「当面は拠点を決めることだな」

 キサカの言う通りだった。
 物資は積みこめるだけ積んであるものの、無限ではない。特に水はすぐに問題になるだろう。
 物資の補給という言葉から、あのユニウスセブンが漂う冷たく静かなデブリベルトを思い出したのか、小さく震えた。その右手をキラが、左手をカガリが掴んだ。

「ちょっとカガリ。を慰めるのは僕の役目なんだから、その手を離してよ」

「何を言う、こいつを慰めるのがお前の役目だなんていつ決まった? 誰が決めた?」

「いつって、が僕のモノになった時点で決まったんだよ。邪魔しないでよね」

「何をふざけたことを。まだ結婚もしていないくせに、何が『僕のモノ』だ。
 親友であり妹のように一緒に育ってきたを、いきなり現れた紫目の泣き虫の変な奴に渡せるか」

「誰が何と言おうと、は僕のモノだからね!
 ……何なら、彼女は体のどこが感じるか教えて、はぐぁっ!!!!!

「……いい加減にやめないと蹴る」

 真っ赤な顔で言うに、『もう蹴ってるし』というエリカの突っ込み。
 ブリッジにいた男性陣すべてが、彼の蹴られた部位を押さえていたりする。そして当のキラは、少し離れた位置で腰を背中から叩きつつ、呻いていた。

「ナチュラルでもコーディネイターでも、アレは男にしかわからない痛みよね……」

 マリューはその様子を気の毒そうに、そしてどこか呆れたように、ポツリと呟いた。








「何だか話が激しく脱線したが……。ひとまず、ここを目指すというのでどうだ?」

 照れ隠しのように軽く咳払いをした後、キサカの指は宙域図の1点を指した。

「……L4のコロニー群ですか……」

「それはいい案かも知れません」

 その場にいた皆が、藍色の髪の少年に注目した。彼はそれに少し顔を赤らめて、その後言葉を切り出した。


 開戦後、破損し、次々と放棄されていったこと。
 以前、不審な一団がいるという通報を受けて、ザフトが調査に向かったこと。
 既に無人のコロニー群だが、まだ稼働しているものもあるということ。


「じゃあ、決まりということでいいな?」

 カガリの言葉に頷く一同。その時おもむろに口を開いたのはムウ。

「ここに残ってくれるならあてにしたい。……お前ら、本当にいいんだな?」

「ムウ兄、まだ信用してないって言うの?」

「最終確認だ、最終確認。
 今まで信じてた軍を抜けるのが、どんなに大変なのかをわかってて。
 それでも俺たちと一緒に来てくれるのか聞いてみたいだけさ」

「特に、アスランは国防委員会直属の特務隊で、最新機まで受領している身だしなぁ」

「ラスティさんまでそんな言い方ないじゃないですか!」

「……いいんだ。本当のことなんだから。
 確かに俺はユニウスセブンに核を打ち込んだ地球軍が、憎くてたまらないときもあった。
 だから命令に従うままに、ナチュラルを殺して。それが、母を含む24万人余りの弔いになると信じて。
 でも、この艦と向き合って戦い始めた時点で、少しずつ変わって行くのがわかった。
 皆を殺させたくないと戦うキラとの存在。落とされるのがイヤだから必死に反撃してくるAA。
 それが俺達とどう違うんだろうか……って思い始めた。
 できることならば争うことを止めさせたい。これ以上無益な命の奪い合いをさせてはいけない。
 そう思ったからこそ、俺はここにいることを選んだ。
 ニコル、ディアッカ、お前たちもそれに気が付いたんじゃないのか?」

「ええ。アスランの言うとおりです。……MS越しだからなかなか実感わきませんけれど。
 今のザフトが、僕たちがやっていたのは『戦争』という大義名分を掲げた殺戮です。
 僕たちが殺した人たちの家族や知り合いも、僕たちがミゲルを失ったときと同じように泣くんですものね。
 そして悲しみは憎しみへと変わっていき、殺した相手を殺そうと銃を手にするんです。
 自分が殺した相手の家族が、自分と同じ行動に走ってしまうことを考えもしないで……」

「国防委員長閣下の言われるとおり、確かに片方を全滅させたら争いは終わるだろうさ。
 でもそれができないから、この戦争は11ヶ月も続いてんだよな。
 だったら、それ以外の方法に気付いた俺らが何とかするしかないんじゃないか?」

「何だ、見てないようで見てるんじゃないの」

 ムウはニヤリと笑いながら、1番近くにいたニコルの頭をクシャリと撫でた。

「ムウさんっ! 子供扱いしないで下さいよ!」

「お前の頭の位置が撫でやすいんだよなぁ。ってなわけで、こいつらも俺達の仲間ってことで」

 まだわしゃわしゃと、撫でるというより髪の毛をかき回し乱しているムウと、膨れながらも払いのけようとしているニコルの姿は、見ている者に微笑ましい時間を与えた。







「……アスランさん、ラクス嬢は無事でしょうか……?」

「え?」

「私、ずっと気になってたんです。前に言ってたじゃないですか。
 キラ先輩にフリーダムを渡したとき、その映像が工廠の監視カメラに残ってたって」

「アスラン、そんなの初めて聞いたよッ……」

 ようやく痛みから立ち直ったキラは、の言葉に驚いて、アスランに詰め寄った。

「彼女なら大丈夫だ……俺はそう信じてる。
 別れ間際に、最後に会ったときのラクスの目に迷いはなかった。
 彼女も彼女なりに考えて、恐らく、同じ答えにたどり着いているはずだ。
 そして、ラクスの考えに賛同している人も少なくないだろう。
 でなきゃ秘密工廠のカードキーなんて簡単に手にできるか?」

「でも……彼女ぐらいの立場の人だったら……」

「ねぇさん。ラクスさんって、あの脱出ポッドに乗っていた彼女のこと?」

 恐る恐る声をかけてきたのは、マリュー。

「あ、ラクス嬢はアスランさんの婚約者なんです」

 あっさりとした説明に、動揺を隠せない面々がいた。



黒マント製作機から
 進まないです。ごめんなさい。


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