詳しくないとは言っていたけれど、それでも、彼女の処理能力はナチュラルのそれを大きく上回っていた。
 応用力に関しては、むしろ僕より上じゃないかと思えた。

「……それで、ここのバイパスを繋げばいいんですね?」

「そう」

 メインシートの背後に座った僕が僅かな指示を与えるだけで、 はすぐさま理解し、それを黙々とこなしていく。

 今、ストライクのコックピットには、僕と彼女しかいない。
 機体はメンテナンスベットに立たせたままであるものの、正面のハッチは閉じられ、モニター類の淡い光があるだけ。
 文字通り、2人だけの空間。
 なによりも。
 いきなり嫌い宣言を受けた僕だけれど、今は必要だからといって、ちゃんと会話が成立している。
 何気ないことだけど、それがとてもうれしかった。



「1つ聞いてもいい?」

「先輩、なんですか?」

 作業の手を休める事なく、モニターから目を逸らさずにそっけなく彼女は聞き返してきた。

「その『先輩』って言うのやめてほしいな。照れ臭いから」

「無理です。
 私にとって、先輩は親しい仲でもないですから。私自身、キラ先輩と仲良くしようとは思っていません」

 あっさり切り返されて、二の句が出ない。
 とりあえず、本当に聞きたかったことを口にする。

はこれに乗るのが怖くないの?」

「怖くないと言えば嘘になります。
 でも、さっきも言ったように、自分にできるのならば、それは避けられないことです。
 私は守るために汚れ、傷付くのは平気ですから。
 守ることを放棄することだけはしたくないんです。それに……」

 ここで始めて、の動きが止まった。
 思わず僕は、その顔を覗き込んで見る。

「それに?」

「私は死ねないんです。捜し物を見つけ出すまでは、絶対に死を選べません」

 顔を上げた彼女に、僕は見惚れてしまった。

「強いね、は。それに、綺麗だ」

 『はぁ?』と言わんばかりに、がこちらを見てきた。

「君は僕のことが嫌いって言ってたけど。僕はのことを気に入ってるから。
 だから、覚悟しててね?

 そう言ったあと、僕は取っておきの笑顔を見せた。
 の頬が引き吊っているのがわかったけれど、僕は気にしなかった。

「あ、あのですねぇ……、私は……」

 彼女の言葉を遮って、響いたサイレン。
 そして、繋がる通信。

『敵艦に発見されました。ストライクはいつでも発進可能なように、カタパルトまでの移動をお願いします』

「ミリィ?」

 の巣っ頓狂な声が上がる。

『泣いてるばかりじゃ、守れないって教えてくれたのはあなたよ。
 だから、私もできることをさせてもらうことにしたの。今やっておかないと、必ず後悔することになるだろうし。
 というわけで、MAおよびMSの戦闘管制となりました、ヨロシク』

「今やらないと後悔する……か」

 僕はポツリと、ミリアリアの言葉を反芻した。
 その時、微かなうなりとともに、室内に新たな光が差し込んできた。

「先輩、さっきのミリィからの通信を聞こえたんですよね?
 ストライクを動かしますから、先輩は降りてください。
 非戦闘員を乗せたままでは動かせませんから」

 そう言いながら、はシートベルトを装着し始める。
 しかし僕は、伸ばした手で素早くハッチを閉め、ストライクの起動システムをロックしてしまう。

「先輩、何をするんですか! 緊急事態なんですよ、出なければみんな思ぬんです」

「わかってる、そんなことは」

「じゃあどうして!」

「さて、どうしてだろうね」

 僕はの非難を聞き流し、彼女の体を固定しかけていたベルトを外させた。
 そしてシートの後ろに押しやると、代わりに自分が座った。


黒マント製作機から
 ヒロインを振り向かせようと、ちょっと黒キラ発動。
 ……見えませんか?
 次はクルーゼ隊との戦闘シーンです。
 はよ進め、自分。

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