「こちらですわ」

 ラクスが彼らを案内したのは、エターナルのMSデッキの奥だった。しかし、扉のせいで中をうかがい知ることはできない。

「……ここは?」

「先ほど『エターナルは3機のための専用艦だ』とバルトフェルド隊長が言ってらっしゃったでしょう?
 アスランのジャスティス、そしてキラさんのフリーダム、そして……」

「まだパイロットの決まっていない、フライトのためのね」

 その声に、ニコルとは顔を見合わせる。

「まさか……」

「こんなところで……?」

 元ザフトの面々もその声の持ち主を知っているようで。

「ニコル、、お前たちが無事でよかった」

 薄暗いところから出てきた人物はにっこりと笑って両手を広げた。

「父さん!」

「おじさまっ!」

 駆け出し飛びついてきた息子と姪を、ユーリは愛おしそうに抱きしめた。

「……誰?」

 顔だけは知っているのか、相手が誰かわかっているらしいカガリ。事情が飲み込めていないキラが、隣のアスランにそっと耳打ちする。

「ユーリ=アマルフィ評議会議員。ニコルの父親で、にとっては叔父さんにあたる人だ。
 それに、技術畑でも優秀な人で、キラのフリーダムや俺のジャスティスの開発責任者でもある」

「へぇぇ、そんな凄い人までラクスさんと一緒に来てくれたんだ……」

「凄いな、お前の婚約者の人望って……」

 感心したように言うキラとカガリに、アスランは少しだけ笑みを返した。





「でも父さんがここにいるってことは、母さんを1人残してきてしまったんじゃ……」

 思いがけない再会に喜んでいたニコルは、思い出したことを口にした。

「そのことなら心配いりませんわ。ロミナ様も、エターナルに乗っていらっしゃいますもの」

「「「「「え゛?」」」」」

 彼女を知る者たちの綺麗に重なった声に、ラクスはニコニコと笑い続ける。そして。

「ニコルと、詳しい話も聞きたいでしょうけれど、再会の喜びはあとにとっておいて下さいな。
 ……ユーリ様、おねがいします」

「わかりました」

 彼らから離れたユーリは、ドアの横のキースリットにカードキーを通した。
 そして、開かれていく鉄の扉。
 バックライトによって浮かび上がったシルエットは、フリーダムともジャスティスとも似通ったフレームを持つMS。

「ZGMF−X11A・フライト。X09A・ジャスティス、X10A・フリーダムの兄弟機だな。
 そしてもちろん、Nジャマー・キャンセラーも搭載されているが、完成まではあと少しなんだ」

「未完成の最新鋭機……? そんなのが、どうしてここに?」

 ラスティの問いかけは、皆の意見を代表していた。それに、ふ、と小さく笑ったユーリは。

「ジャスティス・フリーダム・フライトのような大きな力は今のプラントにはおいては置けない。
 というのがラクス様の考えであり、私達クライン派の共通した意見だった。
 だからザラ議長にうまく進言して、フライトは専用艦・エターナル内部で作られた。
 エターナルを奪取するという計画は、バルトフェエルド隊長が艦長に就任した時点で決まっていたからね。
 フライトの主力武器は、右腰から膝にかけて縦に装着されているシュタウトロッド。
 今のあの状態は3つ折りにされている状態だがね。取り外した途端、本体と同じPSで強化される。
 通常の棒攻撃も可能だが、先からビームの刃を出現させて使うことも、刃だけを飛ばすこともできる。
 そしてフライトの名が示すとおり、背中にある翼は真空の宇宙でも羽ばたき上昇することができる。
 その翼は移動手段でもあり、強力なシールドでもあるんだよ」

 再び見上げたディアクティブ・モードのMS。PS装甲展開時には、鮮やかな薄緑になるのだと言う。

「……先ほど、パイロットは決まっていないとおっしゃっていましたが……」

「ああ、君がキラ=ヤマト君か。初めましてだね。
 先の戦闘の様子を、私もモニターで見させてもらっていたよ。
 どうやら、ラクス様が君にフリーダムを預けたのは間違いじゃなかったようだね。
 あの機体をあれだけ自在に動かせる君がパイロットで、開発者の1人としてうれしく思うよ」

 笑いかけたユーリに、キラは少し顔を赤らめて俯いた。

「確かに、フライトにはまだパイロットが決まっていないんだ。
 だからここにいる誰かの……キラとアスラン以外の誰かに乗って欲しいんだが」

「俺パス。一応アストレイでカスタム乗ってるし」

 早々に辞退を告げたラスティ。

「私はもちろん問題外だよな、ナチュラルだからさ」

 カガリも『我、関せず』と言いたげに話題から外れる。

「PS展開時の色が緑だろ? んじゃさ、俺はニコルを推薦するけど」

「ええっ! 無茶言わないで下さいよ、ディアッカ!
 それに僕はの方が適任だと思ってますよ、彼女ならきっとうまく動かしてくれますから」

「それはいいかもな。の乗ってたに武器もよく似てるから」

「僕もその意見に賛成してもいい?」

の意見はどうなんだ?」

「フライトって名前は私には合わないけれど……ユーリ叔父様の作った機体だから、乗ってもいい」

「それじゃ、がパイロットということで決定ですわね」

 最後に確認するようなラクスの物言いに、一同はしっかりと頷いた。



黒マント製作機から
 ヒロインが新機体のパイロットになりました。
 ……ですが最終チェックにもう少し時間がかかり、実際に乗るのはが被弾してからです。
 次の話で……キラとヒロインの間に何かが起こります。ハイ……。


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