「これまでお世話になりました」

 私は艦長さんに頭を下げた。

「大体のことは、ウズミ様から直に通信があったのけれど……」

「じゃあ、今さら説明する必要はありませんね。他の皆さんも聞いていらしたんでしょう?」

、お前このこと……キラの奴には?」

「私が言おうとしたら、マーナに止められた」

「当然でございます。人前であんなことをしているなんて……」

「だってあれは、いきなりノックもなしに部屋に入ってきたカガリが悪いんであって……」

(……あいつは、一体何をやってた?)

 ブリッジクルーの心が1つになった瞬間だった。

「……それで、あの2人のこと何ですけど……」

「もう少し落ち着いたら、ちゃんと釈放するわ。心配しないで」

 艦長さんの微笑みは不思議。艦長の人って、偉い人なのに少しも威圧的な感じを受けさせない。優しくて安心できるこの人の笑い方が、私は好きだった。

「また、遊びに行ってやるからな」

 ムウ兄が、ぎゅっと抱きしめてくれた。その様子を見て、事情を知らないマーナさんが慌てていたけれど、カガリが何とか押さえてくれたよう。

「……ムウお兄ちゃん、約束だよ?」

 私が小指を出すと、ムウ兄も小指を絡めてくれた。

「また懐かしい呼び方で呼んでくれちゃって……。こりゃ守らないと、レガールに殺されるな」

 私はムウ兄から離れると、ブリッジの皆に頭を下げた。

「今までご迷惑をおかけしました。これからのご武運を祈っています。
 ……じゃ、そろそろ行きますね」

 ミリアリア先輩が何か言いたそうにしていたのに気がついたけれど、私は敢えてそれを無視した。
 入ってきたときと同じようにマーナさんに手を引かれ、私はカガリとブリッジを後にした。




「……本当にいいのか?」

「何が?」

 『本当は皆に挨拶したかったなー』と思いながら外へ出る階段を上っていたとき、後方にいたカガリが声をかけてきた。

「この階段を上がり切ったら、お前、後戻り出来なくなるんだぞ。
 レガールの遺志だからって、お父様のご指示だからって、素直にそれを受け入れてしまっていいのかよ?」

「カガリ、一体何が言いたいのかわからないよ……」

 足を止めた私の横に、カガリは駆け上がってきて鼻先に指を突きつけた。

「このままだと初めて会った奴と結婚しなきゃいけなくなるんだぞ。それでいいのかよ。
 はキラのこと、好きなんじゃ……」

「……好き……だよ。でも私はコーディネイター。
 好きだからってその人と結婚して、必ずしも子供ができるってわけじゃないから。
 だから婚姻統制なんてものがしかれてるんだし。
 だったら、少しでも遺伝子的に合う人と結婚して子供を作って……」

「それはプラントで決まったことだ。お前はオーブの人間だぞ。それに従う必要はないじゃないか。
 納得できるのか? お前は子供を産み育てるだけのために結婚するんじゃないだろ。
 それに、好きでもない奴との子供なんて……」

「大丈夫、それは問題ないから。……ほら、私って結構子供の世話好きだし。へいッ……」

「……ばかやろう、無理すんな」

 私は、カガリにしがみついた。
 泣いちゃいけない。唇を噛み締めて、彼女の服をぐっと握りしめて、零れそうになる涙を堪える。



「カガリさま、さま、そろそろ行きませんと本当にウズミ様をお待たせしてしまいますわよ」

「マーナ!」

「……いいの、もう決めたんだから」

「でもっ……」

「覚悟できてなきゃ、こんなのは着ないよ」

 白いドレス、本当は、ウェディングドレス。私が好みそうなデザインなのは、ウズミ様の配慮だろう。
 持って来てくれた荷物の中には、白いレースのヴェールと手袋、そして銀のティアラもあった。でもさすがにそれらをつけてAA内を歩くつもりはなくて、ちょっと遠慮させていただいた。
 2人きりの室内で、初めてマーナさんからこれを見せられたとき、私は正直ためらった。少し考えてからだけどそれに手を通した時点で、後戻りは出来ないことはわかっていた。

「……行きましょう、マーナさん」

「ですから私は最初からそう申し上げておりますのに」

 彼女に手を引かれ、私は再び階上を目指した。








「お久しぶりです、ウズミ様」

「元気そうで何よりだ。すっかり大きくなって、ますますビオラに似てきたな。
 久しぶりに会ったレガールも、博士の若い頃にそっくりだったから驚いたくらいだからね。
 とは何年振りになるかな?」

「えっと……かれこれ5年ぐらいはお目にかかっていません。
 オーブ本国には両親が事故死して以来訪れてませんから」

「……そうか。ご両親は気の毒なことをした。辛いことを思い出させてしまって悪かった」

「いいえ」

 オーブ行政府の執務室で、私はウズミ様と2人だけになった。

「話はカガリとマーナから聞いているな」

 私は小さく頷いた。

「紹介しよう。……入ってくるといい」

 開かれたドア、正確にはそこから現れた人物から、私は視線を反らせない。

「おーい、何を呆けてんだ?」

 数歩近寄ってきた彼は、私の目の前で手をヒラヒラとさせ。





「……………ッ、ラスティさんっ!!!!!」





 私は泣きながら、彼に飛び付いた。

「なんでっ、なんで、ラスティさんが生きてオーブに……。
 イザークさんたちから、あなたが死んだって聞いたのにっ」

 『特にアスランさんなんか、自分のせいだってすごく落ち込んでてっ……』泣きじゃくる私の頭をポンポンと軽く叩いてくれる仕種は昔と同じ。

「確かになー、あの時は俺も死んだと思ったよ。やっぱり心臓の真上を撃たれた衝撃で意識は遠のいていくし。
 ……でもさ、相手が使ったのが口径の低い奴だったせいと、御守に助けられてね。
 気絶してたのもわずかな間だったしな。
 あとは、赤のパイロットスーツを脱いで、息絶えてた整備員の服を拝借して避難民とポッドに乗って。
 オーブではカガリ姫を通して、ウズミ様だけに訳を話して、後は一般人に紛れて生活してた」

「……相変わらずたくましいというか何というか、ラスティさんは臨機応変に立ち回りますよね」

 私は思わず笑いを漏らした。

「……それって馬鹿にしてるな?」

「感心はしていますけど、馬鹿になんてしてませんよ。
 でも御守なんて、ラスティさんはそんなのは信じなかったんじゃ……」

「御守っていっても、実際はアルミの名刺ケースさ。中には、やクルーゼ隊の皆の写真が入ってた」

「私の写真……も?」

「それのせいで、彼も今回の遺伝子調査の対象となってね。
 彼は1度調べているから無駄だと言いはったんだが、私はそうは思わなかった。
 そして再調査の結果が……」

「俺との遺伝子は対をなしてたってわけらしいぜ。というわけで、俺がお前の旦那になるってことだ」

 そう言いながら、ラスティさんは私の背中に回した手で、ぎゅっと抱きしめてくれた。

「あーあ、俺がと結婚するって聞いたら、ニコル辺りが怒り狂いそうだな」

「何なら、式までに時間あるから呼びます? ニコルとディアッカさんはAAにいるんですよ?」

「……マジ?」

「いいですよね、ウズミ様?
 特にブリッツ・パイロットのニコル=アマルフィは、私の母方の従兄弟にも当たるんです」

「わかった。これから車を出して迎えに行かせよう。連れて来るのは、その2人でいいのかね?」

 『ありがとうございます』と私はお辞儀し、用意のために部屋を辞去した。



黒マント製作機から
 ラスティとミゲル、どちらを相手役にしようか、寸前まで迷ってました。
 で結局、ラスティに決定。ミゲル戦の後は、ヘリオポリス崩壊してますしねぇ。生存率低いかと思って。
 次はとうとうラスティ&ヒロインの結婚式。
 ……ってキラどこへ行ったぁぁ! 早く来ないとヒロイン本当に結婚してしまうぞぉぉぉぉぉ!!!!!


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