オーブ軍本部の1室に、マリューとムウ、ノイマン、そしてキラ、ウズミの要請で、ニコル、ディアッカの6人がいた。オーブからはウズミとカガリ、そしてキサカにラスティの4人。

 アラスカでサイクロプスを使用した地球連合軍は、その結果ザフトの戦力を大量に奪ったこと、そして守備軍が勇敢に戦って栄誉ある戦死を遂げたことを大々的に放送していた。

「……わかっちゃいるけどたまらんね……」

 実情を知っているだけに、苦虫を噛み潰したようにムウは吐き捨てた。

「前回同様クルーの人たちには不自由を強いるが、それは……」

「わかっております。お心遣い感謝いたします」

「修理の間はしばしの休息と、貴殿らのまとっている軍服の意味について考えられよ」

 複雑な表情のまま、マリューもムウもノイマンも、己の白い服に目を落とした。
 この服に誓ったものは、アラスカの崩壊と共に崩れ去ったといってよい。しかしまだこれを手放せないのは、彼らの気持ちに迷いが残っているせい。
 キラは地球軍の下士官用制服のままだが、着るものがないから仕方なくそれを着ているようにも見える。も地球軍の下士官男性用制服だが、AAの地下牢に謹慎処分を受けた時点で、左肩の徽章を剥がしている。ニコル、ディアッカにいたってはもともとがザフト、今は作業服のままで話し合いに参加している。

「……あの、ウズミ様……AAのことをお気遣いいただいていることはありがたいのですが……。
 私は先日ウズミ様や皆様にご迷惑をおかけしたばかりで、ここにいること自体間違いのように思えるのです」

 小さいながらもはっきりとした口調のに、彼女を見たウズミは微笑んだ。

「迷惑とは何のことかな? お前はもう迷ってはおらぬようだからな。
 私は自分の道を決めた者に対してとやかく言う権利は持ち合わせてはおらんよ。
 正しいと決めた道を、真っ直ぐに進もうとする者に助力は惜しまん」

「……まったく、ウズミ様は昔からに甘いから……」

 小さく肩をすくめて苦笑したキサカに、隣のカガリも『同感だ』と言わんばかりに軽く眉を潜めた。



「先日のアラスカ崩壊以来、地球連合軍―――大西洋連邦は中立国へも強い圧力をかけてくるようになった。
 無論、このオーブとて例外ではない。
 『JOSH−Aであれだけの兵が、ナチュラルのために勇敢に戦ったのだ。
  だからお前達も我々に協力して、コーディネイターを滅ぼす道を選べ。
  そうでなければ、プラント支援国家として敵対国とみなす』―――――とな」

「……そんなむちゃくちゃな……」

「奴らはこの国が欲しいのさ。いや……この国の軍事力がな!」

 思わず言葉を発したノイマンに、カガリが悔しさを抑えきれないといったように言う。

「確かに軍事力目的で、大西洋連邦は我々に圧力をかけて来ているのかも知れん。
 しかし、我が国はという人種差別によって受け入れを拒否することはしない。
 『ナチュラル』だから、偉いわけではあるまい。
 『コーディネイター』だから、何でもできるわけではあるまい。
 ましてや、生まれてくる子供達にそれを選択する権利はない。
 キラくんと、ニコルくん、ディアッカくん、ラスティくんはコーディネイター。
 そしてカガリは、キラくんとが通っていた工業カレッジの友人はナチュラル。
 しかし彼らは打ち解け、話をし、笑い合って、泣いてケンカしても、互いの存在を認め合っている。
 それを認めず、相手に近寄ろうという努力すらせず。
 頭ごなしに自分達と異なる存在だからという理由だけでコーディネイターを排除しようとする。
 ……彼らのそのそのやり方が、私には受け入れがたいのだ」

 そう言い終えたウズミは飲み物で少し喉を湿らせた。

「……ですが、それは理想論に過ぎないと僕は思います」

 それまで黙って話を聞いていた彼に、皆の視線が集中した。ニコルは少し顔を赤らめたが、それを振り払うようにして言葉を続ける。

「僕たちは生まれてきてからずっとプラントで暮らしてきた、いわゆる第2世代です。
 地球に降りてきたのは今回が初めてです。
 それでも、第1世代の両親やアカデミー先生から、ずっと受けてきた迫害の歴史を聞かされてきました。
 だから正直、この国に初めて入った時、周りの様子が虚像のようなものにしか感じられなかったんです。
 僕が教えを受けていた先生は、
 『ナチュラルは自分より劣る、一緒に生活することなどは論外だ』という考えの持主でした。
 だから僕にもその考えが染み付いてしまって、いつの間にかナチュラルを見下すようになっていたんです。
 戦場に出て、地球軍のMAを撃墜することに最初はためらいを覚えはしました。
 ですが『自分達よりも劣る存在をつぶして何が悪い』という考えになり、
 最初はAAを撃つことにも、ストライクやを堕とす事にもためらいを持ちませんでした。
 ですが、今はここにいて、皆さんと話して。少しずつその間違いに気が付いてきました。
 でもやっぱり、僕らはコーディネイターなんです。ナチュラルには受け入れがたい存在なんです」

 キラはニコルの言葉を黙って聞いていたの手を、そっと握り締める。

「……いいよニコル。あのこと、ここで話しちゃっても……」

 手を掴んでもらえて少し安心したのか、は彼に向かって小さく微笑んだ。それを聞いて、ニコルも頷き返す。

「アラスカに到着前、キラさんがMIAになったとき。
 発進を促すために僕とはAAブリッジに行きました。艦長さんは覚えてらっしゃいますよね?
 あの時の彼女は、彼との約束もありましたけれど、補給も終えていないでは応戦できないからと。
 それに皆を死なせたくないから、発進を促す発言を後押ししたんです」

「そしてAAが動き始めたのを確認して、私とニコルはその場から立ち去ろうとしました。
 その時、CICに座っていたミリアリア先輩が小さく呟いたんです。
 『……キラのかわりに、が死ねば良かったのよ……』と。
 そして続けて。
 『どうせの覚悟にキラが付き合わされただけなんでしょ。
  AAを守るって決めたのもよね。
  自分の都合に、私たちの大事な友達を巻き込まないでッ……』って」

「僕はクストーの中で、が彼女をどう思っていてどんなに大切な存在かを聞いていました。
 だから、今のウズミ様の考えをお聞きして、それが理想論でしかないと思えたんです。
 人は相手が誰であっても、すぐに死を願えるもの。
 増してや、自分と違う存在ならなおさらではないでしょうか?」

「……そうかも知れぬな。国内でも小さな諍いは耐えることがないのが現状だ。
 しかし、そう考える人の前に、自分はその人とは違うという考えを持つことも大事なのではあるまいか?
 先の私の発言は、確かに虐げられていた歴史を教えられて育った君たちからすれば、綺麗事かも知れない。
 それでも私は、このオーブという国を、君たちの両親達が知る差別のある場所にしたくないだけなのだ」

 年若い少年の言葉にも真摯な表情を崩すことなく、オーブの獅子は答えを返した。

「オーブからコーディネイターを排除する差別ある地にするか。それとも現状を貫くか。
 近いうちに決断の時は訪れよう。それまでに君たちも決めるといい。
 このままの状態で戦う道を選ぶか、ザフトに戻り再び地球連合軍を……ナチュラルを滅ぼす道を選ぶか。
 だがこのままでは、命令に従い相手を滅ぼすだけの世界となろう。
 見極めてみよ。―――今何をするべきなのか、自分が何を望んでいるのか。
 若い君たちになら、それを見つけ出し、そこへ向かう手立て辿り着く時間も残されているのだからな」



 そしてそれぞれの思いを残し、会見は終了した。



黒マント製作機から
 ……台詞ばっかりになったなぁ。しかも微妙に何がいいたいのかわからなくなってるような。


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