「落ち着いた?」

「……何とか」

 問いかけてきたミリィから、私は苦笑を返した。
 開かれたままのストライクのハッチ。
 コックピットの中の私と、作業通路上のミリィとの会話。
 会話の場所にMSデッキを選んだのは、キラ先輩がやってこないように。
 また抱きつかれてはかなわないし。

「いつも迷惑かけてごめんなさい……」

「何言ってるの、私との仲じゃない。それに、今回はキラが悪いわ」

 キラ先輩の名前が出たところで、私はブルリと震えた。

「でもキラってばどうしちゃたのかしら?」

 私が不思議そうな顔をすると、ミリィは言葉を続けてくれる。

「私が知る限りでは、キラはおとなしいイメージしかないのよ。
 それにすごく恥ずかしがり屋で、人見知りが激しくて。いつもおっちょこちょいで、とても泣き虫で。
 コーディネイターだって告白されたとき、一瞬うたがっちゃったもの」

「それは育ってきた環境がとても穏やかだったからじゃないかな。
 ……でね、キラ先輩が私にちょっかいかけてくる理由、心当たりがないわけじゃない」

 そう言った私は、ようやく作業を終えて、キーボードを片付けた。
 そしてコックピットから出る。
 狭い通路では話しにくいというミリィの意見で、私たちはドック端のコンテナを積んであるところまで移動した。

「どういうこと?」

「さっきの出撃前にレクチャー受けてたとき。
 私は仲良くなる気がないって言ったのに、キラ先輩から『興味持ったから覚悟して』って言われたんだ。
 それに、一番最初のときも、いきなり抱きしめられて『今は食べない』とか……」

「ああ、だからあのとき床に投げられてたんだ……」

 ようやく救助ポッド内での光景に合点がいったらしい。

「それで、嫌い宣言したわけね」

 頷いた私に、ミリィは『大丈夫大丈夫』と肩を抱いてくれた。

「興味を持ったって言うのは多分、初めて、自分と同じコーディネイターに会ったからじゃないのかな。
 キラのまわりって、ナチュラルばかりだもの」

「ご両親は?」

「両方ともナチュラルよ。だから、余計オーブで暮らすことに抵抗がなかったとも言えるわね」

「ふぅん……」

「さて!」

 勢いよく立ち上がったミリィは、お尻についた埃をはたいた。

「そろそろアルテミスにつく頃ね。行きましょ」



黒マント製作機から
 次はいよいよあの人の登場。
 書きたくないけど、出さなきゃ話が進まない。

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