「私ッ……フレイ=アルスターですっ……」





 ストライクをAAに届け、戦闘宙域に戻ったフライト。
 その途端、国際救助チャンネルで届いた声に、私は一瞬耳を疑った。

「な、どうして彼女が……?」

 アラスカで転属になったはずだと聞いた。それなのに、なぜザフトの脱出ポッドに乗って現れたのか……?
 答えは1つしか思い浮かばなかった。

「仮面に拉致されたのね……」

 スピットブレイクの際、グランドホロー内部に仮面がいたことはムウ兄から聞いている。おそらく、ふらついていた彼女を面白半分に捕まえたにすぎない。しかし、ナチュラルである彼女を生かしておいた理由は……?
 その答えは次のフレイ嬢の言葉で解けた。

「私、鍵を持ってるのっ……戦争を終わらせるための鍵をっ!」

 フレイ嬢の言う鍵……。想像できるものは1つしかない。……でも。
 深く考える前に、私はスロットルを踏みこんでいた。ポッドを捕まえようと、がむしゃらに突っ込んでいくフリーダムの横を擦り抜けて。
 脱出ポッドを挟んだ反対側から近付いてくるカラミティが、こちらに向かって砲撃を仕掛けてきた。私はフライトの羽根で機体全体と、手の届いたポッドとを包み込んだ。

「……フレイ嬢」

 接触したことで私の声が彼女に届いているはず。

……なの……?」

「ええ、あなたの嫌いなコーディネイターの、です。
 今すぐに選んでください。AAに戻るか、それともドミニオンへ行くか」

「そんなの決まってるじゃない、もちろんAAよ!」

「そうですか」

 私は再びフライトの羽根を広げた。そして、通信チャンネルを開く。

「地球連合軍アークエンジェル級2番艦ドミニオンに告ぐ。こちらはZGMF−X11A・フライト。
 これよりこの脱出ポッドをそちらに運ぶ」

『なっ……』

 この通信が届いていたところすべてで驚きの声が上がっただろうが、私はそれを無視して言葉を続けた。

「フレイ=アルスター嬢を保護しようと考えているのは、カラミティを向けてきた時点でわかっています。
 だから、こちらも彼女をそちらにお預けいたします。……但し、貴艦の一時撤退が交換条件です」

「ちょ……、あなたは私を交換条件にして助かろうって言うのっ?」

「いけませんか?」

「言い訳ないじゃないっ!」

「でもあなたは、アルスター事務次官の乗ったモンゴトメリを助けるときに、同じことをやったんですよ?」

「あの時は、パパがっ……」

「理由は何であれ、あなたはあの時、民間人のラクス嬢を引き合いにして父親を助けようとした。
 だから今回は、私がフレイ嬢がやったことを真似ただけ」

 言葉が返ってこない。





「……わかった。少尉、その条件を飲もう」

「艦長サン、アナタいったい何を!」

 ナタルの下した決断に、アズラエルが即座に声を上げた。しかしナタルは、彼の怒りに臆することなくきっぱりと言う。

「彼女が鍵を持っているという言葉に反応されたのはあなたです。
 我々がここで要求を飲まなければ、あのMSは脱出ポッドをAAに連れて行ってしまいますよ」

 くっ、と悔しそうに唇を噛むアズラエル。

「さすがバジルール艦長ですね。声を聞いただけで私だってわかったんですか。
 取引を受けるとは、賢明な判断ですよ。
 ……でもフライトが近付いた途端にポッドごと捕らえようとはしないでくださいね」





「何てことやるんだよ、あいつはっ……」

 AAのブリッジ。ドミニオンに向かって飛んでいくフライトをにらみつけたまま、サイはパネル脇に拳を振り下ろした。
 アラスカで別れてしまった彼女にようやく会えると思ったのに、それをあっさりと邪魔してくれた後輩。本部での1件から恐れを抱いてしまい、自分達との違いを嫌というほど見せつけられた結果、あまり良い感情を抱いてはいなかった相手。しかし今はっきりと、彼の心に、に対する憎しみが沸き上がってくる。

「……許さない」

 憎々しげに呟いたサイ。その彼の気持ちがわかるだけに、トールとミリアリアはそれを見ていることしかできなかった。


黒マント製作機から
 言ったでしょ? フレイの扱いはだんだんひどくなるって。
 今回は休戦協定の人質になってもらいました。
 ですが、ヒロインはヘリオポリスの先輩達と溝を作るのがお好きなようです<本当は違うんだけどね……。
 なーんかこのままだと、サイが悪者になっていくかも……。
 彼に悪気はないけど、フレイのことを心配するあまり、ヒロインに突っ掛かりそうです。

 この後は一旦AAに戻った後、ヒロインもエターナルへ移乗します。


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