―――――陽が昇る。

 『本来なら美しく嬉しいはずの夜明けが、今朝は新たな命が失われる合図のように思えるな』と、ウズミは窓の外の景色を見下ろしながら考えた。
 昨夜も一睡もしていない。……と言うよりもできないのだ。
 娘のカガリも、弟のホムラも、そして他の首相たちも自分の体を気遣ってくれ、休むように進言してくれる。
 しかし、今まで築き上げてきたものが壊され奪われようとしている中では、ゆっくりと落ち着いて休むこともできない。
 オーブは、自分の心血を注いで形を成したもの。
 ナチュラルもコーディネイターも差別することなく、1人の存在として受け入れ、その理念に賛同するならば同じような生活を与え、種族間の争いを起こさせないために作り上げた場所。町中での小さな諍いはありはすれども、人間が余計な命の奪い合いをしなくてすむ場所。

「…………ウズミ様…………」

「ホムラ代表。……私も決断せねばなるまいな……」

「我々一同はウズミ様のお考えに従います。オーブは、何としても守り抜かねばならぬのですから」

 窓の前に立つ彼は、言葉なく静かに頷いた。







「アスランさぁ〜〜〜ん!」

 愛機の元に向かっていた彼に、走って追い付いて、その胸に飛び込んできた彼女。

「おはよう。朝から元気がいいな、は」

「おはようございます。
 ……だって、昨日は模擬戦の後、キラ先輩に拉致られて、ちゃんと話せなかったですから」

 『いろいろと話したいことあったのに』と、は頬を膨らませる。

「その、を拉致った本人はどうしたんだ?」

「私が起きたときにはまだ寝てたので、私のベッドの上で、シーツごと素巻きにしてきました」

のベッドの上にキラが? 何でそんなところで……」

「あれ、昨日言いませんでしたっけ? 私とキラ先輩、同室なんです」

「……聞いてないって……」

 それからアスランとは並んで、ジャスティスの元へ向かう。

「で、キラを素巻きにしてまで1人でやってきた理由は?」

「昨日の話の続きです。私と模擬戦やって、何か掴めました?」

「まぁな」

 ラダーに捕まったアスラン。が彼の首にしがみついて、アスランの腕が彼女の腰に回されて、2人でコックピットに吊り上げられていく。
 シートが元の位置に戻ると、彼の膝の上にいたはシートの後ろへと回る。

「……うっわぁ……さすがザフト最新鋭の機体だけありますね」

「なんだ、見るの初めてか? フリーダムと同じものだぞ」

 勝手にキーボードを引き出して操作し、OSに眼を走らせている彼女に、彼は驚いたような声を上げた。

「だってですね、Nジャマーキャンセラーのプログラムなんて見せたくないからって言って。
 コックピットにも入れてもらうどころか、覗き込むことすらさせてもらえないですもん」

「なるほどね……ほら、どけて。俺も少しいじりたいから」

「え、こんな完璧なプログラムのどこをいじるって言うんですか?」

「触るのはOSじゃない。昨日の戦闘データについて。それと……キラに合わせた反応設定も少しね」

 カシャカシャとキーを叩く音に、は綻んでくる顔を隠せない。

「じゃあ、アスランさんの『正義』は見つかったんですね?」

「きっかけをくれたのは、みんなの意見ととの模擬戦。そして昨晩ずっと考えて、やっと……かな?」

「よかったぁ……」

 泣き出した彼女にアスランはびっくりして、動きが止まる。

「な、何もが泣くことじゃ……」

「だって、だって、キラ先輩とアスランさん、幼馴染で戦わせたくなかったんですから。
 2人とも、ずっと苦しそうな顔ばかりでっ……ひっく……だから私、うれしくてっ……」

「わかった、わかったから泣き止め。そうしないとあいつらが……」



「「「「アスラァァァァァァァンッッッ!!!!」」」」



 『誰のことですか?』とが問いかけるよりも早く、走り込んできたのはキラを先頭に、ニコル、ディアッカ、そしてラスティ。
 『遅かったか……』を頭を抱えるアスランに、彼の横から眼を見開いたままで見下ろす。この様子に黙っていないのがキラである。

、朝から僕のこと素巻きにしておいて、そんなにアスランと2人きりになりたかったの。
 狭いコックピットで密会したかったのっ?!」

「な、バカなこと言わないで下さいよっ! どこからどうやったらそういう論理展開が生まれるんですか!」

「アスラン、あなたにはラクス嬢がいるでしょう?
 それなのに無理やりに手を出して、泣かすのなら容赦しませんからね!」

「ニコル、激しく誤解するな!」

「おーい2人とも、二股かけるならもっとわかりにくくした方がいいぞ〜」

「「ディアッカ(さん)、この場を混乱させるようなことを言うな(言わないで)!」」

「朝っぱらから人目を忍んでデートとは、奥手のアスランにしちゃ珍しいじゃないか」

「ラスティも真顔でそういうことを言うのはやめてくれっ! キラが本気に……え゛?」

、こっちに戻っておいで。そのあとでアスランとは南の島での決着をつけるから」

 ハッチを開けたまま動き出したフリーダムは、手を出してくる。

「南の島での決着って……、キラ、そんなことやったら嫌いになるから!」

「どうしてそう、君は僕以外の男の方を持ちたがるんだよ!」

「キラがわがままだからっ!」

 あまりと言えばあまりにもきっぱりと、間を置かずに言い切った
 思わず隣のアスランも、フリーダムとジャスティスを見上げていたニコル、ディアッカ、ラスティも。言われた本人のキラも、その動きを止めざるを得なかったりする。
 そのあいだに、はジャスティス・コックピットから飛び降りて、少し体勢を崩しながらも着地。さっさと、その場を後にしてしまった。





「……おい坊主ども、これから忙しくなるって言うのに、何やってるんだ?」

 彼らが復活したのは、マードックの呆れた一言だったとか。



黒マント製作機から
 何げにヒロインとアスランが仲良しさん。……別に意味なし。
 だってね、アスランはヒロインのことを妹以上に見れませんから。

 でも、最初がシリアスだったのに、またギャグになったのは何故だろう……。


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