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ドアが開いた音に続いて、茶色の髪の少年がゆっくりと歩いてくる。 「やぁキラ、もう調子はいいのかね?」 「ありがとうございます、バルトフェルドさん。一眠りしたらだいぶん楽になりました」 「何があったのかは知らないが、ウサギの目だよ」 「え、あ、これはそのっ……えっとっ……」 赤くなってわたわた慌てるキラを、隻眼の男も回りのクルーたちもクスクスと笑って見ている。 「……キラ……」 声をかけられた彼の振り返った先には、アスラン。そして、彼の袖を握っているラクスがいた。 「答えはそれですのね」 「うん……。僕は行かない、行ったらまた何を言うかわからないから……。 それでカガリは? ちゃんと説明しておきたいんだ。そして、アスランとラクスさんにも聞いてほしい」 「カガリさんならクサナギに戻っていますわ。呼びましょうか?」 「頼んでいいかな?」 『わかりました』と頷いたラクスは、自分の席に戻ってパネルに指を走らせる。 「バルトフェルド隊長! たった今ザフトから届いたテキスト通信で……このメンデルの反対側の港に爆弾を仕掛けたと……」 「何だと? すぐに破砕作業に向かわせろ!」 「無理ですわ、クサナギのアストレイはまだ修理が完全でないと連絡を受けたばかりですもの!」 「AAは?」 「あっちも船体ダメージの修理に手間どっていて、MS修理がおいついてません!」 それを聞いていたアスラン。 「じゃあ出られるのはここからだけ?」 「正確にはジャスティスだけ、だな。アスラン、すぐに行ってくれ!」 「はいっ!」 「僕もフリーダムで出ます!」 「そいつは無理だ。お前さっきポッドを助けるために突っ込んでっただろう。そのせいで敵の攻撃を受けた。 フライトが横からかっさらったせいで、敵の注意が移って大破は免れたものの、フリーダムはぼろぼろだ。 今急ピッチで進めてはいるが、完全修復まではあと最低でも10時間はかかる」 「そんな……それじゃあ、フライトで出ます。はいなくても機体があるんだからっ……」 「キラ、あれはあなたの機体ではありません。私は前にも言いましたでしょう。欲張ってはだめだと。 フライトのパイロットは後にも先にも、=ただ1人です。 あの機体を動かしたいのでしたら、正規のパイロットを探して連れて来てください」 席から立ち上がった彼女は小さな機械を差し出した。 「これはの持っている通信機の電波をキャッチする受信機です。 これの通りに進んで彼女を連れ戻してきてください、いいですね?」 「……どうしても君たちは僕に行かせたいんだっ! いいさ、望み通りにしてあげるよ! でも、どうなっても知らないからね!」 キラはラクスから機械を引ったくると、ブリッジを走り出ていった。 「皆さん、ご協力感謝しますわ」 「いやなんのなんの。これも訓練の一貫と思えば」 「そうそう、抜き打ち訓練」 みんなが笑う中で、ダコスタがふと思い出したように。 「このこと、アスランさんには言ってませんよね?」 「ええ、だって彼にお芝居ができると思いませんもの」 「じゃあ、ラクス様。少し覚悟されていらっしゃた方がよろしいのでは?」 「あら、どうしてですの?」 首をかしげる彼女に、漂うハロの『ナンデヤネン!』が響く。そこに、プシュッと開いたドア。 「ラァ〜クゥ〜スゥ〜?」 地の底から沸きあがるような声に、ビックン!とラクスの体が跳ねる。 「あ、あらぁ。アスラン、パイロットスーツの色がお顔にまで移ってますわよ?」 「ええ、そうかも知れませんね。MSデッキで散々笑われてきましたから」 引きつった顔のままで互いに不自然に笑うアスランとラクス。その様子に、ダコスタたち一般兵のクルーはおろか、流石のバルトフェルドでさえも口を挟めない。 「ラクス嬢、あちらで、納得のいくご説明をお願いできますか?」 「え、きゃ、ちょっと、アスラン何をっ!」 がしっと自分の体を肩に担ぎ上げたアスランに、ラクスは慌ててジタバタ暴れるが彼の手は緩まない。 「バルトフェルド隊長」 「な、なんだ?」 「キラはエターナルから出て行きましたか?」 「君が来る少し前に、怒りながら走り出ていったよ」 「わかりました。……それで、彼女は少し借りていきますね」 「ああ……」 「アスラン、降ろしてくださ〜いッ!!!!!」 なおも暴れるラクスを抱えたまま、アスランはブリッジを出て行った。 「アスラン=ザラ、彼もまたSEEDの持ち主……か……」 「……今のは、SEEDがはじけたっていうんですか……?」 バルトフェルドの言葉にやや引きつりながら、ダコスタは小さく突っ込んだ。 ![]() 黒マント製作機から キラが出した答えは、ヒロインからの別離。 しかしそうは問屋が卸しません。彼らが互いに好きあってるのはわかってますからね。 首謀者ラクスによる即興のお芝居で、無理やりキラをメンデルへ送り出しました。 しかし、隊長が出てくるとどっかでお笑いが入る……。 To NEXT 連載TOP |