――フェイズシフトが落ちた。 その機を逃すはずもなく、デュエルのライフルはストライクを捕らえた。 フェイズシフトが落ちるということは、エネルギー残量がほとんどないということで。 二人ともがなす術なく、銃口に集まる光から目を反らせずにいた。 特に、は『絶対に死ねない』と豪語したばかりだというのに。 「……、動かないってことはあきらめちゃった?」 「キラ先輩こそ止まってるじゃないですか」 「エネルギーが尽きて動けないんじゃ、僕だってどうしようもない。 たとえ、今を避け切れても、次の攻撃が避け切れるとは思わない。 おそらく、完全停止してしまうだろうしね」 「私はあがきたいんですけど。おとなしくやられるのも癪ですし。 だから、操縦変わってもらえます?」 「ダメ」 にっこり笑顔でも目が笑っていないキラの言葉。 予想していたものと寸分たがわぬ答えに、は苦笑するしかなかった。 そんな時。 突然引っ張りあげられる機体。 流れこんでくる、友軍のものではない通信。 『なにをする!』 『この機体は捕獲する』 『なんだと!』 目の前の獲物をかっさらわれて、イザークは叫んだ。 その原因を作った相手アスランは、イージスのバーニアを吹かせ始めた。 『命令は捕獲じゃなくて、撃破だろうが!』 『これだけの機体を沈めるには惜しい』 キラは咄嗟のことに反応できないでいた。 しかし、は音声通信に眉をしかめていた。 幸い、それは気が付かれてはいなかったが。 「アスラン、僕たちをどこへ連れていくつもりだ」 『この機体は、このままガモフへ連行する』 「嫌だ、ザフトになんか行かない!」 『来るんだ! ……そうしなきゃ、俺はお前を撃たなくちゃいけなくなる』 届いてくる声は、絞り出されるかのような辛い声。 自分の記憶にあるものと激しく異なっていて、キラは反論を封じられた。 後ろの席のの方は、シートを握る指先が白くなっていた。 『あの血のバレンタインで……母も死んだ……。だから、これ以上……なくしたくはないんだ……』 「そんな……」 彼の母・レノアのことは、キラだって覚えている。 忙しいレノアが、キラの家にやってくることはごくまれだったけれど、アスランを迎えに来た時に見せる、優しく笑う笑顔が印象的だった。 今から思えば、彼女が初恋だったのかもしれない。 レノアが死んでしまったことを聞いて、キラの動きは完全に止まった。 「チッ!」 俺は舌打ちすると、キラ先輩のシートベルトをむしり取って、彼の体を後ろに押しやった。 無重力下での移動は俺の力でも可能なことが、唯一の救いで。 それに、先ほどまで断固と拒否していた存在が、アスランの一言で自失状態なのも幸いした。 そしてベルトを締めると同時くらいに、横殴りの衝撃。 続いて、フラガ大尉からの通信。 『AAからランチャーストライカーを射出する。タイミングを合わせて換装するんだ!』 『了解しました!』 『キラッ!!』 アスランの声が聞こえたけれど、俺はそれに返事しない。 それに、名前を呼ばれたほうはまだ惚けてるし。 こんな状態になりやすいんだったら、余計ストライクは任せられないな。 俺はペダルを踏みこんで、離脱した。 『デュエルが狙ってるぞ!』 フラガ大尉の声と。 「貸してっ!」 俺の手の上に重ねられた手が、レバーを倒すのがほぼ同時だった。 飛び上がったストライクの位置を、半瞬後、ビームが駆け抜ける。 AAから打ち出されたパックに注意が逸れていた俺をフォローしたのは、いつの間にか正気に戻っていたキラ先輩。 「た、助かったぜ。サンキュな」 飛び上がる寸前にパック交換もできたから、一安心。 「ペダルを踏んでてくれたから……。 で、いつの間に入れ代わってるのかな?」 「敵からの言葉で、戦闘中に惚けた奴に叱られる筋合いはないね。 変わらなきゃ、俺たち今頃ザフトの船の中だったんだぞ」 「……ごめん。って! 君は、誰?」 「そんなのはどうだっていい。 フラガのおっさんも作戦成功したみたいだからな、さっさと帰艦するぞ」 放ったランチャーに遮られて、ザフトの4機は追ってこられない。 その隙に、ストライクとAAは空域を離脱した。 あーあ、取り逃がしたことで、おかっぱ荒れてんだろうなぁ……。 止める奴等の苦労を考えて、俺はつい小さなため息を漏らした。 ![]() 黒マント製作機から 相手がキラなので、どうしてもAAよりの話になってしまうのはごめんなさい。 最後『君は誰?』と言われて答えなかったのは、状況のせいもありますが、 通信を通して名前が赤服隊に聞こえることを避けたかったからなんです。 ヒロインは赤服隊を知っているし、向こうもヒロインのことを知っています。 その理由についてはのちのち暴露するつもり。 というわけで、次はアルテミスです。横暴なガルシアに、ヒロインまた切れます。 To NEXT |