サイが戻っていって、僕は荷物を片付けることも忘れ、ボンヤリとベットに座っていた。
 トリィが戻ってきた僕に構って欲しそうに、肩や頭を飛び跳ねる。
 右手の甲を上げると、待ってましたと言わんばかりにそこに止まって一鳴き。

「トリィごめんね……。君を作ってくれた人、僕が殺しちゃった……」

「トリィ?」

 言葉の意味を理解していないのか、精巧に出来たロボット鳥は首を傾げる。

「アスラン……覚えてるよね……忘れてなんかいないよね……君の本当のご主人様だよ……。
 彼は僕の大事な幼馴染で、親友でだったのにっ、それなのになんでっ……」

 肩に飛び移ったトリィが、慰めるように頬擦りをしてくる。
 本当は冷たい機械だけど、僕には優しい温もりを与えてくれる小さな友達。

「アスランの分も、トリィのこと、大事にするからね」

「トリィ!」



 ふと机の上の時計を見ると、夕食の時間帯になっていた。皆に捕まるだろうなと思いながら、僕は部屋を出て食堂へと足を進めた。

「トリィ!」

「あ、こら!」

 今まで大人しく僕の肩に止まっていた小鳥が、急に飛び立ってしまった。慌てて追いかけるも、いくつも角を曲がられてあっという間に見失ってしまう。






「こらっ! トリィ、またチョッカイ出しに来たのねっ!
 私は暇じゃないって言ってるでしょッ!」












 その声が耳に届いたとき、僕の心臓は跳ね上がった。
 ……まるで、初めて救命ポッドの彼女を見たときのように。


 ゆっくりと歩を進める。


「トリィ!」


 トリィが僕の方に飛んできて、それを追っていた彼女の視線も、自然にこちらに向いた。






「お帰りなさい」






 トリィに向けていた笑顔は消え、前と同じ、出会った頃のような冷たい眼差し。

「ただいま……って驚いてくれないの?」

「別に私が驚いても何も変わらないでしょう?
 こうやって言葉をかけること自体、本当ならしたくないんですが。一応挨拶ぐらいは。
 帰ってきたのなら、トリィ、責任もって躾けてくださいね。
 食事を取りにくるたびに後ろから突付かれるのは、もうたくさんです」

 『それじゃ』とワゴンを押しながら脇を通り抜けようとした彼女の腕を、僕は掴んだ。
 そしてそのまま、壁に押し付け、強引に唇を奪う。

「ッ!」

 痛みに思わず離れた僕の口の端に、細い血の流れが出来たけれど、押さえつけた両手は離さない。

「やっとちゃんと見てくれた」

「いきなり何しやがる!
 さっさと離さないと、今度は殴るだけじゃすまさねぇ、アバラの2、3本ぐらい平気で折ってやるぞ!」

「ムウさん、そこにいますよね?」

「……いつから気が付いていやがった……」

「それは秘密ということで。
 の運んでいたワゴン、代わりにお願いしますね。まさか……嫌とは言いませんよね?」

「あーもう、わかったっ! ……ってかお前、戻ってきてから何気にパワーアップしてねぇ?」

「かも知れませんね。何せ、棺桶に片足突っ込みかけましたから」

「そこで2人で会話すんな! さっさと手を離せよ、バカやろう!」

 膝蹴りを入れようとした足を難なく止めて、『じゃ、お願いしますね?』と僕はムウさんを送った。

「さて、君はこっちね」

「なっ! バカ下ろせっ! 俺は荷物じゃねぇぞっ!」

「あんまり暴れると、お尻、触るよ?」

「帰ってきたなり変態度アップするな!」

「……ひどいねぇ。今の僕は手加減を知らないだけだよ」

「何ィ!」

を連れて行くためには、どんな手段も選んでられないってこと」

 自室に戻った僕は、部屋のロックをかけて、をベッドに降ろした。







「……何、言われたの?」

 敢えての隣に座らず、僕はドアの横の備え付けの椅子に座った。
 しかしやはり、返事は返ってこない。

「僕がいなくなってたとき、はミリアリアに何を言われたの?」

「……関係ない」

「そんなわけないだろ! それじゃあ、どうしては僕らから逃げるようにして地下牢にいるの!」

「艦長さんたちと話したんなら聞いたはずです。私は謹慎を命じられてあそこに行ったんです」

「そのことは聞いたよ。でも、マリューさん達はとっくに謹慎は解いたって言ってたけど。
 それなのにどうしていつまでも地下牢から出てこないのさ。
 知り合いがいるからっていう理由はナシだよ。AAにだって知り合いは……」



「あんな人たちは知り合いなんかじゃないっ!」



 大粒の涙を流し叫んだに、僕は続きを言えなくなった。

「今まで親切面して何かと世話してくれて、だから私も自分が出来る力で、持てる力で頑張ってきたのに。
 それなのに、何で『あんたが代わりに死ねばよかった』なんて言われなきゃならないの!!!!
 キラ先輩だって約束破ったじゃないですか! 帰る場所を一緒に守ろうって!
 それなのに、キラ先輩が1人で先に行ってしまったから……だからッ……」

「ごめんねっ……本当にごめんッ……」

 立ち上がった僕に逃げようとするを捕まえて、ぎゅっと腕の中に閉じ込める。
 逃げ出そうと暴れる彼女を逃すまいと力を込めた。

「約束を破った僕が悪いのはわかってる。
 そのせいで、にはたくさんの辛いことや哀しいことにあわせてしまった。
 何度謝っても足りないのは知ってるけれど、今まで出会った人たちを否定しないで。
 その人たちから受けたたくさんの気持ちを拒絶しないで」

「そんなの無理っ! 好意をたくさんくれたって、たった1つの言葉や行為がそれを砕くんだから!
 一番最初にそれに気付かせたのは、キラ先輩じゃないですかッ!!!!」

 叩きつけられた声に、僕の腕からは力が抜け。その隙に、には逃げられてしまった。
 そして、自分が取り返しの付かないことをしてしまったことに、改めて気が付かされた。




黒マント製作機から
 ただ今の黒キラはムウさんには完全有効。ヒロインには少しだけ有効。
 ってか、本当にキラ夢なのか、書いてるほしみも不安になってきたよ。




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