「さぁ、君タチ、今日こそはあの国を黙らせてきてくださいヨ」

 沖合に停泊している地球連合軍所属艦“パウエル”。
 1人の男の言葉を合図にして、船体横のハッチがゆっくりと開き、カラミティ、レイダー、フォビドォンの3機が飛び出した。
 空中で鳥型のMSに変形したレイダーがカラミティを背に乗せ、フォビドゥンと共に眼前先の陸地……オーブ首長国連邦・オノゴロ島を目指す。






 対して、オノゴロ島では。


 すでに地球連合軍の強襲艇よりストライクダガーがはきだされ、MS守備軍との激しい戦闘が始まっていた。
 海岸線上空にフリーダムとジャスティス、その下にと、ストライク。
 モルゲンレーテの近くにはバスター・ブリッツ、そしてM1アストレイ部隊。赤を基調としたアストレイの中に、1体だけオレンジのカラーリングをした機体があった。



「ラスティ、何でお前のはオレンジなんだよ?」

「オレンジはミゲルのパーソナルカラーですよ?」

「いいのいいの、あいつと一緒に戦ってるってことで納得してくんない?
 多分ミゲルもさ、生きてたら、きっとここにいたと思うし」

 視線の先には、ダガーを蹴り倒して飛び上がったの姿。

「ミゲルも何のかんの言いながら、のこと気にかけてたもんな」

 バスターのビームライフルが、右斜め後方にいたダガーのコックピット上部を打ち抜く。

「ヘリオポリスでカスタムに乗ってたら。
 今頃はキラさんとラスティと、三つ巴でのことを奪い合っていたんじゃないですか?」

 クスクスと笑いながら、ブリッツのランサーダートに狙われた機体が沈黙した。

「その前に、ミゲルの奴ならキラに『殴らせろ〜』とか叫んでそうだぜ。
 俺は実際に見たわけじゃないけどさ、ミゲルのジン、1回は堕とされたんだろ?」

「なるほど、それはあるかもな」

「おや、アスラン。聞いてたんですか?」

「ああ。あっちでは、キラとが怒ってるぞ。何をのん気に喋ってるんだって」

 『夫婦揃って盗み聞きとはいい趣味してるねぇ』と言うディアッカに。

「誰と誰が『夫婦揃って』なんですかっ!」

 声と共に、のビームが、バスターを掠める。そして、その後ろのダガーに突き刺さる。

「何しやがんだっ!」

「おーっほっほっほ、そんな流れ弾に当たって負傷したらザフトレッドの名がすたりますわよ?」

「おっしゃよく言った!」

 何をする気なのか悟ったアスランが止める間もなく、バスターが超高インパルス長射程狙撃用ライフルを放った。がしかし、その光の筋は、展開していたダガー5機を巻き込んでに届く前に威力を失い消えうせる。
 その様子に胸をなでおろすアスラン、ニコル、ラスティの3人。

「ぜんぜん当たってませんよ? あ、そういえば、ディアッカさんって射撃の命中率悪いんでしたっけ」

 ぴしり。

、手加減してやってれば調子に乗りやがってぇぇぇぇぇぇ!」

「きゃあぁぁぁ、色黒金髪男が怒ったぁぁぁぁぁ」



 逃げる、追いかけるバスター。
 この緊縛した戦闘中にMSの追いかけっこという、何ともはや想像しなかったその様子に、敵味方なく呆然立ち尽くしてしまう。
 あっちこっち逃げ回るに向かって、バスターの高出力ライフルが乱射され。



「……おい……いつの間にか、ダガーほとんど沈黙してないか?」

「おやま」

「はい、そこまで」

 降下してきた青い翼に遮られ、とバスターの追いかけっこは終わった。

「君たち、僕だけに働かせておいて何してるんだよ」

 明らかに不機嫌なキラの言葉が流れる。

「特にアスランとは、おしゃべりを止めに行ったはずだよねぇ?」

 映像を開いているわけではないからMSの中は見えないのに、ラスティとニコルには2人が体を震わせた様子が何となくわかった。

「で、でも、は怒らないでいてあげてくださいよ。
 彼女が計算して逃げ回っていたから、バスターの乱射したライフルがダガーを撃ち抜いていったんですから」

「うん、僕がを怒るわけないじゃない。ただし、ナカスことはするけどね?」

<そういうことを、あっさり言うな!>

 口では言えずに心の中で揃って突っ込む、健康優良男子4名。

「ミイラ取りがミイラになったアスランと、
 へ銃を向けたディアッカへのお仕置きは後で考えるとして……。
 ……そろそろ、来るよ」

「わかった。皆はモルゲンレーテを頼む」

 空へと上がった自由の剣、正義の翼。

「私もッ、私も一緒に行くっ!」

「だめだよ、は皆と一緒にいて? ここは僕とアスランで抑えるから」

「あの新型はGATシリーズの新型なんだ。
 今までのXナンバーの性能についても知り尽くしているだろう」

「だから、不利になるとわかっているのにみすみす行かせるわけにはいかないよ。
 大丈夫だから、ね」

 再び降りてきたフリーダムは、の肩に触れる。





「これでジャマな音声も映像も入ってこない、フリーダムとだけの接触通信になったね」

「うん…………」

 手元モニターに写った紫の瞳、その顔の輪郭を私はは人差し指でなぞる。

「………………怪我なんかして帰ってきたら、部屋に入れてあげないんだから」

「大丈夫だよ。僕は今までだっての元に帰ってきただろ?」

「じゃあ、今回も約束して」

 脱いだヘルメットを、脇のスペースに落とす。

「もちろん、ちゃんとに会いに戻ってくるよ」

「会うためだけ?」

「うーん…………それ以上の言葉は自主規制ということで」

 私は思わず吹き出した。
 そして顔を上げると、モニターの向こうでヘルメットを外した顔が柔らかい微笑を見せる。


「無事に……帰ってきてください……」

「僕のことだけ考えて、待っててね」


 体を倒して、私はモニターに口付けた。キラも同じように……。
 なんだか冷たいはずのガラスが、重なっている部分だけほんのり暖かく感じた。








 飛び去っていくフリーダムとジャスティスを見送って、は先に行ったブリッツたちの後を追いかける。



黒マント製作機から
 今回からはオレンジのアストレイが登場します。
 前回(前日)のときは調整が間に合わずに通常機で出たラスティですが、今回からはカスタム。
 作中にもありますが、戦死したミゲルの分も、彼はヒロインを守るという決意の表れなんです。

 そーしーてー、モニター越しのキスッ! これ1度やらせたかったんですよ。
 最後の戦いのときにしようかなんて思ってたんですがね。ここでさせちゃいました。


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