「戻られたのならお返ししたほうがいいと思って」

 メンテナンスベッドに屹立している機体を、キラをはじめとするAA一同は驚いて見上げ、言葉を失った。

「……よくもここまで……」

「OSは、例のサポートOSを載せてあります。ただし、阿波踊りの後でしたけどね」

 イタズラっぽく笑った彼女に、苦笑するしかないキラ。

「フラガ少佐、以前お受けしたスカイグラスパーの強化ですけど……」

「あ、もうあれいいわ。俺、こいつに乗ることにしたから」

 彼が後ろでに指したのは、鋼色に輝くディアクティブモードのX−105・ストライクだった。





「……エリカ主任。私達を呼び出した理由は他にもあるんですよね?
 ストライクのことだけでしたら、艦長さんとフラガ少佐、それにキラ先輩だけでよかったはずですし」

 の一言。

「あら、嬢がそんなにせっかちだとは思わなかったわ。
 昔はビオラ博士の後ろに隠れてばかり。
 あまりの可愛らしさに私たちが挨拶しても、何も言えなかったのに」

「もぅ……昔のことは言わないで下さいよ。恥ずかしいですから」

「ビオラ博士って……?」

「ビオラ=イブノア博士。のお袋さん。ちなみにイブノアは旧姓」

「「ええええっ!!!!」」

 エリカとのが和んでいる横で、キラ何気ない質問を投げ。それに対して、これまたあっさりと答えを返したカガリ。
 そして半瞬のち、キラとマリューが叫んだ。

「嘘ッ、イブノア博士って、僕たちの講義で何度も出てきた名前だよ。
 ナチュラルでありながらコーディネイターに混ざっていくつも博士号を取っている機械工学博士だよね?」

「それに、私たちみたいにGの開発メンバーに携わっていたものの間でも有名だったわ。
 何しろイブノア博士の知識と技術があったからこそ、フェイズシフトは実用化できたのだもの」

「え、ちょっとそれは初耳です。
 僕たちが乗ってたXナンバーのPS装甲って、ビオラおば様の作ったものだったんですか?」

 声を上げたニコルに、エリカが笑いながら頷いた。

「彼女が『瞬時に物質を強化させるシステムがあれば』って言い出してね。
 それを開発中のMSに取り入れようってことになって。
 それからの博士は、こっちが声をかけなきゃ衣食を忘れるぐらい、1週間以上研究室にこもってたわね」

「あの時は私も覚えています。いつもは優しい母が、こっちが話しかけても何も答えてくれなくて。
 そんな時に限って父は別件で出かけてしまっているし、どうしようかと泣きそうになって……」

「それで木の下でうずくまってたお前に声をかけたのが、最初だったよな?」

 カガリの言葉に、は頷いた。

「そうだったね……もう10年近く前だもんね。
 まさか今さら、母さんの残したシステムに世話になるとは思わなかったけど。
 でも、もうは当分使えないし……」

「あら、嬢。私が何も用がなくてあなたやニコル君、ディアッカ君を呼び出したと思ってるの?」

「え?」

「言ったろ。大気圏内戦闘については解決済みだって。あそこを見ろよ」

 カガリが指し示したのは、少し離れた位置のM1アストレイの姿。

「……今度はアストレイに乗って戦えって言うの?」

「いいえそうじゃないわ、あなたたちに見て欲しいのはアストレイの背中にあるもの。
 あのスラスターを装着すれば、もバスターもブリッツも大気圏内飛行が可能になるわ」

「え……俺達の分にも装着してくれるって言うのか?」

 驚いたのはディアッカだけではない、ニコルも同様に眼を見開いていて。

「ウズミ様のご好意さ。……どうせ、お前らはに引っ付いて動くだろうからなって。
 だからバスターとブリッツ、の3機はこちらに搬入して修理完了。
 後は、スラスターを取り付けるだけになってる」

「ラスティ、貴方がどうしてここにいるんですか?」

「彼はオーブ軍のパイロットよ。直にAAに行くことになるでしょうけど」

「そういうこと。俺にもできる力があるから、そして守りたいものがあるって言った。
 そうしたら、ウズミ様は俺をアストレイのパイロットにしてくださったってわけ」

 『な?』と軽く片目を瞑った後、キラの手からを奪い取って、彼女のその柔らかな頬に口付けた。びっくりして真っ赤になる

「プラントにいた頃は良くしてたのに、また新鮮な反応示してくれちゃって」

 クスクス笑いながら、ラスティはの肩に手を回して、今度は素早く唇を奪った。

「ラスティさんっ!!!!」

 放心状態から抜け出したキラが、彼から引き剥がした彼女をきつく抱きしめる。

「人の彼女に手を出さないで下さいよ!」



「あらあら、しばらく見ないうちに嬢にはこんな素敵な殿方がたくさん。
 うらやましいですわね、カガリ様?」

「な、なんで私がそんなことを思わなきゃならないんだっ!」

「だって、嬢はカガリ様より年下なのに、言い寄ってくる男の人はたくさん。
 それに引き換えカガリ様には、恋人どころか男の影すら見えず……」

「大きなお世話だ!」

「……キラ君にまたライバル出現ってところね……」

「坊主も虫除けが大変だな、ありゃ。とっとと既成事実でも作ればいいのに」

「少佐、その意見は不謹慎ですわよ」

「おや艦長さん、何を想像したわけ?
 俺は早く、の左薬指に指輪をはめてやりゃあ虫除けになると思っていったんだけど」

「……………………知りませんッ!」

「ラスティの奴、まだ諦めてなかったのかよ……」

「一旦は結婚にまでこぎつけた相手ですしねぇ……」

「やめときゃいいのに。今のキラを敵に回したら、精神的にズタボロにされるぞ」

「覚悟の上なんでしょうか……?」





「イタッ、キラ、痛いってば!」

「何言ってんの、僕以外の男にキスされた個所なんだからちゃんと拭かないと」

 白いハンカチで、キラはの頬を擦る。

「あーあ、あんまりきつく擦るから、彼女の頬が赤くなっちゃったじゃない。ねぇ?」

「ひゃっ!」

「ラスティさんがそういうことをするのが悪いんです! は僕のなんですから止めて下さい!」

 両側に垂らしていたの手を持ち上げたラスティは、その手の平を軽く舐め。驚いたが声を上げて真っ赤になり、キラがまた怒る。

「こうなったら、手っ取り早く見せ付けちゃおう」

「え?」

 『何を?』という言葉を遮られて、の唇はキラのそれに塞がれていた。角度を変えて深くなっていくキスに、は自然にキラの袖を掴む。

「……ん、あっ……キ、ラやめ……んっ皆、見てるッ…………」

「いいの、見せ付けてるんだから」

 ともすれば互いの舌が絡む濡れた音さえ聞こえてきそうな生々しいキスに、ラスティだけでなく、周りにいた皆すべてが動きを止めていた。

「この色情狂がッ!」

 一番先に我に帰ったのはカガリ、言葉と共に手近に在ったレンチを投げつける。

「いい根性だねぇ? 今度僕のフリーダムと模擬戦やりたいの?」

 真っ赤になっているを胸に抱いたまま、キラは彼女の方を見てにっこりと笑った。

(怖ッ!!!!!!!!)

 キラとカガリと以外の全員がその時に抱いた感想だった。







「最後通告だと!」

 48時間以内に現政権の解散、武装解除及び解散―――受け入れられなき場合は武力を持って対峙する。

 読み上げられた通告文は、もはや降伏勧告、宣戦布告。
 パナマが落とされたという知らせは先ほど届けられた。ということは、彼らが狙っているのはマスドライバーとモルゲンレーテ。それがわかってはいても、大西洋連邦はどうあっても敵と味方に分けたいのかと激昂しても、南下してくる艦体を止めることはできない。
 オーブの首長達にも決断の時が迫っていた。

「ともあれ、避難命令を……」

 それは迫りくる戦乱を国民に知らせることでもあり、子供達が時代に殺されることがないようにとのせめてもの願いだった。



黒マント製作機から
 キラ&ラスティ暴走。間に立ってるヒロインはどうしたものかと困惑中。
 アズさんが出てくるシーン、最初はカットいたしました。
 薬中3人組が出始めたら、彼にもしゃべってもらいます。


To NEXT