!」

 床に降りた途端に腕を捕まれて、私は半ば引きずられるようにして連行された。

「な、何でカガリがエターナルにいるのっ?」

「そんなのは呼び出した本人に聞けっ!」

「……呼び出した?」

「アスランの奴だっ! フライトが到着次第、パイロットを捕まえてこいって言われたんだ」

 ずんずんと進んでいく彼女。呼び出し人がアスランさんということは何となく嫌な予感がしたが、カガリの腕を振りほどくわけにも行かずにおとなしく付いていく。
 そして1つの部屋にたどり着いたカガリはドアブザーを鳴らす。

「カガリから離れてっ!」

 叫ばれた言葉と同時に飛んできた枕を、私は避けた。
 部屋の中央にあるベッドにはキラ先輩が身を起こしてこちらをにらみつけていて。その左右にはアスランさんとラクス嬢がいて。

「キラ、お前いきなり何をッ……」

 咄嗟に私から手を離していたカガリは、ベッドの方に歩み寄った。が、文句を始める前に、キラ先輩が彼女を庇うように抱きしめてしまう。

、君は僕がフレイのポッドを追ってたのを見てたよね? 彼女もAAに帰りたくて叫んでた。
 それなのに、どうしてあんなことをしたんだよ! 何で敵の手に委ねるようなことをしたわけ?」

「キラ、落ち着け!」

 アスランさんが必死になって彼を止めようとしているけれど、私は口を開かない。

「落ち着いてなんかいられないよ! あの子は僕の力が及ばなかったばかりに傷付けた!
 、自分がフレイのことを嫌ってるからあんなことをしたの?
 いずれは自分たちが撃ち墜とす艦だから、少しだけ寿命を伸ばさせたのっ?」

「キラ、言ってよいことと悪いことがありますわよ!」

「……いいんです、ラクス嬢。指摘があながち間違っているってわけじゃないですし」

 『やっぱりね』とはきすてたキラ先輩。

「私があのポッドをあちらに委ねたのは、私が彼女を嫌っているからという理由もありますが。
 あのまま、彼女をこちらに連れてくることが得策ではないと感じたからなんです」

「どうしてですの?」

「あのポッドに乗っていたのは、大西洋連邦事務次官・故ジョージ=アルスターの娘、フレイ=アルスター嬢。
 以前AAに捕らわれていたあなたと引き換えに、父親の乗る艦を助けようとした彼女です。
 ……覚えて、いらっしゃるでしょう?」

 ゆっくりと頷いたラクス嬢に、私は言葉を続けた。

「彼女はブルーコスモスでこそありませんが『コーディネイターは化け物』という考えの持ち主です。
 そんな彼女が、今のこの場に来ておとなしくしているとは思えなかったんです」

「確かに……あの時は私を真っ向から拒絶していましたものね……」

「独断で行動してしまったことは悪いと思います。
 ですが、あの時と同じ彼女がここに来ても、誰かれ構わずひどい言葉をぶつけて。
 その結果、クルーたちの士気を落とすことにもなりかねないと思って……」

「さてどうだかね。そのご立派な理由、AAからエターナルに来るまでに考えた言い訳なんじゃないの?」

「キラッ!!!!!!」

「アスランは黙ってて。僕にはどうしても信じられないんだから!
 僕はクラスメイトだっていうフレイとが談笑してる様子なんて見たことがないよ。
 短い間だけど一緒にAAに乗ってたカガリだってそうでしょ?」

「……お前、だからって……」

「カガリは血の繋がった僕の言葉より、の言葉を信じるの?
 僕は信じない。僕たちの父さんと母さんを殺した男の娘の言葉なんて信じないからねッ!!!!」

 バフッ、とシーツをかぶってベッドに倒れ込んだキラ先輩。





「……さっきの話……」

「本当ですよ。しかも、2年以上も前にそのことを知っていた私とは違って。
 キラ先輩は、さっきの戦闘前に知ったばかりなんです。
 詳しいことはいずれ、彼が落ち着いたらすべてを話してくれると思います。
 それまでは何も言えません。彼とカガリの出生については、私が話していい事柄ではありませんから……」

 私は床に置いていたカバンを持ち上げた。

「アスランさんが私を強制的にここに来させたのって済みました?」

「え、ええまあ……」

「今のうちに行っておきたい場所があるんです。少し艦を離れますがよろしいですか、クライン艦長?」

「わかりました、許可しますわ。……ですが、通信機だけは携帯しておいてくださいね。
 キラの言ったようにあなたが人殺しの娘でも、私にとっては大事なお友達なのです」

「ラクス嬢……」

「憎むべき事実がわかったからといって目を反らせてしまっては、本当に望む物を見つけられないでしょう?
 私は、あなたの友人であることを望んでいますの。人殺しの娘という事実などどうでもいいのですわ。
 ……確かに、自分の血縁者を殺した相手、その一族を恨むのは当然かもしれません。
 でもそれで、殺された人が帰ってくるわけでもありませんし、恨みが完全に晴れるわけでもないのです。
 それならば最初からどうでもいいと受け止めて、忘れてしまったほうが得策ですわ。
 親は親、子供は子供ですもの。
 親同士が憎み合ったからといって、それを子供が受け継ぐことはありませんわよ?」

「……友達といってくれて、ありがとうございますっ」

 私は泣きそうになるのを堪えて頭を下げ、その場を去った。







「さて。……キラ、さっきの話を聞いていましたわよね?」

 が去って3分は経って。ラクスが閉まったドアを見つめたままで口を開いた。しかし、キラの奴はぴくりともしない。

「不貞腐れてだんまりを決め込むクセ、昔と変わっちゃいないな……」

 呆れたようにため息をついたのはアスラン。そういや、こいつとは幼馴染みだって言ってたっけか。

「起きろよ、お前は! 起きてちゃんと説明しろっ」

 私がシーツを引きはがそうとすると、キラの奴はがっちりと掴んで離さない。

「ほっとけカガリ。今のそいつは誰の言葉も聞きはしないさ。
 それよりも俺達は他にすることがあるだろう?」

「そうですわね。お子様で我侭なキラは放っておいて、これからのことを話し合いましょう」

「……そう、だな」

 私は色々と気になることを抱えたまま、彼らに促されて部屋を後にした。







 私は持ってきた荷物をあてがわれた部屋に置いた後、目的の場所へ向かうためにエアロックに向かった。

、どこへ行くんだ?」

 エアロックに通じるドアの前で、声をかけられた。

「ユーリ叔父様……、ちょっと出かけてきます。ラクス嬢には了承を取ってあります」

「フライトを置いてか?」

「行こうとしている場所はMSが入れない場所ですから。
 それに、そんなに遠くへ行くわけじゃないですし。大丈夫ですよ」

 ピ、とロックが外れててドアが開く。

「ちゃんと、戻って来るんだぞ」

「え、いやですね。その言い方って、私がまるでどこかへ……」

 言い終える前に、私は叔父様に抱きしめられていた。

「何があったかは知らないが、ここにはお前を待ってる人がいるって忘れるな。いいな?」

 頷き返した私の体をゆっくり離して、叔父様は送り出してくれた。



黒マント製作機から
 混乱してるからって、キラはヒロインに向かってひどいです。
 一歩違えたらミリアリアと同じ目に合いかねません。
 そうならないのはラクスたちのおかげです。

 ユーリさんとヒロインも少し絡めました。ちょっと満足。
 ヒロインが1人で向かった場所。わかると思います。


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