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「今度はムウ。君に関したことを話そう。 研究というものは色々と費用が掛かる。それはわかるだろう」 「勿体つけずにさっさと話せ!」 「ヒビキ博士が人工子宮の研究に取り組んでいたのは、さっきの話でもしたが。 彼もその例には洩れなくてね。徐々に資金が尽きてきた。 そんなとき、援助を申し出たのがアル=ダ=フラガ。……君の父親だ」 「親父が?」 「あの男は、1つの条件と引き換えにヒビキ博士に多額の援助を持ちかけたのだよ。 そして博士はそれを飲んだ。……ここでも業に駆られた彼の一面が垣間見えるな」 イチイチ気に触る笑い方をする奴だ。俺は、不快感を露に表情を歪める。 「君も知ってのとおり、フラガ家はナチュラルでも有数の資産家だった。 が、後継ぎに君は相応しくないとも考えていた」 「そんなのは知ってたさ。親父は俺が使用人の子供たちと遊ぶことすらいい顔をしていなかったからな」 「そう。自分の後継ぎには徹底的に有能であってほしい。 使用人たちと自分との身分の差をはっきりさせている、選ばれた人間を望んでいたのだ」 「……お前、親父のことをすべてわかっているような口振りだな?」 奴はニヤリと唇を上げて。 「わかっているともさ。私は彼自身なのだから!」 な、に……? 思わず俺は、の方を向いて説明を求めていたらしい。 「彼の言ってることは間違いじゃありません。 ラウ=ル=クルーゼは、ヒビキ博士の技術と人工子宮で作り出されました。 アル=ダ=フラガ、つまりムウ兄のお父さんの遺伝子を持った疑似生命体、クローンです」 「「なっ!!!!」」 親父のクローン、だと? 「人に対するクローン技術は……」 「そうさ、これは完全な違法行為だ。しかしそれを承知で、きさまの父親は話を持ちかけた。 そして、ヒビキ博士はそれを了承した。 互いに自分の夢のために。……夢というきれい事ではないな、欲望だ。 『研究を続けたい』『理想の後継ぎを手に入れたい』互いの欲望を満たすだけに、その話は成立した。 実験は成功した……かに見えた。 確かにヒビキ博士は、私というクローンを作り上げることには成功した」 「……でも、どうしても越えられない壁があった。それが、テロメア。 細胞再生を繰り返すたびに磨り減る、遺伝子のキャップっていう表現がわかりやすいかもしれません。 以前からクローニング技術では最大の難関といわれていた問題でした。 そしてヒビキ博士もそれを越えられなかった。 フラガ氏のクローンである仮面は、生まれたときからそのテロメアが磨り減っていたんです」 「テロメアが短い私は、生まれたときから思い上がった男と同じでしかなかったのだ」 「その証拠を見せてあげますね」 いきなり引き金を引かれたのピストル。咄嗟のことでに反応が遅れたクルーゼの右こめかみギリギリを擦った銃弾が、奴の仮面を弾き飛ばした。 「……ッ!」 の射撃の正確さにも驚いたが、仮面の下から出てきた奴の眼の周りが老人のように窪んでいる事実の方にも驚いた。 「……わかったかね、私が君達2人に関わりのある場所だといった意味が」 笑いながら、クルーゼは銃を撃ちつつ、物陰に隠れた。 その移動ラインを目で追いながら応戦するだが、一向に当たらない。 「君達は人の業によって生まれた存在、そしてその業の深い人間の子供なのだよ! そして、そこにいる嬢とて例外ではない!」 「……も……?」 「=嬢。覚悟していたとは言っても狼狽えたえているのがわかるよ。 そう、銃にしっかりと現れているじゃないか!」 「ふざけたことを言わないで、私のどこが狼狽しているって言うんですか!」 パン! となった銃口は狙いたがわずにクルーゼの落ちたままの仮面を弾き飛ばす。 「さっき逃げる私を撃ちぬけなかったのはその証拠じゃないのかね?」 「ならその影から出てくればいいじゃないですか。今度は間違いなく撃ち抜きますよ」 は空になったカートリッジを後ろ手に投げ捨て、新たなカートリッジを叩き込んだ。 「それに、いつまでもここで話している時間があるんですか?」 「それは君の言うとおりだな。私たちに残されている時間は少ない。 そろそろ地球軍も体勢を立て直して進行してくるだろうしな」 「それじゃ、とっとと話を進めなさい。私は補足しかしないから」 「フフ、いいだろう。キラ君もムウも、知りたそうな顔をしているしね」 「キラ君を生み出した人工子宮の研究、そして私を作り上げたクローニング技術。 それらはヒビキ博士1人の力でなしえることはできなかった。彼とて万能なわけではない。 助手としては妻を始めする有能なスタッフが揃っていた。 が、ヒビキ博士は自分の協力者ともなる研究者を探した。 そして選んだのが、大学時代からの友人でもあったライトバーン=博士。 遺伝子工学の勉強をしていた彼は、ヒビキ博士とは親友といってよいくらいに仲がよかった。 ……ここからは、娘の君から話すべきじゃないかな?」 クルーゼの言うことはもっともだった。聞き役に回るつもりだった彼女は重たい口を開く。 「……話を持ちかけられたときに、父はすぐに了解の返事を出したそうです。 ヒビキ博士の研究がいずれ、すべてのコーディネイターの希望になることを信じていたから……。 でもそれは、想像以上に大変で難しいものでした。 羊水の成分配列、細かい温度調整、そして被検体の受精卵の確保……。 資金の関係もあり、研究は徐々に行き詰まり始め、ヒビキ博士と父との間には口論が耐えなくなりました。 そんな時、自分のクローンを作ってくれたら資金を提供するという話が持ち上がりました。 その話に飛びついて資金面だけは確保した研究グループ。 しばらくは、普通に実験を繰り返しては失敗するということが続きました。 そして、約12年の歳月が過ぎました……」 ![]() 黒マント製作機から ムウさんの話から、今度はヒロインの話です。 To NEXT 連載TOP |