結局のところ、退艦者は11名となった。半数以上がAAに残ったことになる。
 しかしこれで本当に良かったのだろうか、自分が無理強いしたのではないだろうか。
 マリューの頭の中にはその考えばかりがよぎった。



「まさか、こんなに残ってくれるとは思いませんでしたね」

 ブリッジに現れた彼の言葉に、マリューは小さく笑った。

「JOSH−Aのことが頭に来た奴らがそれだけ多いってことだ。……それより、キラ」

「なんです?」

 ニヤニヤと笑うムウに、キラは首をかしげた。

「今のお前を見たら、の奴に愛想を尽かされるぞ?」

「そうね、いつからキラ君は二股かけられるほど器用になったのかしら?」

「バッ、バカなことを言わないでくださいよっ。僕は一筋なんですっ!」

「だって……ねぇ?」

「だから誤解しないでくださいってば。カガリはそんなのじゃないですよ。
 彼女が泣き出したときには、も側にいたんです。
 それにカガリが落ち着くまで側にいてやれって彼女が言ったんですよ」

「なら、どうしてここに連れてきたの?」

「だって、いつまでも狭い廊下にいたら通行の邪魔になるでしょう?
 ちょうど一番ここが近かったですから、泣き止んでくれるまではここにいようと思って」

 『それに、ここなら誰かがいるから証言してもらえるし……』と小さく付け足した言葉を、ムウは聞き漏らさなかった。

「やっぱりにヤキモチ妬かれたな?」

 返答に詰まったキラを見て、マリューとムウは笑い出した。







 そして、運命の朝が訪れた―――――。





『―――人はたやすく敵となる』

 昨夜世話になった伝導所の主、その彼の独白。
 そして、流れてきたニュースで伝えていた、地球軍によるオーブへの進攻。

『ザフトなんか、おっきくなったら、ぜんぶやっつけてやる!』

 そう叫んで、向こう脛を蹴り上げてきた、戦争の巻き添えで親を失った子供。
 たった1夜で起こったそれらが、ジャスティスへと戻ったアスランの胸を占める。

『あなたは自分の『正義』の翼とともに戦ってください。
 それがたとえ私たちと敵対する道になろうとも、ためらわないでください。
 何が正しいことなのか、何が間違っていることなのか。第3者が口出すべき問題ではありません。
 本当の『正義』は自分で見つけ出すことしかできないのです』

 朽ちかけたホールでの会見。婚約者の彼女から言われた言葉が繰り返される。

『広げるはたやすく、消すは難しいものです……』

 盲目の導師の言葉。

「……自分の正義は、自分で見つけ出す……か……、わかった、ラクス。
 俺はこの戦火を消すために、自分で考えたことを、正しいと思ってやってみる!」

 飛び上がった深紅の機体は、抜けるような青空を切り裂いた。





 時刻きっちりに開始された地球連合軍の砲撃を、横一列に並んだオーブ艦隊が迎撃、撃ち落としていく。
 開戦の知らせを受けたAAも、海上へとその白の巨体を舞い上がらせた。そして、霰のように降ってくるミサイルを、ゴッドフリートで沈黙させていく。

『オノゴロ島に敵MS隊展開!』

 海から、そして空からやってくるのは地球連合軍量産型MS・GAT−01『ストライク・ダガー』。

「お前ら、気を抜くんじゃねぇぞ!」

「その言葉、ストライクで初陣のムウ兄にそっくりそのまま帰しますよ!」

も、みんなも、死なないでね!」

 AAのハッチより5機のMSが、フリーダム、ストライク、、バスター、ブリッツの順で飛び出していく。M1アストレイ部隊は、モルゲンレーテ脇のハッチからの出撃となる。





「だーっ、こいつら数多すぎっ!」

「何ですか、ディアッカはもう、早々と泣き言ですか?」

「誰が泣き言なんか抜かすかよ、そんなことをしたら後で蹴り飛ばされちまうだろ!」

 ブリッツのトリケロスが2機のストライクダガーを沈黙させれば、背中合わせのバスターが放った高出力ライフルがダガー3機を撃ち抜いた。

「確かに減らないですよね、動きの点では飛ぶことができるこちらが有利ですけど。
 数だけ持ってきて攻めるのは、地球軍の常套手段ですよね」

「まったくだぜ。アカデミーのシュミレーションを思い出しちまったじゃないか!」

 ブリッツに照準を合わせていたダガーに、アストレイのライフルが突き刺さった。

「ラスティ、持ち場を離れちゃいけないんじゃないのか?
 それでなくてもあっちのお嬢ちゃんたちはMS戦は初めてだろうが」

「大丈夫さ、彼女達も訓練で場数を踏んでいる分、引けは取らないよ。
 それにあっちにはも、エンデュミオンの鷹もいるしね」

 湾の反対側で展開しているダガーはすべて、防衛ラインに辿り付くまでにアサギ、マユラ、ジュリの操縦するM1アストレイのビームライフルか、ムウのエールストライクのビームライフル、若しくはのロッドによって叩き落されていた。

「それはわかったけどさ、フリーダムは、キラの奴はどこに行ったんだ?」

 ラスティはそれに答えず、アストレイの指先を上に向けた。それを追って、見上げるバスターとブリッツ。

「……派手……ですねぇ……」

 多重ロックした機体が放ったビームは、一度に10機近くのダガーを戦闘不能に陥らせる。

「ウカウカしてると、見せ場全部フリーダムに持っていかれるぜ」

「本当ですね」

にいいトコ見せるチャンスだっていうのに」

「…………しつこいですよ、ラスティ」

 近くに敵がいなくなったのを確認して、3機は移動を開始した。





「キャーキャーキャー」

「騒いでないでちゃんと狙いなさいよ!」

 逃げるマユラに照準を合わせたダガーのコックピットを、ジュリのライフルが撃ち抜いた。

「……あ、ありがと……」

「ちゃんと狙って撃たないから致命傷を与えることができないのよ。訓練中でもよく指摘されたでしょうが」

  ズガァン!

「ジュリは注意力散漫になりすぎ。1機やったからって気を抜かないで!」

「アサギに言われなくてもわかってるわよ!」

「でも、砂糖に群がる蟻のようにやってくるのよね。……いい加減にしてほしいな」

「それは私も同感」

「マユラの意見が正しいけど……じゃ、モルゲンレーテは砂糖なの?」

「マスドライバーもだぜ!」

 飛び込んできたストライクが、続けざまに3機のダガーを撃ち抜く。

「……鷹さんが来てくれたぁ……」

「おいおい……、そこで呆けてる間にやられっちまうぞ? この国を守るって決めたんだろ?」

 苦笑するムウの声に、ここにいる理由を思い出したのだろう。彼女らは背中合わせになって、迫り来るダガーを確実に倒していった。



黒マント製作機から
 戦闘シーンは、なかなか書けないです。


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