「あの子は優しい子なの。憶病で泣き虫で、虫一匹も殺せないのに……」

 泣くミリアリアの側で、トールは彼女の聞き役となっていた。

「さっきだって、本当は怖くて怖くて仕方ないくせに。
 握られた私の手には、ずっと震えが伝わってきてたのよ」

 妹のように接してきた相手が、自分たちと違うと言われ。
 それだけの理由で、望まない戦いに引き出される。
 ミリアリアは今さらながら、この時代に生まれてきたことを呪った。




「待ってください!」

 ようやくキラは、先を行く4人に追いついた。
 入り組んだ廊下で、一度見失うと見つけ出すのに苦労する。
 AAの中は、さしもの彼もまだ覚え切れたわけではないのだから。

「……おまえか。何しにきた?
 ここは関係者以外立ち入り禁止のブロックだぞ」

 ナタルが睨つける。しかし、キラはそれを無視した。

「女の子を戦場に引きずり出す必要はないじゃないですか!」

「……これは無理強いじゃないわ。ちゃんと彼女からの了承も得たことなのよ」

「だからって……」

「坊主だって、分かってないわけじゃないだろ。
 お前が乗ることを拒否した。彼女はそうじゃなかった。
 それだけだ」

 少しばかりの哀れみとともに、フラガはそう言い捨てた。
 とっさに言い返すことができずに、口ごもるキラ。
 それを払拭するかのように、声が上がる。

「艦長、お願いがあるんですけど。これからMSデッキまで行くんですよね?
 キラ先輩も同行してもらって構いませんか?」

 その言葉に反応してキラがそちらを振り向くと、の濃茶の瞳がそこにあった。
 それは2人が出会ってから、初めてのことだった。

「民間人を軍施設に入れることは認められていない」

 マリューが答えるより先に、ナタルの厳しい言葉がそれを受け入れない。

「私は艦長に聞いているんです。
 たとえあなたが副艦長の座についていようと、従う義務はありません」

「なっ……」

 キラと絡んでいた視線がついと逸らされ、は彼女に対して、冷たい視線を投げかけた。
 ナタルの方は、自らが受けた扱いに唇を噛み締める。

さん、あなたはどうしてキラくんを同行させたいの?」

「これから乗るMSについて、少しレクチャーを受けたいんです。
 操縦技術なんかは大体わかると思いますが。
 最終的に組み立てたのはキラ先輩だということですし、詳しい細部調整を聞いておきたいんです。
 生憎、私はプログラム方面にあまり詳しいわけじゃないですから」

「なるほどね……。どうする、艦長?」

「そういう理由なら仕方ないわね。いいわ、許可します」

 ペコリと頭を下げたから目を逸らして、マリューはキラの方へ向いた。

「さっきの話の通りよ、あなたも一緒に来てちょうだい。
 OS関係については、既に私たちでは手に負えない問題だもの」

「だから、ストライクには僕が……」

「残念だけど、拒んだあなたに既に資格はないわ。
 彼女を代わりにしてしまったのは、紛れもなくキラくんなの。
 ……時間がないわ、早くMSデッキに行きましょう。
 いつ、クルーゼ隊がやってくるかわからないのだから」




黒マント製作機から
 開き直ったせいで、オドオドキャラじゃなくなっていくヒロイン。
 おまけに今のキラは、黒じゃなくてへたれです。
 そして、前回と今回、微妙にナタルさんがやられキャラ。
 フラガに諭され、キラに無視され、ヒロインに睨まれ。
 ……お気の毒です。

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