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「そんな馬鹿な、という言葉が、どんなに非論理的かは、承知の上ですが・・・この際は、あえて言わせてもらいましょう。・・・そんな、馬鹿な!
(栗本薫著・「新・魔界水滸伝」/ライディン・ファイアーブラス)

★ある男の(哀しい)うわごと★
君と初めて出会ったのは、転校してきたその日のことだったね。
「おとなり同士、仲良くしましょうね」
優しくほほえむ君に、心が和んだよ。
「へへへーっ、葵もやっと、オトコに興味を持ったかあ」
親友のからかいに、照れて頬を染めるその姿も、とてもかわいかった。
僕が喧嘩に巻きこまれたと聞いて、あわてて助けを呼んでくれたりもしたね。
息せき切って駆けつけてくれた、その必死な姿、胸を打たれたよ。
そんな君が、旧校舎で行方不明になったと聞いた時は、息が止まるほど驚いた。
暗い廊下に倒れている姿を見た時は、もう目の前が真っ暗になったよ。
思わず駆け寄り、助け起こした君が、僕の名を呼んでくれた時、
「僕は・・・このひとのことを、好きなのかもしれない」
って、初めて思ったんだ。
そして、あのときから、僕たちの戦いも始まった・・・。
花見の時は、楽しかったよ。
君は、集合時間の打ち合わせで、なんとなくそわそわしていたから、思いきって誘ってみたんだ。
「もう・・・強引なのね」
とか言いながらも、OKしてくれて、嬉しかった。
そして、たぶん、誰にも言えずに苦しんでいた悩みを、僕に打ち明けてくれた。
信頼されているんだ、という喜びと、
一見、完璧に見える彼女が、実はこんなに苦しんでいるんだ、という不憫さに、
思わず君を抱きしめてしまった。
「イヤ・・・離して」
とか言われちゃったけど、それから、なんとなく僕たちの距離が近くなったのは、自惚れだったのかな?
君が夢妖に捕まったときは、足元に大きな底無しの穴が開いたようだった・・・。
プールでの君は、ほんとうに眩しかったし、また悩みを打ち明けてもくれた。
君が、意外に深い悩みを抱えていることを知るたびに、「救いたい」という気持ちは強くなる。
クトゥルフの洞窟では、思いもかけぬ抱擁に、赤面しあったりもしたね。
それに、現実離れした事件に、ともに力を合わせて立ち向かうということは、ほんとに絆を深めてくれた。
ローゼンクロイツ事件は、ほんとに衝撃的だった。
君が、得体の知れない液体に全身を浸けられているのを見た時は、まさか、遅かったのかと愕然としたよ。
そして、自分のなかに、これほどの「怒り」という感情が眠っていたのか、と驚くほどに怒りが沸いた。
君をこんな目にあわせたヤツらに、そして、君を護れなかった、自分自身に。
幸い、無事だったから、ほんとによかった。
無事を確認したアト、裸の君を抱き留めた、という行動に、あとからドキドキしたんだけど。
そして、路頭に迷いかけたマリィを救った、君の優しい英断は、天使のように輝いて見えたよ。
鬼道衆との最終決戦前のミニデート(?)は、楽しかったよ。
だけど、今思うと、あの時に、君の苦しみに、早く気づいているべきだったんだ・・・。
君は、九角のもとに走ってしまった。
僕たちを、そして東京の人々を、護るため、だというのはわかる。
また、他ならぬ九角の術のせいだというのも、わかる。
だけどやっぱり、僕を・・・僕たちを、信頼しきってはくれてなかったのかな、と、少し悲しかった。
でも、助け出した君が、自分の<力>について、あんなに悩んでいたと知って、
逆に自分の考えの浅さ、思いやりの足りなさに、腹が立ったよ。
だから、ちからいっぱい、君を抱きしめた。
誰も、君のせいで傷ついたりはしない。誰も、君をひとりぼっちになんか・・・させやしない。
そう・・・少なくとも、僕だけはね。


「ヤック・デ・カルチャ!」
(ゼントラーディ語で、「信じられない」「ありえない」「馬鹿げている」、の意)

すべての決着はついたかと思えた、あの後。
結局、つかの間の平和だったんだけど、楽しかったよ。
例によって、最後にチャチャは入ったけど、ドキドキするシチュエーションだった、修学旅行前の下校行。
その旅行で、君が思いもかけず作って来てくれた手作りのお弁当は、力が沸いたよ。
京一のノゾキ作戦は、無事「男湯」を覗かせることで防いだし、あの「天狗」事件も楽しかった。
縁日での浴衣姿は、新鮮で可憐で、魅力的だった。
「りんご飴」を食べたことがない、というのも、意表を突いた反応で楽し(?)かったよ。
でも、その後で、ついに短い平和は終わり、真の戦いを告げる事件が起こったんだよね。
それでも、君の優しさは、敵でさえ、分け隔てなく包み込んでいた。
京一の「死」事件はショックだった。
君も、衝撃のあまり、僕の胸に倒れこんできたよね。
「ここで泣かせて・・・」
でも、君から僕に抱きついてきてくれたのは、これが初めてだった。
京一への心配とは別に、それだけ二人の心が接近できたのかな、と、少し嬉しかったんだ。
幸い、京一も無事だったし、結果としては、君とまた少しわかりあえて、よかった。
戦況は、だんだん厳しくなっていったけれど、君の
「あの・・・手を・・・繋いでもいい?」
なんて、ちょっとしたしぐさとかに、愛おしさは加速するばかりだった。
そして、僕の「出生の秘密」を知ったときの、君のあの反応。
「私・・・今、ようやくわかったの・・・」
僕が、運命の人、と見えていたという告白。
そして、それが本当であることを知り、しかもすんなり納得でき、嬉しく思える、ということ。
ふたりは、初めて、お互いに求め合って、抱きあったよね。熱く。強く。
でもそのあと、僕は、敵の首魁に斬られ、生死をさまよった。
退院のメドが立ったとき、おせっかいが得意技の京一が、クリスマス・イブだからと、
君とのデートをセッティングしてくれた。
OKしてくれたと聞いて、心も体も弱っていた僕には、嬉しすぎるほどだったよ。
そして、大喜びで出かけた待ち合わせ場所で・・・君は来た。
どこか、戸惑った表情も、正式に「デート」をするのは初めてだからだろう、と思ったよ。でも・・・。
「あの・・・誘ってくれたのは嬉しいの。でも・・・」
でも・・・?
「あなたとは、お友達でいたいの・・・」

・・・?

・・・えっ?

・・・ええっっっ!?

・・・その言葉の意味が、脳髄に染み込むまでに、十数秒の時を要した。


おーのー!


オーノー!


Oh , no !


懊悩!
ショックのあまり、僕は、その世界からはじき飛ばされ・・・
転校初日にまで、タイムスリップしてしまったんだ。
(俗に言うところの、「リセット」という外法らしいね・・・)


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