「……落ち着きました?」

「ありがとね……、胸貸してもらっちゃって……」

「いいですよ。……でもMSデッキに行く前に、どこかで顔洗っていきましょうね?」

 クスクスと笑うニコルに、私もつられて笑みをこぼした。
 幸い、展望デッキから私が与えられている部屋は遠くない。ということで、一旦部屋に戻ることにした。

 バシャバシャと顔を洗うと、冷たい水が気持ちよくて、泣いて火照った目を冷やしてくれる。

、あんまり顔を洗いすぎると目や鼻が溶けちゃいますよ?」

「溶けるわけないでしょーっ!」

 あんまりバシャバシャやっていたものだから、苦笑混じりのニコルから声を掛けられ。叫び返した私は、蛇口を閉めた。





「……あ……」

 部屋を出た私たちの少し前にできている人垣。その隙間から見えた赤いパイロットスーツ。どうやら、これから艦長室で尋問されるらしい。向かってる先にはそれしかないし。

「誰が捕まったの?」

「イザークは早々に戦線離脱する羽目になりましたし、アスランはストライクを追いかけていきましたし……。
 僕はここにいますから……残るは……」

「ディアッカさんですね……」

 クスリ、と。
 私がこぼした笑みに、ニコルの顔が引きつる。

、何するつもりですか?」

「ちょっとむしゃくしゃしてるから八つ当たりvvvvv

「八つ当たりで終わらせてくださいよ……」

「わかってるって」

 ニコルのため息を合図にして、私は床を蹴って人波をすり抜ける。その間に手にはアーミーナイフを構え。



「うわっ!」

「ディアッカさん、行きますよ!」

「こらっ、ッ!」

 彼を取り囲んでいた人垣はあっという間に遠巻きになる。

少尉、捕虜への暴行は……」

「禁止されているのはわかっていますけど、これ、単なるスキンシップですから!」

『…………はぁ?』

 その場にいた艦長を始めとする人たちは、頭の上に疑問符を一斉に掲げた。それはレガール兄やムウ兄も一緒で。

「ディアッカ、ちょっと付き合ってあげてくださいよ」

「……そりゃいーけどさぁ……。てか、何でお前は拘束されてないわけ?」

「ニコルは私とずっと一緒にいましたからね。じゃ、始めますよ?」

 ビュっと突き出したナイフを、ディアッカさんは紙一重で避け。

「何でニコルだけと一緒だったんだよぉっ! 俺もオッサン相手より、女の子相手のほうがよかった!」

 彼のミドルキック、その膝の上に片手を付いて、それを軸に私は側転する。

「だって、バスターは後方支援の機体でしょ。は大気圏内では飛べないんですから、当たり前ですよ」

 私は足が地に付いた途端、床を蹴って、一気にディアッカさんの懐に入り込んだ。

「これでチェックメイ……きゃあ!」

「あっまーい。いつでも最後まで気を抜くなって言われ続けたよな?」

 彼の喉笛にナイフを押し当てた瞬間、足を払われて私は横倒し。見事に引っくり返った。

「……エロスマンのクセに生意気ッ!」

「俺はエルスマンだっての! ……そのの捨て台詞、久々に聞いたな」

 クククッと楽しそうに笑うディアッカさん、笑いを噛み堪えているニコル。
 私は持っていたナイフをサックに仕舞って起き上がった。



「こらこら、そこで和まれてるとこっちとしては非常にやりにくいんですがね」

 苦笑しながら言うムウ兄。その後ろには艦長さんとレガール兄。

「それじゃあ、ディアッカ=エロスマンくん?

「違う! 俺はディアッカ=エルスマンだっ!」

 わかっててわざと名前を言い間違えるあたり、レガール兄、なんか怒ってるように見えるんですけど。

「これから艦長室へ向かうのだけれど、そっちの彼も一緒に来てくれるかしら?
 ちゃんとした話も聞いていないしね」

「あ、はい。そうですね」

「あのさ、艦長?」

「何?」

「こいつら、クルーゼ隊だって言うんだろ? も連れて行くか? 無関係じゃないしな」

「……そうね、じゃあ、少尉も参加という方向で良いわね」

 ムウ兄の言葉はあっさり受諾され、私も尋問に連れて行かれることになりました。




 尋問とはいえ、所属先を含めた自己紹介と乗っていた機体について、そして2、3の簡単な質問だけ。そして、彼らの処遇について。

「……納得いかねーっ……」

「まぁまぁ、その代わり、空いた時間には来て上げますから」

 1人さびしく鉄格子の向こうに入れられたディアッカさん。
 そんな彼に謝りつつ、私は鍵を掛けた。ちなみに、ニコルは私といつも一緒という条件付きで投獄を免れていたりする。

「絶対遊びに来いよ!」

「わかってます。……っていうより、今の私はあまりAAをうろつきたくないので」

「また何で?」

「え、まぁ、ちょっと色々ありまして」

「ディアッカ、ここには雑誌がないですけど我慢してくださいね」

「あったって、こう薄暗いんじゃ満足に読めねーよ。それより、ニコル」

「はい?」

「お前、と一緒なんだから守ってやれよ。今の俺じゃ何もできないしさ」

「わかってます。可愛いを泣かせる相手には、僕だって容赦しません」

「……いや、ナチュラル相手だから適度に容赦はして欲しいんだが……」

「肉体的にはでしょ? 言葉の暴力には容赦しませんから」

「……俺が相手じゃなくてよかった……」

「それじゃ、後で来ますね」



 私とニコルは手を繋いだまま、牢屋を後にした。



黒マント製作機から
 のんきな会話をしながらのナイフ戦、やらせたかったんですよっ!
 相手がディアッカですから、ヒロインも手加減ナシに突っ込んでいけましたしね。
 殺気を放っていない分、プラントでの訓練中とは違うってことでスキンシップ。でも、周りの皆さんは引いてます。

 前回、ミリアリアとの1件で、ヒロインは皆から、兄であるレガールからも余計遠ざかろうとしています。
 その分、ニコルやディアッカと一緒に過ごす時間が多くなる予定です。


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