「バカッ!」

 追いついたキラへの第1声が、のこれだった。

「キラ先輩は待ってろって言っただろ!」

「……俺としては、お前がやってきたことも予想外だったんだがな」

「黙れ怪我人」

「ヒデーな」

 は持ってきていた簡易救急セットから止血用パッドを取り出して、ムウの患部に当てた。そして包帯で固定する。

「あくまでも応急処置だからな、後でちゃんと見てもらえよ。
 ……これ以上、目の前で血に染まって死んでいく人を見たくない」

「わかってるさ」

 ムウはの頭をクシャリと撫でた。が、いつものニヒルな笑顔も少し苦しそうに歪められている。







「僅かな間の休息は終わったかね?」

 聞き覚えのないその声に、キラは片眉をしかめた。

「今の……」

「奴がラウ=ル=クルーゼだよ」

「又の名を、ザフトの白い変態仮面ともいう」

嬢、妙な名前で呼ばないでくれないかな?」

「変な名前って事実だろ。仮面被って平然と軍隊にいる時点で、変態決定」

 あっさりと返された答えに、クルーゼからは沈黙。の横のムウは笑いを堪えるのに精一杯になる。

「……とにかく。
 嬢だけでなく、キラ=ヤマト君。君までここに来てくれるとはうれしい限りだ」

「え?」

 突然話を振られて、キラは間抜けな声を上げた。

「ここはキラ君にとっても因縁深い場所だ。嬢、どうせ君は彼に何も教えていないのだろう?」

「知らなくてもいいことを、無理に教える必要がどこにある?」

「フフ、また綺麗事を言うじゃないか。
 ……君たちがこのコロニーを拠点に選んだ時点で、真実を知るための歯車は回り出したというのに!」

「黙れ、仮面!」

 乾いた音が連続して3発、狭い室内に木霊する。
 微かな煙の立ち上るピストルを構えている彼女を、キラはじっと見つめた。

、何をそんなに隠したがってるの……?」

「そんなに知られたくないことなのか?」

 しかしはそれらに答えない。ただ『使うつもりなら、ピストルのセーフティは外せ』を指示を出しただけ。

「確かに、数あるL4のコロニー群の中で、このメンデルを選んだのはこちらだ。
 しかしそれは、ここが一番破損が少なかったというだけの話。間違ってもお前の言う理由じゃない」

「どう言い訳しても無駄だよ。君たちは今、この始まりの地に足を踏み入れたのだ。
 それならば、すべてを知って帰っていただかなくてはつまらない」

「お前の都合なんか知ったことじゃない。
 キラ先輩、ムウ兄を連れてここから離れて、AAへ帰ろう」

「……だめだよ、。僕は今ここから離れられない。あの、クルーゼって人の話を聞きたいんだ」

「俺も同じだな」

「すべてを聞いて後悔しても遅いからな。それだけは先に言っておく。
 それから話を聞いて惚けてしまっても面倒は見ない。自力でAA・エターナルにもどれ。
 突き放したような言い方だが、これからの話を聞いて受け止めるには、それだけの覚悟が必要だ」

 頷いたキラとムウ。は諦めたように小さなため息をついた。

「仮面! ここじゃ資料がないんだろう!」

「やっぱり、博士の娘はよくわかっているね」

「……父の日記を読んだからな。それで仮面、あの部屋に行くまでは一時休戦ということでどうだ?」

「事あるごとに『仮面』と呼ぶのはやめてもらいたいのだが……。
 まぁ、休戦に関しては私は構わないがね。
 怪我人の死に損ないのナチュラルと、最近まで民間人で銃も扱えないコーディネイターなど怖くないさ。
 厄介なのは、いろいろと教え込まれたザフトレッド予備軍の嬢、君だけだ」

「……何ですか、それは……?」

 思わず問いかけてしまったキラ。

「おや、キラ君は嬢が本気で戦っているところを見たことがないのかね?」

「模擬戦をしてたのは見たことがありますが……」

「彼女の本気の戦いを1度見てみるといい。
 技術的にはやや劣っている面はあるものの、嬢の冷酷さはアスランや他の面々以上だ。
 非常に残念だよ。もし、彼女がアカデミーを卒業していたならば。
 『予備軍』でなく正規なザフトレッドとして、私の隊に配属されていただろう」

「けっ、仮面の下で働きたくないね」

「ま、それが素直な感想だろうな」

「私はこの先の部屋で待っている。
 嬢、最後の会話を楽しみながら、最終ステージまで彼らを案内してきて上げたまえ!」

「そんなのはわかってるんだよ、仮面はさっさと消えろ!」







「……、お前……最後って……」

「言葉の通りだけど? 始まりがあれば終わりがある。永遠なんてものは存在しない。
 キラ先輩、ムウ兄の右側を支えてくれるかな。左は俺が支えるから」

「わかった……」

 ちょっと身長差で苦しいかもしれないけど、我慢してもらうしかない。

「あの仮面の言ったように、ここに来たときから終末へのカウントダウンは始まった。
 行きつく部屋ですべてを知ったあと、2人が今まで通りに話してくれるのかはわからない。
 そして俺もあっちも、ムウ兄ともキラ先輩とも、そしてカガリとも満足に話せなくなる。
 だから、最後の会話」

「カガリ……? あの、オーブのお姫様も関係あるのか?」

 俺は頷いた。

「キラ先輩は薄々感づいているんじゃないのか。……これから行く先で何が話されるのか」

「あの写真のコトだよね……」

「それもある。だが、あの写真は最後の結果しか示していない。
 あの仮面はすべて知ってる。そして俺も、父の日記からすべてを知った。
 ここで行われていたことがどんなことなのか、知りたいと言ったのは先輩だからな、覚悟しておけ」

「おいおい、覚悟しておけって物騒だよなぁ」

「ムウ兄も、キラ先輩ほどじゃないが少しはしておいたほうがいい。普通には受け入れにくい事実だしな」

「お前は俺のことも知ってるのか?」

「言っただろう、すべて父の日記を読んだって。但し、レガール兄は知らない。見せる前に死んだからな。
 ……ここが最後の部屋だ、このドアを開いたら全部知った後でしか戻れないからな」


 シュンと開いたドア、室内は薄暗かった。



黒マント製作機から
 ヒロイン、完全に奥に引っ込んでます。会話に参加しません。
 会話してるのは、イザーク曰く『もう1人の』ですんで。


To NEXT  連載TOP