れている。目の前ののん気な男女は、自分達が どんな職種なのか、忘れているんじゃなかろうか、と。そのスズ という少女を見つければ、シェラは躊躇なく撃つ。他の二人もだ。 その時、思い違いだったと気づくだろう。均衡が崩れれば、す ぐに三つ巴になる関係だということに。 「まあ、いいわ。さっさと追――」 「うふふふ〜〜〜」 一瞬前までこの場になかった声が、シェラの背後から響いてきた。 『!?』 シェラ、フィル、来須が動き、それぞれが壁の側まで飛びのいた。 すでに各々の武器を構えている。 「あ、ミサちゃんッ」 軽く弾む小蒔の声が、一瞬で場を支配した緊張を、さらに一瞬で 崩壊させる。 わずかに下がった銃口の先には、黒いローブに妖しげな首飾り、 そして、ビン底をそのまま使ったような眼鏡をした女性が立っていた。 「うふふ〜〜、ミサちゃんびっくり〜〜」 驚いたのはこっちだ、と三人は声を揃えて叫ぶところだった。気配が まったくなく、後ろに立たれていた。今も、神秘的というか妖しげな 存在感を放っており、本当にそこに立っているのかも疑わしくなって くる。 「紹介するね。ボクたちの友達の裏密ミサちゃん。こういった事に詳 しいからボクたちが応援に呼んでおいたんだよ」 「ウフフ〜〜〜、よろしく〜〜」
みーやん >
小蒔に紹介された元真神の黒魔術師は、昔と少しも変らない 不気味な笑顔を浮かべた。 共に学生時代を過ごして慣れた女性二人を除いて、場がまた もや凍りつく。葵が話し掛けた。 「ミサちゃん、久しぶりね」 「ウ〜フ〜フ〜。変ってないわね〜〜葵ちゃんも〜。懐かしいわ〜」 ――そりゃ、こっちの台詞だっ!!―― 学生時代の彼女を知る者は、心の中で共通の叫びをあげる。 「う、裏蜜さん? スズの居場所、分かる?」 比較的影響の少なかったヒロが尋ねると、彼女は黒いローブ の中から、手のひら大の水晶玉を取り出した。 「ウ〜フ〜フ〜〜、ミサちゃんにお任せ〜〜」 ヒロの質問に応えるように、黒魔術師はとっても楽しそうに 水晶玉を掲げ、懐かしの呪文を呟き始めた。 「エロイムエッサイム……エロイムエッサイム……」
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