「もうデータも吸い出したことですし、いらないンデスヨ。あの艦、いい加減に墜ちてくれませんかネェ」



 パウエル・ブリッジ。
 椅子に寝そべるようにしているスーツの男が、つまらなそうに言う。
 メインモニターに写るのはモルゲンレーテと、パウエル以下地球軍艦隊の射線を割る形で港から動かない、大天使の名を冠する白亜の艦の姿。



「ご自慢の新型が手伝ってくれれば、あっという間にお望み通りになりますが」

「仕方ないじゃナイの。アイツら、妙なMS2機に足止めされちゃってるしネ」

 カメラが切り変わると、海上で乱れ戦う5機のMS。

「なら、もう少し我慢してください。
 AAにダメージを与えてなくても、オーブ艦隊は既にボロボロの状態です。
 そして、すべてのダガーが破壊されたとはいえ、市街地も同様。
 オーブが膝を折るのも、時間の問題ですよ」

 白い制服制帽姿の、太った軍人がにたりと笑った。.






 賑わっていたはずの繁華街も、緑で整えられていた公園も、無残な炭と煙の世界となっていた。
 モニターに映るその景色を見ながら、ヤラファス島では首相たちの決断が下された。

「残存部隊はカグヤに集結せよ。―――――オノゴロは放棄する!」

 その決定に驚いたのは、別の司令室にいたカガリである。

「お父様、何を!?」

「説明する時間がないのだ。お前もこちらに戻って来い」

 港で膠着状態のままのAAにも、そして、今しもAAの援護に向かおうとしていたMS部隊にもその決定は届けられた。

「……カグヤ?」

 聞きなれない名前に、ディアッカが口を開く。

「オーブのマスドライバー施設のことだ」

 それに答えたのはラスティ。

「でも、ウズミさまはどういったお考えで……」

「わからんさ。とにかく、呼ばれたんだからそちらに向かおう」

「その前に、私は海へ向かいます」

 言葉が終わると同時に、飛び上がった。一直線に海上のパウエルを目指して飛んでいく。

「あのバカッ!」

 慌ててストライクが追いかけるが、スタートダッシュの差はなかなか縮まらないでいた。

「……私たちも追いかけた方がいいですか?」

「いや、のことは鷹に任せておいても大丈夫だろう。俺達はカグヤへ向かおう」





「こら、! 1人で動くんじゃない!」

「だって、モルゲンレーテを守っているから動けないAAを攻撃したんですよ? ムウ兄は許せます?」

「そりゃ俺も許しがたいけど、1体で何ができるっていうんだ?」

「心配しなくても、駆逐艦の1隻ぐらいは沈めてみせますよ!」

 迫り来る2体のMSに向かって、攻撃が開始される。とストライクはその間をすり抜けて飛ぶ。

「このワガママ娘!」

「変態、セクハラ、スケベ兄貴!」

「泣き虫のクセに口ばっかり達者になりやがって! 胸も成長してない色気ないガキが!」

「まだまだこれから大きくなるんです〜。
 今度艦長さんにいっとかなきゃ、ムウ兄がいやらしい目で狙ってますよーって」

 言い合いしながらでも、飛んでくるミサイルはすべて避けるか迎撃している辺り、息が合っているのかいないのかわからない。

「美人を狙うのは男のサガだ!」

「じゃ、艦長さんによけい注意するように言っておかなきゃいけませんね」

 のロッドからと、ストライクのライフルが同じ箇所に向けて、同時にビームを吐き出した。
 そして船体に大穴を穿たれた駆逐艦が沈んでいく。





「キミタチ、捕まえてくださいネ」





 そんな声がパウエルのブリッジで呟かれたのと、背中のスラスターを撃たれたストライクが急激に墜落していくのはほぼ同時だった。

「ムウ兄!!!!!!」

 追いかけようとしたは、突然引っ張られる。

「オッサンが、逃がすなってサ」

「なっ、離せよっ!」

「無理ですヨ。その機体は力も上回っていましてネェ。
 いくらXナンバー最後に開発された機体だといえども、簡単に勝てるはずがありませんよ。
 。貴女さえこちらに来れば、これ以上落ちていったMSに危害は加えませんが?」

 の腕をつかまれたことで流れ込んできた声。
 1つは少年のもの、そしてもう1つ。はそれをどこかで聞いたことがあるような気がしていた。
 どこで聞いたものだったろう…………?

「サァ、どうします?」

、悩む必要なんてないからね」

 光が走ったかと思うと、パウエル横の無人駆逐艦が爆発。炎を上げて沈んでいく。

「キラ先輩!」

「何やってんの。こんなトコまで来るから捕まっちゃうんだよ。
 僕は大人しく待っててって言ったはずだよね?」

 そう言いながらフリーダムのラケルタが一閃。切り落とされかけたところを、フォビドゥンは寸でのところでを放した。

「何をやってるんですか。彼女を捕らえるせっかくのチャンスだったのに!」

「ナラ、アンタが自分でやれば?」

「思い出した…………。てめぇは、ムルタ=アズラエルか…………」

「光栄ですネ。たった1度しか会っていないというのに覚えてたとは。さすが博士の娘さんだ」

「お前が親父の名前を出すんじゃねぇっ!!!!」

!」

 手を離せば今にも突っ込んでいきそうなを羽交い絞めにし、フリーダムはその場を離れた。ジャスティスも落下したストライクを手に、カグヤへの帰路を急いだ。



黒マント製作機から
 ヒロインが何度目かに捕らえられてきたとき、アズさんと面会したことがあります。1回だけですが。
 彼の「さすが博士の娘だ」は、のちの話に絡んできます。

 次ぐらいで3クール終了させます。多分。


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