「……ここは味方の基地じゃなかったの。何で私たちがこんな扱いを受けなきゃいけないわけ?」

 サイの腕にしがみついたままで、唇をとがらせたフレイが言う。
 僕も、確かにその通りだと思う。
 食堂に集められた人間はクルーも入れば民間人もいる。
 さして多くはない数で、広さのある場所だけど、それでも1部屋に押し込められてしまっては狭く感じる。
 僕は他の人たちと一緒に後ろの方に追いやられた。
 ドアのほうにいるのがここの偉い人なんだということがわかる。
 艦長達と何か言い争っているようにも見える。
 切れ切れに聞こえてきた会話から察すると、どうやらAAが識別コードを持っていないことが問題になっているらしい。
 そして、ラミアス艦長・バジルール副艦長・フラガ大尉はまるで連行されるように、食堂から出ていった。

「大丈夫なのかなぁ……」

 ぽつりとカズイがつぶやく。

「いくらなんでも殺しはしないだろうよ」

 むすっとした顔のトールが吐き捨てた。
 ミリアリアと引き離されてしまったのが気にくわないらしい。
 僕はミリアリアの横にいる濃茶の髪の少女に目をやった。
 案の定、彼女はおびえて蒼白な顔をしている。






「私は当衛星基地指令ジェラード=ガルシアだ。あのMSのパイロットと整備士は誰かね?」

「艦長達から聞いていないんですか?」

 ノイマンさんの言葉に、少し眉をしかめたのが見えた。

「せっかく公式発表前に見られる機会に恵まれたんだ。
 いろいろ聞きたいこともある。……で、パイロットは?」

「フラガ大尉ですよ」

 僕の隣にいたマードックさんが言う。
 その言葉に、ガルシア指令は小さく笑って。

「先ほどの戦いは見ていたよ。
 今現在、メビウスゼロを操れるのが彼だけではなかったかな。
 それとも、私の記憶違いかね?」

 口にこそ出ていないが『隠しても無駄だ』と言っている。
 含み笑いの顔に、僕は殴り掛かりたい気分になった。
 しかしいかんせん、マードックさんに腕を捕まれていては動けない。

「きゃっ!!」

 答えがないことに業を煮やしたのか、ガルシア指令は近くにいたミリアリアの腕を掴み上げた。
 思わずマードックさんの手を振り払って進み出ようとするが、僕の反対側の腕はトールに捕まれた。

「……トール」

「今はまだ出ちゃだめだ。そうじゃないとキラは……」

 コーディネイターの僕の身を案じてくれているのがわかる。
 ここは地球軍の基地で、プラント=コーディネイターは敵で。
 でも、捕まれたトールの手からは、止まらない震え。
 本当は誰よりも、ミリアリアのことが心配でたまらないのが伝わってくる。

「まさかとは思うがね、パイロットが女性である可能性もあるわけだ。
 艦長も女性なのだし」

「ミリィを放せよ」

「ああん?」

 小さく聞こえた言葉にいかぶしげな声を上げるガルシア指令。
 僕たちは一斉に声のした方を見る。

「ミリィを放してやれって言ってんだよ、このエロハゲ狸

「なっ、なんだとっ!!」

 今度ははっきりとした言葉。それは彼女が顔を上げたからに他ならない。
 先ほどまでの脅えは一掃され、ガルシア指令をにらみつけている。

「あのMSのパイロットを捜してるんだろうが。あれに乗ってるのは俺だ」

!」

 僕は思わず声を上げていた。
 しかし、彼女は僕のほうをちらりと見ただけ。

「ふん、そんな嘘が信じられるものか。お前みたいなガキに何ができる?」

 そう言いながら、ガルシア指令は指に力を込めたらしい。
 ミリアリアの顔が更なる苦痛にゆがむ。

「うっせーな、自己申告してやってんだろうが。
 それに俺には、という名がある。
 ハゲ狸にガキ呼ばわりされる筋合いはないな」

 次の瞬間、ミリアリアの体はガルシア指令の拘束から逃れ、の腕に抱きとめられていた。
 他の皆は何が起こったのか理解していないように見えた。
 言葉が終わると同時に跳ね上げられた彼女の足が、ガルシア指令の腕を蹴り上げたこと。
 おそらく、その動きを正確に捕らえたのは僕だけだったろう。

「ミリィ!」

 僕の手を放したトールが人並みを掻き分けて前に出る。
 は彼の手に彼女を託した。



黒マント製作機から
 キラよりヒロインのほうが黒くなってきたような気がする……。
 でも、ヒロインは黒じゃないですからねっ!
 一過性のものですから。たぶん。

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