「オーブには……ザフトの兵は連れて行けないんだ」

 カガリの言葉にボンヤリとした顔を上げたアスラン。

「もうすぐ迎えが来る。船が到着したら、お前はそっちに移れ」

「……わかった」

「それと……これ……」

 カガリは自分の首から下げていた赤い石のついたペンダントを外し、それをアスランの首に下げてやった。

「これはハウメアの守り石だ。お前はあぶなっかしい。守ってもらえ」

「キラを……殺したのにか……?」

「これ以上誰にも死んで欲しくない。……それにお前だって、お前が死んだら泣く奴だっているんだろう?」

「いないよ、そんなや……」

 そう言いかけて、アスランの頭をよぎったのは、ふわふわとしたピンクの髪の少女。
 優しい微笑みを振りまいて、綺麗な歌声で誰からも愛される、遺伝子で決められた自分の婚約者。

「……ラクスは……俺なんかのために……泣いてくれるかな……?」

「ラクスって、あのプラントの歌姫か? お前とどういう……」

「ああそうか、彼女は中立のオーブでも知られているんだな。
 ラクス・クラインは……婚姻統制で決められた、俺の婚約者だよ……」

 その言葉に驚きながらも、カガリはニヤリと笑った。

「周りに決められたものだとしても、泣いてくれるに決まってるだろ。
 嫌いな相手だったら、お前が軍人であることを知った時点で解消されているさ」

「え?」

「私だったら、お父様に進められた者でも、軍人相手なら即座に断ってるからな。
 戦場で人を殺すことを生業するような奴を、生涯の伴侶とはしたくない。
 せいぜい友人どまりってところだな」

「じゃ、俺はともかく、キラやもってことか?」

「かもな?」

 苦笑したアスランに、同じく笑顔を返すカガリ。

「だから、お前が軍人だと知ってても離れないラクス・クラインは、お前を嫌ってなんかいないさ。
 むしろ、いつもお前が無事であるように祈ってると思うぞ」

「……そうだと……いいな……」

「カガリ」

 のそりと入ってきたのはキサカ。

「ああ、来たようだな」

「……こういうときは……ありがとう……でいいのかな?」

「礼なんざいらん。それより、お前。死ぬなよ?」

「善処するよ」






「キサマ、どの面下げて帰ってきやがった!!!!」

 聞きなれた怒号に顔を上げると、白銀の髪の少年。

「……ストライクは撃ったさ」

 アスランがポツリと呟いた言葉に、イザークは息を飲みながら、彼が船に移るのを手伝ってくれる。

「怪我人はさっさと寝ろ!」

 言葉に甘えて簡易ベッドに腰掛けたアスラン。ふと、思い出したことを口にする。

「バスターとブリッツ……ディアッカとニコルは……?」

 イザークの端正な顔が歪み、横に反らされる。

「……あいつらはMIAだ……。
 ブリッツ、イージス、バスターの順で信号が消えた……」

「そう……か……」

 ストライクは自分と戦っていたからないとしても、それならば、あの2機を落したのは……。
 落ちていくストライクを追いかけるとき、イージスのサブモニターで最後に見たのは、ブリッツと交戦するの姿。アスランは無事な右手で、顔の下半分を覆った。






「何で私だけっ!?」

 ナタルに引きずられていくのは赤い髪の少女。ヘリオポリスの学生達はそれを遠巻きにして見ている。
 同年代の友人に囲まれ育ってきた彼女にとって、いきなり見知らぬ大人達の中へ1人だけの転属命令というものにはさすがに耐えられなかったのだろう。

「これは命令なのだから従うしかないだろう!」

「それでもッ……」

 フレイの目は助けを求めるようにサイの方へと向くが、彼はその視線から逃げる。

「本当なら少尉も、本部付研究室へと転属が決まっていたのだけれど……」

「……アレのあとじゃ、お偉いさんたちも手が出ない……そう思ったんだろうな……」

「私ですら恐怖を覚えましたから……」

 査問委員会の席上で何が起こったのか、それは出席した士官たちしか知らない。そしてあれだけ暴れたにも拘らず、以外の転属命令は白紙には戻らなかった。

「でもさー、こんなときに『教官やれ』はないでしょ?」

「少佐が教えてくだされば、前線でのルーキー生存率が高くなりますわ。
 地下牢には行ってきました? 少佐はあの子の幼馴染でもあるんですし、お別れぐらいは……」

「……行きましたけどねぇ……、会ってもらえませんでしたよ。ああ、お兄さんは哀しい……」

「そうですか……」





 別れを告げて、ムウ・ナタル・フレイはそれぞれの目的地行きの潜水艦乗り場を目指す。
 潜水艦乗り場に集まった人数を見て、ムウには嫌なカンが首をもたげてくる。

「少佐……?」

「君の番が来たらそれを見せて乗るんだ。いいな?」

 不安げなフレイを残し、ムウは考えを確かめるために走り出した。



「……モヌケのカラ……?」



 ムウは、飛び込む部屋のすべてに誰もいないことに驚く。
 広い施設内でも、これだけ人に出会わないというのは、いくらなんでもおかしすぎる。
 そして決定的なことが起こった。



「ここにいるということは、貴様はもう用済みなのかな?」

 どこかねっとりとした喋り方の仮面の男。本来ならここに絶対いるはずのない相手。

「……お前が何故ここにいるッ、ラウ=ル=クルーゼ!」

「フフッ……、そんなことより早く逃げなくていいのかな?」

 撃ち込まれた銃弾から逃げた隙に、クルーゼは走り去っていった。

「……逃げる?」

 追いかけたかったが、ムウは彼の言葉も気にかかる。
 飛び込んだ部屋は、どうやらJOSH−A・グランドホローのコントロールルーム。
 クルーゼが読んでいたらしいモニターに目をやり、彼のその顔は色を失っていった。胸の内を締めていくのは、裏切られたという思いのみ。

「AAに知らせないとっ……」

 通路に飛び出したムウは、守備隊として出ているAAにむかって、がむしゃらに走った。



黒マント製作機から
 また、キラどころかヒロインも出てきてない。<名前変換はかろうじてあるけど。
 このあたり、一気に流しております。
 次はいよいよご帰還!




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