ようやく泣き止んだカガリが離れてくれて、そして僕は初めて気がついた。





、どこへ行ったのかな?」

 その言葉に2人も辺りを見渡す。すると、開け放したままのドアが目についた。

「……いつの間に出て行ったんだ……?」

「わからない。俺たち皆、写真に気を取られていたからな」

 カガリの呟きに答えを返したアスラン。僕もその通りで、いつの間にやらの手を離してしまっていたらしい。その隙に逃げられてしまったんだと思った。

「カガリ、僕たちは取り合えず、AAに戻ってもいいかな。……こっち、アストレイでいっぱいだし。
 それに加えてブリッツやもあるし」

「それもそうだな。だけど、キラはを連れて帰りたいんだろ?」

「当たり前じゃない。カガリが許してくれるなら、睡眠薬を嗅がせても連れて帰るよ」

「……それは連れて帰るというより、拉致だと思うんだが……」

「アスラン、何か言った?」

 『いいや』と言いながらもため息をついている彼が少し気になったけど。ま、アスランよりのことが優先だしね。突っ込まないでいてあげるよ。

「それでカガリ、、連れて帰ってもいい?」

「薬を使用しないならな」

 ち、釘をさされたか。

「あいつも少し休ませてやれ。
 母親の思い出のあるモルゲンレーテの崩壊は、だって悲しいはずだ。
 なのに、あいつは1回も泣いていないんだ。それなのにただじっと耐えて、私の側についていてくれた。
 だからキラ、アスラン。一度あいつを思いっきり泣かせてやってくれ」

「その役目はキラだけのものだろ。俺はお呼びじゃないさ」

「それじゃ、MSデッキに行くまでにを捕獲して、連れて帰るね。
 はもう少し預かっててくれるかな?」

「1機ぐらいは置けるから、それは心配するな」








「キラ、カガリを1人にしておいていいのか?」

 展望デッキを後にして、を探していた僕に、後ろをついてきていたアスランが問いかけてきた。
 僕は止まって、彼を振り返る。

「あれだけ慕っていた父が自分の本当の親じゃないと知って、きっと混乱してるぞ」

「だろうね……。でも、僕が側にいたからって考えがまとまるわけじゃないよ。
 それどころか、どうして僕たちは引き離されたんだろうとか、本当の親は誰なんだろうとか。
 その人たちはどうしたんだろうかとか、あまり考えたくないようなことを考えなきゃならない。
 アスランの言うように僕とカガリが双子だったとしても。
 どうして僕はコーディネイターで、どうしてカガリはナチュラルなのか。
 わからないことだらけで何も考えられなくて、多分、2人して唸ってそうじゃない?」

「それはそうかも知れないな」

 アスランはくすりと笑った。それを見ていた僕も、自然に微かな笑顔になった。そのあと。

「……本当はね、僕も混乱してるから。
 お互い、突きつけられた真実に少し冷静になる時間が必要だと思ったんだ」

 再び動き始めた僕に、アスランは黙ったままで付いてくる。

「ところで、アスラン。さっきから何か別のこと言いたいんでしょ?」

「え?」

「鼻の頭を指で掻くの。何か言いたいのに我慢してるときの、アスランの癖だったじゃない」

「そ、そうか?」

 少し黙った彼。

「キラ……、向こうへ戻ったらシャトルを借りられないか? 1度プラントへ戻ってみたいんだ」

「アスラン、そんなことをしたら……」

「わかってる。でも、俺は1度、父とちゃんと話がしたいんだ」

 アスランの目の真剣な光に、僕は何も言えなくなってしまった。ただ、『わかった』としか頷くことしかできなかった。

「……なら、早くを探して、AAに戻ろう」







 その頃の地球。

 狙っていたオーブのマスドライバー施設をモルゲンレーテもろとも破壊された連合軍が、唯一残されたビクトリアのそれを奪還していた。
 先陣を切っていくのは、カラミティ・フォビドゥン・レイダーの3機。そして、それに続くストライク・ダガー部隊。
 ナチュラルにMSが操れるわけがないと高を括っていた彼らザフト軍守備隊は、あっけない幕引きを迎えた。
 そしてその様子を、満足そうに眺めるアズラエルの姿があった―――――。




 一方、ザフトのシャトルが、プラントを目指し飛び立った。
 船内には深い緑色の制服をまとった一般兵に混ざった、エリートのみに許される赤い制服に銀色の髪という人目を引く風貌のイザークと。
 その近くに腰かける白い制服と仮面のラウ=ル=クルーゼ、その横には赤い特徴的な髪を揺らせ一般兵の制服を着たフレイ=アルスターの姿があった。

 アラスカにて。
 覚悟していたとは言えども、やはり1人だけの異動が耐え切れず。列を抜けてAAを探し求めさ迷っていたフレイを気絶させ拉致したのは、グランドホローに侵入していたクルーゼだった。
 気がついた彼女は最初こそは怖がっていたものの、父親と同じ空気を見せる彼に逆らうどころか思慕すら寄せてしまっていた。

 そしてシャトルの中でも。
 見知らぬ場所へと向かうことに恐れている彼女を、クルーゼは優しく宥める。
 僅かな温もりにすがり目を閉じるフレイ。


 ……………しかし、なぜ敵軍にいた彼女に優しくし、いたわりすら見せているのか。
 その仮面の下に隠された思惑を、誰も気がついていない。



黒マント製作機から
 キラとアスランによる移動中の会話も悩みましたが。
 それ以上に悩んだのがザフトシャトルの描写だ。
 本当にフレイ嬢の関わるシーンは嫌です。でも書かなきゃ、後々困るから。


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