砂浜に出たアスランは、そこから見える惨状を眺めていた。
 自分と幼馴染がぶつかりあった結果、砂浜にも木々にも大きな傷痕を残している。無残に折れた木もビームの熱で溶けて固まった砂も黒く焼け焦げた後も、全て自分たちが生み出したもの。
 あの時はただ夢中で、気がつかなかった……。
 ふと、近寄ってきた人の気配に気づいてアスランは振り返った。
 杖を突いた盲目の男性の正体は、ラクスから教えてもらっていたから、驚きはしなかった。






「……現在、地球連合軍艦隊が、この国を目指して進攻中です」

 AA・MSデッキの一角に全てのクルーが集められた。
 整列した彼らの前で、マリューは絞り出すように言葉を続ける。


 地球軍と共にプラントを撃つ道を選ばぬのなら、ザフト支援国家とみなすということ―――。
 オーブ行政府は何とか話し合いの道を取ろうとしているものの、地球軍は相手にしていないこと―――。
 このままの状態で行けば、戦闘は回避できないこと―――。
 そして、不慮の事態に備えて。
 行政府は、全国民に対して都市部及び軍関係諸施設近くからの避難命令を発令したこと―――。


「我々もまた、道を選ばねばなりません……」

 現在のAAは脱走艦であり、自分達の立場すら定かではない。

「オーブのこの事態に際し、我々がどうするべきなのか。
 今は命ずるものもなく……そして私も、今のあなた達に命令する権限は持ちえません。
 交戦が回避不能となれば、明朝09:00に攻撃が開始されます。
 我々はそれまでにどうするべきなのか、自分自身で考えなくてはなりません。
 ……よって、これを機に艦を離れようという者は速やかに退艦し、オーブの避難指示に従ってください。
 今まで、私のような頼りない艦長についてきてくれて、本当にありがとう…………」





 解散となって散り始めるクルー達。
 どうするべきなのか、簡単に答えを導き出すことは難しい。
 ざわつき始めた一同を見ながら、は隣のキラの手をしっかりと握った。

「……大丈夫。僕らはもう迷わない」

「うん……」

 優しく微笑みながら握り返された手。そのまま、居住区に向かって歩き出す。

「キラ、!」

 バタバタと走ってきたカガリは、せっかくの礼装も少し乱れさせて追いついてきた。

「まさかっ、まさかオーブが戦場になるなんてッ……」

「……カガリ、落ち着いてよ。ほら、服の乱れもちゃんと直して」

「あ、ああ」

 キラの指摘に慌しく服を調え。

「カガリの心配も最もだけど、私はね、ウズミ様が間違っているとは思ってないよ。
 ううん、むしろこの道を選んだことをすごいと思ってる」

「僕も同じ。大変だとは思うけど、少しでも助けたいから、僕もも戦う。
 カガリのお父さんが、ウズミ様達が守ろうとしている、このオーブって国を、僕たちも守りたい」

「キラぁっ……」

 感極まったカガリは、キラの首にしがみついてワンワン泣き出した。

「ちょ、カガリっ……」

 しかし、大泣きしている彼女が離れる様子もなく。
 キラが困ったような顔をに向けると、彼女は。

「カガリが相手だったら別にヤキモチなんて妬きませんよ。だから、落ち着くまでそのままでいてあげたら?
 今の彼女が泣いてる理由はわからなくもないですしね」

 『じゃ、私は先に部屋に戻ってます』と、は駆け出していってしまった。

「……あの態度が『ヤキモチを妬いてる』っていうんじゃないのかなぁ……」

 キラは小さくため息をついた後、泣き続けるカガリの背中を優しく叩いてやった。





 居室の前の角を曲がろうとして、正面から来る人影に気が付いた私は素早く隠れた。

「……やっぱり、カズイ先輩は降りるんだ……」

 私服になってカバンを持っているカズイを、制服姿のサイが送っている。

「サイ先輩は降りる気ないみたいだけど……他の人たちはどうなんだろう……」

 もうあんな人たちのことはどうだっていいと切り捨てたはずなのに、気にしてしまう自分が不思議だった。
 私は、工業カレッジの先輩たちとは仲良くするまいと決めた。これ以上馴れ合って、また傷付けられてしまうのはもうイヤだったから。……それが、どうして気にしなきゃいけないんだろう。自分でもわからない。
 とにかく、彼らが残るにしろ去るにしろ、私には関係のないこと。
 私はキラ先輩と共に戦うと決めた。ただそれだけだから。



黒マント製作機から
 戦闘が近くなると筆が進まなくなります(苦笑)


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