背を向けているため、ジャスティスのアスランからも、3機のMSからもドミニオンからも、フリーダムの放ったビームがを貫いて虚空へ消えたことしかわからなかった。
 その場にいた一同、全員が動けずにいた。
 1拍遅れて、ボゥンと小さな爆発が起こり、その音でアスランは我に返った。

「キラ、お前はっ……」

「逃げるよ、アスラン! の犠牲を無駄にする気?」

 もっと言いたかったが、確かにキラの言うとおりでもあったので、アスランは黙った。
 をゆっくりと放したフリーダムは、少しそちらを見つめたままで漂っていく機体を見送った後、キッと前を見据えた。

「よくも僕に究極の選択をさせたね? 覚悟はできた?」

 初めて外部スピーカーを通した声。それを聞いたナタルは目を見開いた。

「艦長サン? 知ってる声ですカ?」

「……AAに乗っていたもう1人のコーディネイター、キラ=ヤマトです。
 アラスカに辿り着く前、X303・イージスと戦闘して機体ごと爆破、MIAとなったはずですが……」

「ふぅむ……では、あちらの赤い方も、イージスの元パイロットかも知れませんネェ」

「そんな……」

 ありえない話ではなかった。
 ……確かパイロット、故人となってしまった上司の妹である彼女は、ザフトレッドの面々とも知り合いだと話していたし、イージスを始めとする奪われたXナンバーは彼らがパイロットだとも言っていた。バスターとブリッツの2機は、現在もダガー部隊と交戦中なのは確認している。残りはイージス、若しくはデュエルのパイロットだけで……。

「ま、捕まえてみればわかりますヨ。……キミタチ、ガンバッテくださいネ」

「白々しいよ」

「……ウザい」

 オルガ・シャニからは面度臭げな返答がかえってきたが、クロトは何も言ってこない。それどころか、すばやくMAに変形して1機で飛びかかっていった。
 鋭い鉤爪が、左腕を狙うが避けられ返しざま、フリーダムのラケルタが、レイダーの両脚部を切り落とした。

「今のうちに!」

 飛び出したフリーダム、それに続いてジャスティスがその場を離れ。

「ちくしょぉっ、やられたっ!」

「追いかけて……殺る……」

「青いの、許さねぇ」

 一瞬見送っていたカラミティが彼らを追いかけ、フォビドゥン、レイダーもその後を追った。







 フリーダムとジャスティスは並んで飛ぶ。

「アスランはこのままムウさんたちのところへ行って。僕は一旦エターナルへ戻るから」

「キラ、お前はさっき、自分が何をやったのかわかっているのか?」

「……わかってるよ。僕がこの手で、を撃ち倒したんだ」

「だったら何でそんな平気な顔をして……」

「平気なワケないじゃないかッ!
 いくら彼女が望んだとはいえ、今まで一緒に戦ってきたMSを撃ち抜いたんだよ!」

 音声のみの通信。フリーダムが映像を開くことを頑なに拒んでいる。
 理由を問いかけても『今の顔を見せたくないから』としか言わない。

「……とにかく、僕は一度エターナルへ戻るから……」

「わかった……」

 すっかり声を沈ませている親友に了承の言葉を伝え、1つの線は2つに別れた。







「待っていましたわ」

 例の陣羽織姿のラクスが、戻ってきたフリーダムを出迎える。

「用意はすべて調っています」

 開いたハッチに投げられた言葉は、天井に跳ね返った。







「手負いの獣はしつこいってね!」

「ディアッカ、そんな軽口を叩いている暇なんてないですよ!」

「確かに、こいつらナチュラルとは思えない動きだな!」

「ラスティもそう思うだろう」

 例の3機はジャスティスの後を追いかけてきた。そのため、バスター・ブリッツ・クサナギのワイヤー除去作業を終えたM1アストレイ部隊が、ダガー部隊とともに彼らの相手をすることとなる。

「ストライクは?」

「ジュリたちと一緒にAAとクサナギの方に回ってる!」

「アスラン、フリーダムとはどうしたんです?」

「キラはエターナルに戻ってる。……は……」

「ちょ、……マジかよ」

「話は後だ! 今はこいつらを何とかするほうがさ……え……」

「……帰艦信号弾?」

「みたいですね……。何が……」

 帰っていく3機を見送るジャスティス、バスター、ブリッツ、オレンジのアストレイ。

「早いし流石だねー。よっぽど鬱憤溜まってたのかな?」

 呑気な口調とともに現れたのはフリーダム。

「キラ、お前がやったんじゃないのか?」

「当たり前じゃないか。僕はここにいるんだよ?
 確かに、エターナルからこっちにくるまでにムウさんたちのところでちょっと寄り道はしてたけど」

「俺等が必死になってやってたことを、寄り道の一言で済ませるなよな!」

 噛みつくように返された言葉は、勢いはあれども怒っているようには聞こえない。

「でも、フリーダムではないとすれば、一体……?」

「それは怨念パ……うわぁっ!」

「ちっ……仕留めそこなったか」

「……新型……?」

 呆然と呟いたムウ。
 薄緑のMSは、白い翼を一度はためかせた後、ゆっくりと閉じた。

「ああ、見てない奴等もいたんだっけか。
 こいつはZGMF−X11A・フライト。X09A・ジャスティス、X10A・フリーダムの兄弟機。
 完成間際だったのをエターナルが技術者ごと持ってきたってわけ」

「それが今ここにいるってことは、完成したってことですよね?」

 やってきたアサギが言うと、『そーゆーこと』といった答えが返ってくる。

「……じゃ、パイロットは……誰?」

「さっきの話だと、は墜とされたんでしょ?」

 マユラの言葉に、ジュリが続けて。

「君たち、何言ってんの。声聞いてわかんない?」

「「「え?」」」

 呆れたキラの物言いに、3人娘の声が重なる。

「本当に…………なのか?」

「本当ですよ。ほら」

 ラスティの言葉に各MSに開かれた映像回線。モニターに写っているのはヘルメットを被ったの姿。

「お前……はフリーダムに……」

「出撃前にユーリ叔父様の方からフライトが完成したとの連絡をいただきまして。
 それならば、効果的に皆にお披露目できないかなーっと、ちょっと1芝居をば」

 にっと笑う彼女に、アスランの怒りはふつふつと湧き上がってくる。

、せっかくの機体今すぐスクラップにしてやる! お披露目と同時に破壊してやる!」

「げ、アスランさん眼が据わってるッ!」

「当たり前だッ! 俺がどれだけ心配したと思ってる!」

 羽根を広げて逃げるフライト、それをサーベル振り回して追いかけるジャスティス。それを見て、皆が一斉に呆れたのか安堵かわからないため息をついたのは言うまでもなく。



「そういえばキラ。お前はの芝居にどこから関与してたんだ?」

「ほとんど最初からですよ。ドミニオン前でフリーダムをかばった結果、が被弾して。
 それを支えてたときに、あっちから文字通信を送ってきたんです」

 ムウの質問に、あっさりと答えるキラ。

「右腕をなくしたは足手まといだから、逃げる振りして撃ち抜いてくれって。
 コックピット脇ギリギリの、外部開閉パネルを狙うように指示を出してくれて」

 向こうの方ではまだフライトとジャスティスの追いかけっこが続いている。

「彼女も大丈夫だって言うし、僕もそれを信用してですね。
 ジャスティスからもドミニオンからも、あの3機からもが見えないようにして撃ち抜いたんです。
 開閉パネルを壊したことで開いたコックピットから出てきたを、急いでフリーダムの中に入れて」

「……しかしよく、がそんな計画を立てたな……」

「そうですよね、今の彼女はキラさんとの接触を一切避けてるのに」

「そんなのは簡単さ。ドミニオン前でフリーダムを助けた時点から、あいつは出てこない」

 とうとう捕まったフライトがジャスティスに腕を引かれてやってくる。

「あいつ?」

「アサギさんたちには後で説明してやるよ。……って、ムウ兄、どうしたのさ?」

 はAAの後ろを、メンデルの方をじっと見ているストライクに気が付いた。

「あいつがいる……」

「……え?」

「ザフトがいるんだ! 俺は行くぞ!」

「っちょ、おっさんッ!」

「おっさんじゃないッ!」

 一直線に飛んでいくストライク。しかし、ディアッカの声に突っ込みを入れていく辺りが流石というか……。

「おっさんだけじゃ心配だから俺も一緒に行くわ、皆は残っててくれよな!」

「僕も行くよ!」

 バスターとフリーダムがその後を追いかけていく。が。

「……あれ? フライトは?」

「あっちに拉致られていきました」

 ニコルが辺りを見渡していると、マユラがフリーダムの飛んでいった方を指差した。



黒マント製作機から
 長いッ……。家で書くとどうしても長くなるよ。

 ヒロインの新機体・お披露目〜。
 前話の殺し合い……完全なお芝居です。練習はもちろんナシ、台本ナシの行き当たりばったり。
 その割には息ぴったりなキラとヒロイン。タイミングが少しでもずれたらアウトだったんですが。
 それだけお互いを信じてたってことで。


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