「MS越しじゃなくて、こうやって普通に向かい合ったのは久しぶりかな」



 いつもの笑い方を懐かしく感じながらも、イザークはそれを素直に喜べないでいた。目の前に立っている男は、軍を離反し、自分たちと敵対している存在だというのに。討たなければいけない、しかしそれは今まで一緒に戦ってきた友へ銃を向けること。だから簡単にできない。
 ディアッカは目の前の彼の苦悩を少し読み取ったのか、寂しげな笑顔のままで口を開いて、そして静かに問いかけた。




「……俺は、お前の敵、か?」

「敵になったのはお前のほうだろう! お前もニコルも、アスランもラスティも!」

「俺はお前と敵になったつもりはねぇよ。だから、銃も持たずにここにいる。
 ダチに銃を向けたくないし、命を奪い合う真似はしたくない」

「なら、どうしてお前は軍を離れたァ!」

 ディアッカに突きつけているイザークの銃口が小刻みに揺れる。大声を上げることで、イザークは必死になって自分を保っていた。
 それに対し、ふっと小さく笑ったディアッカは。

「俺はお前と敵になったつもりはない。
 もちろんニコルやアスラン、ラスティだって、本気でお前と戦いたいなんて思ってないさ。
 けどな、いろいろ見ちまったしな。
 このままザフトに戻って、ザラ議長の言うようにナチュラルを根絶やしにする戦いはしたくない」

「……なん、だ……と……?」 

 彼の脳裏に、パナマで無抵抗になったダガーを笑いながら撃ち倒していく兵士の姿が蘇った。

「アスランがさ、最後にもう1度説得できるならばって、プラントに戻った。
 その時にさ『ナチュラルを滅ぼしてしまえば戦いは終わる』って、本人から聞いたんだと。
 ついでにそん時、言うことを聞かない息子に対して、ザラ議長はどうしたと思う?」

 ディアッカは右手で指鉄砲を作り、左肩に押し当てた。

「まさか……」

「その、まさかなんだよァ。
 あの人にとっては自分の血を分けた息子でさえも、ナチュラルという敵を倒す道具でしかないんだ。
 そして地球軍も、コーディネイター排斥団体・ブルーコスモスの手の中。
 だからコーディネイターを敵と見なさない、共存しようとするAAやオーブに攻撃を仕掛けてきた」

「オーブはわかるが……足付きも?」

がコーディネイターだってことを忘れてないよな? それに、あのフリーダムのパイロットもだ。
 あいつが前のストライクのパイロット」

 アラスカで聞こえてきた自分と変わらないぐらいの少年の声。驚きにイザークは言葉が出ない。

「もう2つほど爆弾投下な。えっと、1つ目の爆弾。
 あいつ、キラ=ヤマトって言うんだけどさ。フェンス越しにイザークも1度会ってたりするんだな。
 場所はオーブ・モルゲンレーテ前。潜入したときにやってきた、ロボット鳥を受取りにきた奴。
 そして、2つ目の爆弾。あいつもコーディネイターだ。
 おまけに、アスランとはガキの頃からの友達」

「なっ! なんだそれはっ!」

「俺に聞くなよ……。聞いたところによるとさ、3年前までは一緒に月の幼年学校に通ってたんだと。
 それがさ、情勢悪化で第2世代のアスランはプラントへ避難。第1世代のキラはヘリオポリスへと移住。
 で、そこで工業カレッジに通ってたキラはさ、避難のときに騒ぎに巻き込まれて。
 友人を守るために、なりゆきでストライクに乗る羽目になったんだと」

「なら……最初の頃にアスランの命令無視が目立ったのは……」

「キラがストライクに乗ってたのを知ってたせい。ストライク起動時、アスランはその現場にいたんだ。
 逃げ遅れたあいつを地球軍の士官が、コックピットに押し込んだのも見ていたしな。
 俺達ザフトの襲撃のせいで慌てて出港したAAは、アラスカにたどり着くまで2体のMSと。
 そしてパイロットのキラとという2人のコーディネイターに頼らざるを得なかった。
 そのことを地球軍のお偉いさんはよく思っていなかったんだろ。
 キラの奴はアラスカにつく直前、イージスとやり会って、その結果MIA。
 戻ってきたのはお前も知ってるスピットブレイクの時。
 はアラスカでAAの他の士官と一緒に査問委員会にかけられて、そこで兄貴を殺された。
 そん時からかな、AAクルーに地球軍に対する不信感が芽生え始めたのは。
 止めとなったのが、アラスカでの置き去り。詳しいことは何も知らされず、ただ敵をおびき寄せて奮戦。
 最後にはザフトもろとも、サイクロプスの餌食になりかけた」

「そんな、そんなことがあっていいのかっ?」

「あっていいわけないだろう?
 だが、ブルーコスモスに吸収された地球軍のやり方は、ザラ議長とやってることは変わらない。
 どちらも『敵をすべて倒せば争いは終わる』とね。
 でも、そのやり方だけじゃないことに気が付いたから、最悪の方法へと向かわせたくないから。
 だから俺たちは、それに立ち向かうんだ」

「最新鋭のMSがあっても、たった……たった3隻の戦力で何ができる!」

 イザークが叫ぶ。銃口がわずかに下がっているのは、彼の迷いが大きくなっている証拠。
 叫ばれたことに対して不快感を出すでもなく、ディアッカは小さな苦笑を浮かべた。

「『できないって言ってやらなかったら、もっと何もできない』―――――。
 キラの言葉の受け売りだけどさ、俺も後悔したくないんだわ。
 ただ誰かが死んでいくのを見ているのも、殺されるのを見ていくのも嫌だから。
 人が死んでそのせいでどこかで生まれる憎しみを止めるには、殺し合う元を止めるのが近道でさ。
 だったら、戦争を終わらせるっきゃねーじゃん」



 それからしばらくの間、イザークとディアッカの間には沈黙が流れた。



黒マント製作機から
 今回はところどころ、ほしみの意見を取り入れながらの、イザーク&ディアッカの会話シーンになりました。
 次は再び最深部でのやり取りになります。


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