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一方、プラント・国防委員会本部に戻ってきたアスランを待っていたのは、兵士や関係者達が慌ただしく走り回り怒鳴っている場面だった。さすがの彼も対応できずに呆然としていたが、その中にアカデミー時代に世話になった人物を見つけた。 「ユウキ隊長!」 その声に気がついた彼は、どうしてここにアスランがいるのか不思議そうな顔をしながらも、すぐに走り寄ってきてくれた。 「なんなんですか、この物々しさは?」 「……『スピットブレイク』が失敗したらしい」 「では、パナマは……?」 「それが……『スピットブレイク』の目標は直前になってJOSH−Aに変更されたらしい」 息を飲むアスランに、ユウキ隊長も沈痛な面持ちのまま、目的地がJOSH−Aであったことは上で極秘利に進められていたこと。そして、全滅という知らせが入ったことなどを告げた。 アスランの胸の中に、数日前に別れてきたばかりの同僚、そして仮面の上官や兵士達が思い出される。 「……君には、もう1つ悪い知らせがあるんだ」 これ以上何を言われるのかと、アスランは咄嗟に身を固くした。 「極秘に開発されていた最新鋭のMSが1機、何者かに奪取された。 ―――――そして、その手引きをしたというのがラクス=クラインだということで……」 ユウキの言葉を遮るように、アスランの手からカバンが落ちた。 「……嘘だッ……彼女がそんなッ……」 「詳しいことは私も良くわからない。 これから議長のところに行くのだろう。その時にちゃんと確認してみたまえ」 転がるようにして議長の執務室前に行ったアスランは、秘書官に認識番号と来訪目的を告げ、部屋の中へと促された。だが、怒号のような声の響き渡る室内で、思わず立ちすくんでしまった。 切れ切れに聞こえてくる会話から、先ほどユウキから聞いたことが、ほぼ事実であったことを再確認せざるを得ない。 そして補佐官が退室し、アスランとパトリックだけとなる。 「状況は認識したな?」 「はい……でも、どうしても私には信じられません。ラクスがスパイを手引きしたなど……」 「……証拠がなければ、誰が彼女に嫌疑をかける?」 示されたモニター。写し出されたのは工廠の監視カメラ。 隣にいるザフト兵はわからないが、その隣にいるのは、紛れもなくピンクの髪を漂わせた彼女。 画像は荒くとも、特徴的すぎるその容姿を間違えるはずもない。 「もう既にラクス=クラインはお前の婚約者ではない! まだ非公開だが、国家反逆罪の……」 あまりにも唐突過ぎる宣告は、アスランの耳には届いていなかった。いや、届いていないのではなくて、理解することを拒否していた。 「アスラン」 「あ、はいっ」 冷たい声で呼ばれ、彼は我に帰った。 「お前はこの後、地下工廠でZGMF−X09A・ジャスティスを受領後、 この奪取されたZGMF−X10A・フリーダムの奪還、 そしてパイロットとその接触したと思われる人物および施設の排除にあたれ」 「パイロットのみならず、接触した人物や施設、すべて……ですか?」 「X10A・フリーダムおよび、X09A・ジャスティスは、Nジャマーキャンセラーを搭載した機体なのだ」 絞り出された父親の言葉に、息子が理解するのは一拍の間を必要として。 「そんなっ、プラントはすべての核を放棄するとッ……」 ラクスのことだけでも混乱しているというのに、アスランはあまりのショックに言葉が出なくなった。 「勝つためには必要となったのだ!」 コールの後、ユーリ=アマルフィが姿を現し、彼に促されて、やり切れない思いを抱えたままのアスランは議長執務室を後にした。 「最終チェックにまだ8時間ほどかかる。その間にマニュアルを叩き込んでおいてくれ」 エンジン部にある核を示すマークを、アスランは複雑な感情で見ていた。 「信じられないよ、ニコルも彼女の歌は好きだったというのに……」 「……彼のことはすみません」 「気にしないでくれたまえ。あの子はきっと生きているよ、私はそう信じている」 「そうですね……。足付きにはがいますから、彼女なら……」 その言葉に、書類に目を落していたユーリは目を見開いた。 「何だって? あの子が地球軍の戦艦に?」 「はい」 思いがけないところで出てきた姪の名前に驚いたユーリの手からすべり落ちかけた書類を、アスランは慌てて受け止める。 「だとしたら、足付きに捕らえられていても、ニコルは大丈夫だな。 あの子達は双子の兄妹のようにとても仲がよい。見ているこちらも微笑ましくなるぐらいにだ」 「ええ、自分もそう思います」 「だから、ニコルに害をなそうとしたらが全力で阻止するだろうし、その逆も然り。 あの子達が一緒にいるのならば心配ないな、ロミナにもそう伝えておくよ」 「お願いします」 アスランは一礼して、とりあえずその場は辞去した。 片手でハンドルを操りながらエレカを走らせた先は、丘の上の屋敷だった。 14歳のときに初めて訪れて以来、暇があれば通っていた場所。 つい先日も地球降下前に訪れ、住んでいた彼女と同じ優しい雰因気の漂う中で語り合ったばかりだというのに。しかし、その時とのあまりの変わりように、アスランは愕然とした。 調度品はひっくり返され、引き出しという引き出し、戸という戸はすべて開けられ、中に入っていたであろうものは投げ出され踏みしだかれて、床には泥だらけの足跡が生々しく残されていた。すでに、パトリック配下の官憲の手によって調べつくされたものであろうが、あまりの惨状に言葉を失う。 中庭に出たアスランは、今度こそ怒りを覚えた。綺麗に手入れされていた庭木も花も、ここまで荒らす必要があったのかと思えるぐらいに無残な姿をさらしていた。 白いバラの咲き誇っていたアーチがあった位置までやってきたアスランは、飛び跳ねるピンクのボール―――ハロの存在に気が付いた。 「マイド、マイド!」 片腕では逃げ回るハロをうまく捕まえられなくて、アスランが声をかける。と、あっさり捕獲できたボール。 そしてピンクハロが飛び回っていた位置に託されていたメッセージに気が付いて、彼は急ぎその場に向かった。 ![]() 黒マント製作機から 次は、ホールでの会見シーン。 オリジナルの話を混ぜ込んだのか、混ぜてないのか…… ヒロインの居場所がユーリさん達にも知れました。ヒロイン、ニコルパパにも可愛がられてます。 でも、ユーリさんの口調ってあんな感じでよかったのかしら。 To NEXT |