OK Works 3 (1981-1983) | Home

OTOMO KATSUHIRO on Magazine

連作短篇「That's Amazing World (ジャストコミック篇)」
(作品No.145,148,151,155,158,163)

『ポップコーン』に連載されていた「That's Amazing World」ですが、同誌が6号で終了して代わりに『月刊ジャストコミック』が創刊され、そこで続きが連載されました。掲載されたのは1981年5月の創刊号から同年11月号まで(但し10月号は落稿)の6回。目標であった「絵本風(BD風)の本」1冊分には充分な作品が溜まったため、連載は終了となりました。そうして6篇のうち2篇は単行本『ヘンゼルとグレーテル』に収録され、残った4篇は9年の時を経て『彼女の想い出』に収録されて、単行本未収録作品はなくなりました。
 作品の体裁は、『ポップコーン』での連載時と同じく、扉1ページを含む5ページで、西洋童話をマンガ化するというもの。但し、「老人と海」のように20世紀文学を題材としたものもあり、「西洋童話のマンガ化」とひとくくりにするのは正しいとは言えません。敢えていうならば、「西洋寓話のマンガ化」。でも「ノアの方舟」とか「円卓の騎士」を「寓話」って言ったら怒られるか…。
 『ポップコーン』では作者コメントなどもなくドライな編集方針でしたが、一転『月刊ジャストコミック』は遊びの多い誌面作りで、作者コメント、マンガ家同士の対談、果てはマンガ家の奥さまアンケート・コーナーなど、作品以外にも様々な企画で大友克洋の情報を掲載してくれました。

現在、『月刊ジャストコミック』は大変入手困難です。出れば一冊千円以内なのですが、とにかく数が少ない。平綴じの『ポップコーン』と比べて、保存率が非常に低かったものと思われます。管理人は10数年かけても3冊しか入手できていません…。ただ、7月号掲載の「大友克洋のThat's Amazing World:アリババと40人の盗賊」は切り抜きがあるので、単行本と初出時の違いだけ記載します。(2012.6.25)

と思っていたら、2012年7月に一気に大量入手出来てしまいました(複数の古書店、個人から)。残すは切り抜きしかない7月号。(2012.8.4)

月刊ジャストコミック 1981年5月号(創刊号)

Just Comic '81/05
タイトル作家頁数
ねぼけの政司 1 4c4p2c4pちば俊24
青春ブルース PART 1 麗裸たむろ未知31
ターサン 1村野守美20
ピヨ13世 1赤塚不二夫とフジオプロ10
まくれ!!銀輪 1 2c4pバロン吉元24
山本風太郎くん 1新田たつお20
修羅 1 4c2p作・西村寿行/画・竹中友32
大友克洋のThat's Amazing World:眠る森の美女大友克洋5
ぶらっとキャンパス(葉書コーナー)編集部2
N-size HOUSE 2c4p福山庸治24
ななこSOS ACT.7吾妻ひでお8
ねこらんまんみずのたろうかつのり9
JUST NOW(情報コーナー)編集部計6
婦人警官ハルミ南泉寿1
ギャグちゃんぽん飯島勇造1
愛犬ポルノ関谷ひさし1
ジャスコミファン(作者コメント)編集部2
イエスタデイ PART 1 涙の乗車券鷹見良28
ヤスジのヘラヘラ白書 1 2c4p谷岡ヤスジ4
  • 光文社
  • 1981年5月1日
  • 4月初頭発売(2日?)
  • 第1巻第1号通巻第1号
  • 266p
  • B5 版
  • 定価 230円
  • 雑誌コード:05177-5

単行本『ヘンゼルとグレーテル』収録の「大友克洋のThat's Amazing World:眠れる森の美女」の掲載誌です。前身の『ポップコーン』連載分から数えて、同シリーズ6作目となります。初出時のタイトルは「眠る森の美女」。これは単行本で「眠れる森の美女」と改題されました。
 単行本と初出時とを比較すると、2カ所で変更があるのが分かります。まずは2ページ目1コマ目、森の奥に、奥行きを感じさせるトーンが追加されています。もう一つは最終ページの2コマ目で、中央にある窓が書き直されています。初出時も単行本と同じような窓だったのですが、もっと角度があって窓が狭く描かれていました。これが単行本で書き直され、大きな窓となりました。周囲のベタは変わっていないので、前の絵をホワイトで潰して上から描き直したのではないかと思われます。その他は、ネームの細かい部分まで同一です。また初出時も写植はすべて明朝体で、単行本とイメージは変わりません。
 事件が起こるずっと前、昏々と眠り続けるところを描いたこの作品、恐らく大友克洋作品で初めて、コピーの連続で話が形作られたものです。時間がなかったと言うよりは効果をねらったのではないかと思われますが、微妙。途中お姫様は寝返りを打ちますが、その辺りだけホワイトで潰して書き直されていて、ベッドや部屋は同じものが続きます。これを受けた編集のコメントが最終ページの欄外に。「これは…なろうことならひたすら眠り続けていたい作者の願望かも…!?」。また、初出時も単行本と同じく、「おやすみなさい」の言葉でしめられていました。

作品ページとは別に、「ジャスコミファン」というコーナーで、創刊号に作品を載せた各マンガ家のコメントが掲載されています。大友克洋も「オズの魔法使い」の女の子のイラスト付きで200字ほどのコメントを寄せています。曰く「こういうコメントは苦手で…」。そんな中でも、「童夢」と「気分はもう戦争」の単行本を(81年)夏までに終わらせなければと言っていたり(実際には『気分は〜』は半年遅れの81年暮れ、『童夢』は83年夏に発行)、この連載を含む同傾向の作品を「「童話シリーズ」として、100ページくらいハードカバーでシャレた大判本にしたいと思っています」などと言っているのが興味深いです。

月刊ジャストコミック 1981年6月号

Just Comic '81/06
タイトル作家頁数
ねぼけの政司 2 4c4p2c4pちば俊24
まくれ!!銀輪 2バロン吉元30
山本風太郎くん 2新田たつお20
ギャグちゃんぽん飯島勇造1
婦人警官ハルミ南泉寿1
愛犬ポルノ関谷ひさし1
ターサン 2 2c4p村野守美20
イエスタデイ PART 2鷹見良24
ななこSOS ACT.8吾妻ひでお8
修羅 1-2 4c2p作・西村寿行/画・竹中友32
ピヨ13世 2赤塚不二夫とフジオプロ10
大友克洋のThat's Amazing World:アラジンと魔法の壺大友克洋5
高い城の男 2c4p山本一雄16
青春ブルース PART 2たむろ未知31
FOXY GAL作・古出幸子/画・黒田みのる16
ヤスジのヘラヘラ白書 2 2c4p谷岡ヤスジ4
  • 光文社
  • 1981年6月1日
  • (5/2発売)
  • 第1巻第2号通巻第2号
  • 266p
  • B5 版
  • 定価 230円
  • 雑誌コード:05177-6

単行本『彼女の想いで…』収録の「大友克洋のThat's Amazing World:アラジンと魔法の壺」の掲載誌です。初出時はシリーズ・タイトルだけで、扉にも目次にもサブタイトルは入っていませんでした。「アラジンと魔法の壺」というサブタイトルは、単行本化の際に追加されました。アオリはありませんが、作品末のハシラに「ドロンドロンと現れてドロンドロンと消えちまった…そうさ、なんにもなかったんだよな なーんにも!!」という編集部のコメントが入っています。
 また、『彼女の想いで…』では編集の都合上、扉ページが2色になっていて主人公に色が付けられていますが、それ以外に単行本と初出時の違いはありません。

月刊ジャストコミック 1981年7月号

wanted
タイトル作家頁数
まくれ!!銀輪 3バロン吉元--
青春ブルース PART 3たむろ未知--
極道教師元橋みつる--
ターサン 3村野守美--
山本風太郎くん 3新田たつお--
ピヨ13世 3赤塚不二夫とフジオプロ--
修羅 1-3作・西村寿行/画・竹中友--
ジャスコミファン編集部--
大友克洋のThat's Amazing World:アリババと40人の盗賊大友克洋5
ななこSOS ACT.9吾妻ひでお--
ちょっとハイウェイ三山のぼる--
鉄人28号vs中年アトム飯島勇造--
イエスタデイ PART 3鷹見良--
ねぼけの政司 3ちば俊--
ヤスジのヘラヘラ白書 3谷岡ヤスジ--
  • 光文社
  • 1981年7月1日
  • (6/5発売)
  • 第1巻第3号通巻第3号
  • --p
  • B5 版
  • 定価 --円
  • 雑誌コード:05177-7

単行本『ヘンゼルとグレーテル』収録の「大友克洋のThat's Amazing World:アリババと40人の盗賊」の初出切り抜きから、単行本との比較を行います(上記目次は目次ページより)。この回は初出時にはサブタイトルがなく、また冒頭にも末尾にもアオリはまったくありませんでした。もしかすると、相当にキビシイスケジュールで入稿されたのかもしれません。単行本化に際して、「アリババと40人の盗賊」というサブタイトルが追加されました。
 単行本と初出時を比較すると、2ページ目の2,5コマ目の背景にトーンが追加されているのと、全ページで主人公のチョッキに柄が加えられているのが確認できます。初出時は裾の線もない、のっぺりと白いままでした。これは、明らかに未完成な感じ。単行本では裾や首回り、肩口などに線が入り、更にその内側にドットの大きめなトーンが貼られて完成するのですが、しかし背景の岩や最終ページの大量のナス、その艶を表すトーンの削りは初出時にも完成済み。この当時は初代アシの佐々木氏、二代目アシの高寺氏の2人が手伝っていたので、その二人の力に依るところも大きいかもしれませんが、いずれにしてもそうした岩などのディテールの方が、この作品では重要だったということでしょう(よーするにそっちが描きたかったのではないか)。
 なお初出時には、4ページ目の一コマ目と5コマ目両方の「なすーっ」の前に「ごまーっ」というセリフもありました。ネームの変更はここだけ。ですが、この改変はストーリー解釈に大きな影響を及ぼしています。もともとの「ごまーっ、なすーっ」だと、もしかすると「ごま」が合い言葉だったのかもしれない、いやそもそもこの話は「ひらけごま」が合い言葉だって言うのは世界中が知ってることだし…と、なすなのかごまなのか分からなくなってしまいます。しかし、「なすーっ」だけであれば、確かに「なす」が合い言葉だったことになります。雑誌の時は推敲する時間が足りなくて、なんとなくそうなってしまったのか、それとももともとは「ホントはごまなんだけど…」という体で描いていたのか。読み手が考えたところで分かりませんね。
 ところで、この作品では「RUN」の最後のコマで用いられた「一コマの中に違う角度から見た主人公が同時に存在する」という手法を推し進めたかのような、「一コマの中で次々にセリフを言う主人公が全部描かれている」というものがあります。その後、この手法は一般化したため、今みると違和感はありませんが、81年の時点ではどうだったのか。いずれ検証したい事柄です。

月刊ジャストコミック 1981年8月号

Just Comic '81/08
タイトル作家頁数
青春ブルース PART 4 4c4p2c4pたむろ未知26
まくれ!!銀輪 4バロン吉元28
山本風太郎くん 4新田たつお20
大友克洋のThat's Amazing World:ノアの箱船大友克洋5
ザ・ラガー 2c4pかわぐちかいじ24
涙のバカンス916&ズーニーブルー28
修羅 1-4 4c2p作・西村寿行/画・竹中友26
ななこSOS ACT.9吾妻ひでお8
超人ニッターマンのオタスケ怪答(コラム)新田たつお・編集部2
ピヨ13世 4赤塚不二夫とフジオプロ10
ターサン 4 2c4p村野守美20
豚士珍談一文字保光24
ねぼけの政司 4ちば俊24
ジャスコミファン(たむろ未知インタビュー)編集部3
ヤスジのヘラヘラ白書 4 2c4p谷岡ヤスジ4
  • 光文社
  • 1981年8月1日
  • (7/5発売)
  • 第1巻第4号通巻第4号
  • 266p
  • B5 版
  • 定価 230円
  • 雑誌コード:05177-8

単行本『彼女の想い出…』収録の「That's Amazing World:ノアの箱船」の初出です。初出時はサブタイトルはなく、「That's Amazing World」としか記載されていませんでした。アオリはなく、末尾に編集部の「♀女の子を連れてきたら 今度はいったい何が食えるんだろ!?」というコメントが入っています。
 『彼女の想いで…』収録時には、初出時の扉ページの空に貼られていたトーンが削除されていますが、それ以外の変更はありません。但し、すべて明朝だったフキダシ内の文字は、講談社標準のアンチゴチに変更されています。

月刊ジャストコミック 1981年9月号

Just Comic '81/09
タイトル作家頁数
ノストラダムスの息子たち 1 4c4p2c4p三山のぼる24
青春ブルース PART 5たむろ未知28
まくれ!!銀輪 5バロン吉元30
大友克洋のThat's Amazing World:老人と海大友克洋5
幸のあとのドッキリ 2c4p望月あきら24
山本風太郎くん 5新田たつお20
修羅 2-2 4c2p作・西村寿行/画・竹中友26
ななこSOS ACT.10吾妻ひでお8
ターサン 5 2c4p村野守美20
ピヨ13世 5赤塚不二夫とフジオプロ10
ねぼけの政司 5ちば俊23
俺の夏荒畑牧童23
ヤスジのヘラヘラ白書 5 2c4p谷岡ヤスジ4
  • 光文社
  • 1981年9月1日
  • 第1巻第5号通巻第5号
  • 266p
  • B5 版
  • 定価 230円
  • 雑誌コード:05177-9

単行本『彼女の想いで…』収録の「大友克洋のThat's Amazing World:老人と海」が収録されています。アオリはありませんが、作品末のハシラに「老人にとって海は、かくも性(傍点)なるものなのであった!!」という編集部のコメントが入っています。
 『彼女の想いで…』では編集の都合上、扉ページが2色になっていて、船に色が付けられていますが、それ以外に単行本と初出時の違いはありません。

月刊ジャストコミック 1981年10月号

Just Comic '81/10
タイトル作家頁数
ななこSOS ACT.11 4c4p2c4p吾妻ひでお16
ノストラダムスの息子たち 2三山のぼる24
ごきげんなパーティー916&ズーニーブルー28
どがちゃか大学院 2c4pみなもと太郎24
修羅 3-1作・西村寿行/画・竹中友26
ピヨ13世 6赤塚不二夫とフジオプロ10
青春ブルース PART 6 4c2pたむろ未知26
山本風太郎くん 6新田たつお20
超人ニッターマンのオタスケ怪答(コラム)新田たつお・編集部2
ジャスコミファン(吾妻ひでおインタビュー)編集部3
大友克洋のThat's Amazing World:5頁のアリス(再録)大友克洋5
ターサン 6 2c4p村野守美20
ねぼけの政司 6ちば俊24
ドキ土器クラブ劇画・冬樹久生/原作・志垣豊20
ヤスジのヘラヘラ白書 6 2c4p谷岡ヤスジ4
  • 光文社
  • 1981年10月1日
  • (9/5発売)
  • 第1巻第6号通巻第6号
  • 266p
  • B5 版
  • 定価 230円
  • 雑誌コード:05177-10

『月刊ジャストコミック』第6号では大友克洋は現行を落としており、代わりに『ポップコーン4月号(No.1)』に掲載され、後に単行本『ヘンゼルとグレーテル』に収録された「That's Amazing World:5頁のアリス」が、初出時から変更なく再録されています。編集のコメントはありませんが、代わりに大友克洋のコメントとして、体調がすぐれなかったために旧作を再掲載したことが詫びられています。
 またこの号の「超人ニッターマンのオタスケ怪答(コラム)」はマンガ家のアシスタントについてのQ&Aで、その中で新田たつおのアシスタント経験の有無の話になり、大友克洋から聞いた話として、大友克洋もアシスタント経験は基本的になく、北野英明のところで一回だけ手伝ったことが語られています。この件については、バラエティ '79年1月号でのインタビュー中でも大友克洋本人が語っています。

月刊ジャストコミック 1981年11月号

Just Comic '81/11
タイトル作家頁数
修羅 3-2 4c4p2c4p作・西村寿行/画・竹中友26
ノストラダムスの息子たち 3三山のぼる24
ななこSOS ACT.12吾妻ひでお8
山本風太郎くん 7新田たつお20
しんじロンリーウェイ 2c4pうえやま とち52
青春ブルース PART 7 4c2pたむろ未知26
ねぼけの政司 7ちば俊24
ターサン 7 2c4p村野守美20
大友克洋のThat's Amazing World:円卓の騎士大友克洋5
ピヨ13世 7赤塚不二夫とフジオプロ10
超人ニッターマンのオタスケ怪答・番外編PartI(コラム)新田たつお・編集部2
ジャスコミファン(竹中友インタビュー)編集部3
気まぐれトライアングル 1916&ズーニーブルー28
ヤスジのヘラヘラ白書 7 2c4p谷岡ヤスジ4
  • 光文社
  • 1981年11月1日
  • (10/5発売)
  • 第1巻第7号通巻第7号
  • 266p
  • B5 版
  • 定価 230円
  • 雑誌コード:05177-11

単行本『彼女の想いで…』収録の「大友克洋のThat's Amazing World:円卓の騎士」が収録されています。初出時にも「円卓の騎士」のタイトルはありました。アオリ等はありませんが、作品末尾に「That's Amazing World」がこの会を持って終了である事が告げられています。またこれまでに書きためられた西洋名作シリーズが、CBSソニー出版より単行本化されることも記載されており、シリーズ終了は事前に決定していたであろう事が窺えます。
 単行本と初出時で、絵の変更はありません。但し、アンチゴチ、明ゴチでなく、感じも明朝体だったフキダシ文字が、単行本でアンチゴチに変えられた際、初出でマーリンの「ギョエェェ—」という声がゴチック体で強調されていたのが通常扱い(仮名なのでアンチック体)にされてしまったのが唯一の違いとなります。
 またこの号の「超人ニッターマンのオタスケ怪答(コラム)」は番外編として、2頁全部を使った大友克洋との対談となっています。仲の良い2人のマンガ家の対談、マンガの話になると思いきや、ほぼ全てが女性に関する話題。女性ファンが少ないこと、風俗に興味がある(by大友)こと、おかまが面白い(by新田&大友)こと、大友はオカマとコジキを書くのがうまいこと、「大友克洋のマンガにはオカマとコジキばっかり出てくる」と世間で言われているのが気にくわなくてオカマとコジキしか出てこない「愛の二丁目〜」を描いたこと等、和気藹々と語られています。しかし2頁では分量が足りず、後半は次号へ続きます。

OK Works 3 (1981-1983) | Home

This page last modified at 2012/08/27.