フォビドゥンの持つ大鎌・ニーズヘグがラスティ機に振り下ろされる。
 クサナギを絡め取っているワイヤーの一部が、アストレイの足にも絡まった直後のことだった。
 身動きの取れないラスティ、そして対応の遅れたジュリ、マユラ、アサギ。

 オレンジのアストレイが縦割りにされるのを予感した瞬間、カーキ色のMSの背中に着弾した実弾。
 フェイズシフトを応用したトランスフェイズに守られているとはいえど衝撃がないわけではなく、攻撃を受けたことに怒りを露にしたフォビドゥンは、それを放ったブリッツを追いかけて飛び去っていく。

「次の攻撃が来る前にさっさと外せよな」

「お前に言われなくたってわかってるさ」

 『上等だ』と言いながら、バスターはブリッツを追いかけて飛んでいく。







 OSを立ち上げると、引き出したキーボードに素早く指を走らせ、細部の設定を切り替えていく。

「あと少しの間だけ一緒に頑張ってね、!」

 ワイヤーで十分開かないハッチは、発進カタパルトが使えない。それでも、十分に外に出られる隙間は確保できていた。

、出ます!」

 彼女にとって久しぶりの宇宙戦は、星の輝きがなければ周囲に溶けこんでしまいそうな濃紺のMSの初陣。







 カラミティを相手にしているフリーダムの元へ、レイダーの鉄球・ミョルニルが向かう。しかし、それを許すはずもなく、間に割って入ったジャスティスのシールドがそれを弾いた。
 フリーダムのビームライフル・ルプスが、カラミティの足を掠め、ジャスティスのビームソード・ラケルタが、迫ってきたレイダーに切りかかる。が、避けられてしまった。

「ねぇ、アスラン……おかしいと思わない?」

 背中合わせに滞空したとき、キラはアスランに向かって通信を開いた。

「何が?」

「こいつら、この前みたいにがむしゃらに攻撃してこない。かといって、何もしない訳じゃなくて。
 僕らが移動しようとしたら即座に攻撃してくる」

「……何か目的があるのか?」

「わからない。でも、僕たちの動きを止めることが目的なのは確かだろうね」

「まさかあいつら、ジャスティスとフリーダムが核を使っていることに気がついたんじゃ……。
 だから俺たちを捕まえて、Nジャマーキャンセラーの技術を奪おうとしているのかもしれない」

「それだけは絶対に避けなきゃ。この力は地球軍にも渡しちゃいけないんだ」

 モニター越しに頷きあったキラとアスラン。
 そして、フリーダムとジャスティスの砲身が一斉に火を噴いた。面食らったのはその先にいたレイダーで、慌ててその場から待避。その隙をついて2機は飛び出した。

「ばぁーか、何逃げられてんだよぉ!」

「うっせぇよ! お前だって見てただけじゃねーか!」

 馬鹿にしたオルガの言葉にクロトは忌ま忌ましそうに答え、カラミティとレイダーはすぐさま転身してフリーダム・ジャスティスを追いかける。







 MS戦に気を取られていたために、ドミニオンを見失ってしまったAA。慌てて索敵を開始するも、その前に主砲・ゴッドフリートの射戦上にいたことに気付かされた。

「待避ーっ!」

 張り上げた声。何とか直撃は免れたものの、右舷にミサイル群が飛び込んでくる。AAの逃げる進路を計算して、そこに追い込むことで発動させた見事なトラップ。
 マリューは感嘆の言葉を呟くと同時に、敵に回した彼女がどれだけ厄介な相手かを再認識せざるを得なかった。







「あれを捕獲すればよろしいので?」

「ウン、そう!」

 メインモニターに写るのは青い翼のMS、赤い機体のMS。
 ナタルの問いかけの言葉に、アズラエルは椅子から身を乗り出してうれしそうに答えた。その目は新しいおもちゃを受け取れるかのような子供みたいに見えた。

「ホントはどっちも欲しいケドサ、『2兎追うものは1兎も得ず』って言葉もあるしネ。
 だから、あの青い翼つきだけでもイイヤ」

「わかりました。それでは、フォビドゥンをこちらに戻します」

 程なく戻ってきた機体に、ナタルはジャスティスの相手をするように命令する。そしてレイダーにも。
 ニーズヘグを避けきれず、掠ったジャスティスの腕が小爆発を起こす。

「アスランッ!」

「気をつけろキラッ! 奴らは俺達を分断させるつもりだ!」

「みたいだねっ!」

 ドミニオンのミサイルが青い翼を追いかける。それを隙間を縫うように避けて、フリーダムの全砲身がビームを放った。次々と打ち落とされたミサイルは明るい花を散らせる。

「ボディが残ってりゃいいんだろぉぉっ!!」

 ドミニオンに注意が逸れていたキラ。そして、レイダーとフォビドゥンの2機を相手にしていたアスランは気付くのが遅れた。
 カラミティのスキュラが放たれ、迫る光の渦から逃げられないフリーダム。

「硬直してんじゃねぇ、バカヤロウッ!」

?」

「……フツー、味方のMSを手加減ナシで蹴り飛ばすことはしないと思うが……」

「へぇ、ンじゃ、あのまま死んでもよかったってわけか?
 ったく、せっかくミラージュコロイド展開して奇襲かけてやろうとしたのに水の泡じゃねーかっ……」

 いきなり現れたに、その場にいた一同は敵味方なくしばし呆気に取られていた。が、一番先に我に戻ったのはアズラエル。

「ダレでもいいですから、そのMS、捕まえちゃってください」

「なっ……アズラエル理事! パイロットはコーディネイターですよ?」

「知ってマスヨ。……でしょう?」

 薄く笑う男の心境が読めないナタルは、眉をしかめるしかなかった。そしてふと思い出したのは、アラスカ・査問委員会でのこと。確かあの時も、彼女を連れて行こうとしていたのではなかったか―――――?

 その時、新たに散った光の花が、彼女を現実へと引き戻す。
 被弾し右腕の千切れたを支えているのはフリーダム。かばっているのはジャスティス。

「あの2機のこと、1つ確定しましたネ」

「……何が、でしょう?」

「パイロットは彼女をよく知っていて、守りたいと思っているものだということですヨ。
 そうでなければ、あの濃紺のMSを身を挺してまで守っていませんからネ」

 確かに彼の指摘どおりだった。
 先ほどまで動き回っていた2機が離れようとはしなくなった。自然と追い込まれるように徐々にではあるが、カラミティ・レイダー・フォビドゥンの輪が小さくなり、中心にいるフリーダム・ジャスティス・は逃げ場を失っていく。

「2人共、俺なんか放っておいてさっさと逃げろよ。
 地球軍にNジャマーキャンセラーを奪わせて、その結果、みすみす核を撃たせるつもりか?
 そうなったら俺達が今までしてきたことも、ウズミ様やシーゲル様の死も、皆無駄になるんだぞ!」

「狙われてるのは、、お前も一緒だろう?
 それに、お前を連れて戻らなければ、ここで助かったとしてもニコルたちに殺される」

「だからって! ジャスティス・フリーダムの性能ならここから逃げ出せるんだから。
 ここでアスランさんに何かあったら、7代先までラクス嬢に祟られる!」

 『逃げろ』『逃げない』の押し問答が続く中、フリーダムの手が上がり、ルプスの銃口が真っ直ぐのコックピットを狙う。

「キラッ!?」

、さっき助けてくれたのは嬉しいんだけどさぁ、足手まといなんだよねぇ」

「そーかい、じゃとっとと引き金を引けば?
 そしたら完全停止、俺も死ぬから守る必要なくなるわけだし。ここから逃げられるだろ?」

「うん、そうだね」

 脇に回されていたフリーダムの手が、の頭部をがっちりと掴んだ。ビームライフル・ルプスはぴたりとコックピットにつけられ。

「キラ、、本気か、止めろ!」

 味方を撃とうとしている様に、流石のアズラエルとナタルも硬直し。オルガ、シャニ、クロトの3人はただ成り行きを守っているだけ。……恐らく彼らは、が倒れれば、捕獲という命令が1つ減るぐらいにしか考えてないのだ。








「SIGNAL LOST」

 AAのブリッジに、2回目となった小さな音が響いた―――――。



黒マント製作機から
 やっちゃったー。
 キラとヒロインの殺し合いです。てか、ヒロイン無抵抗だったけど。
 続きがどうなるかは、出刃包丁を研ぎながら待っていてください。


To NEXT  連載TOP