「わかっただろ。アイツがどれだけお前を拒絶しているか。
 好きな人に信じてもらえなくなったことが、それがどれほどの悲しみを生むのか、先輩に想像つくか?」

 その言葉に、僕は小さく首を振った。

「でも、少しぐらい話を聞いてくれたってっ……」

「先輩だってエターナルで、同じことをやってる。
 アイツに言い訳する時間すら与えず、僅かに口に出来た言葉さえ頭ごなしに否定したんだからな。
 人のことを責める前に、自分のやったことを反省するほうが先だ」

「……そうだけど……僕にはもう謝ることすらできない許されないのかな……?」

「アイツが話したくないって言うんだから仕方ないんだろ。
 今のアイツはお前を傷付けて泣かせて、それで信じないって言われて何も言い訳できなくなって。
 アイツのことを本当に思ってやってるのなら……キラ先輩も辛いだろうが、もう構わないでやってくれ」

 辛そうに言うの顔を見ていたら、思わず僕は頷きかけた。が、それじゃいけないんだと思いっきり横に首を振った。

が僕を避けて話したくないのなら、それでもいい。僕も必要以外は近寄らないようにする。
 ……だけど、ちゃんと謝りたい。僕の本当の気持ちを誤解したままで離れていかないで欲しいんだ」

 僕の伸ばした手から、は半歩下がって逃げる。

「……触る必要はないだろっ……」

「だって捕まえて拘束しておかないと、また引き金を引くじゃないか」

「引かれるようなことした先輩が悪いと納得しろ」

「できないってば。僕は普通に話したいのに、いきなり銃を向けられてたら命がいくつあっても足りないよ」

「やっ、ぃたっ、やめて離してッ!!!!!!」

「男と女の力の差だよね。
 それに僕は、最高のコーディネイターらしいから見かけより力あるんでしょ?」

 さらに逃げようとしたの手首を掴んで、僕は引っ張った。易々と細い体は腕の中に納まる。暴れて逃げようとする彼女だけど僕は手首を捕まえたまま離さない。

「これ以上抱き締めたりしないで、私に構わないでっ!」

「無理だよ。君に触れたくて触れたくて、情けないほどにどうしようもない貪欲な僕がいるんだから」

「それでも! それでも離して! 私はもうキラ先輩のことなんてっ……」

 泣きながら掴まれていない方の手で、僕の胸を必死で押してくる。だけど僕は腕を緩めるどころか、の体をぎゅっと抱きこんだ。

「……僕は君にひどいこと言ったから、を凄く傷つけたから。
 だから本当なら、僕はもうに近付いちゃいけないんだと思う。
 ごめんね、本当にゴメンね。ただ謝るしかできない僕は無力だけど―――――。
 君を泣かせるだけの存在なんか、目の前にはいないほうがいいよね。
 でももう少し我慢してくれるかな? ―――戦いが終わって平和になったら、僕は君の前から消える。
 それまでは僕のことをいやでも嫌いでも、君の側にいさせて?
 必要以上には話しかけないし、の視界にはできるだけ入らないようにする。
 だから、もう少しだけ側にいることを許して……」





 ああ、また泣かせた。これ以上泣かせたくなくて、これ以上哀しい瞳をさせたくなくて、私は彼から離れることを決意したっていうのに。


 どうしてこの人は、私の気持ちを理解してくれないんだろう?
 どうしてこの人は、自分の欲望を前面に出してくるんだろう?
 どうして私は、そんな彼を心から嫌いになれないんだろう―――――。


「キラ先輩、お願いですから離れてッ……」

「返事聞いてないんだから離れられない。もう少しだけ、の側にいることを許してくれる?」

「イヤですっ」

「嫌って……それじゃあ、フリーダムはどうするの?」

「キラ先輩はエターナルから降りなくていいんです。クサナギにはカガリだっているんです。
 だから、降りるのは私なんです。知り合いはいても血縁者はいないんですから」

「……そんなことを言ったら、ニコルが悲しむよ。君の従兄でしょ?」

「ニコルならわかってくれるからっ。フライトを置いていっても、私の代わりに誰か乗ってくれるからっ」

 だから私はいらない。傷つけて哀しませて、信じてさえもらえない私なんて、あなたの前から消えたい。

「返事はしたんです。だからお願いっ、離してください」

「自分が降りるって……はそんなに僕といるのが嫌?」

「そうですっ。もう先輩のことは嫌いなんですからっ……」

「じゃあ、どうして泣くの?」

「なっ、泣いてなんかいませんっ!」

「嘘つかないで。頬に流れてるのは何?」

「……キラ先輩が気にしになくてもいいことです。っていやっ、止めてください」

「やめてって、の涙をそのままにはしておけないよ」

 本当に止めて、キラ先輩にこんなことをされたら涙が止まらなくなる。

が僕のことを嫌いだって言うのは信じないからね。僕は君の言葉を信じないって言っただろう?」

「だからって、だからっうんっ!」





 僕はまた勢いのままに動いてしまった。これが何度彼女を傷付けたかわからないって言うのに。
 掴んでいた手を離した僕の手は、の後ろ頭を抱きしめて逃がさない。
 思う存分に重ねた唇を吸って、僅かに開いた隙間から舌を入れて執拗に絡めて、自らの唾液を送り込む。息苦しさにの拳が何度も僕を叩く。それでも、僕の腕は緩まない。舌は彼女の口腔内を暴れて犯す。

「……ひどぃっ……」

 飲み下しきれなかった唾液を口端から僅かに垂らし、ぐったりとしたは僕の腕に支えられながら、それだけを口にした。

「そうかもね。本当の僕は我侭で貪欲で、望んだものを手放したくはないんだ。
 今回のだって何とかできる最大の譲歩だったのに、それすらも受け入れてもらえない。
 だったら、が僕から離れていけなくしちゃえばいいんだ」

「いっ、いやっ……何をっ……」

「何って、男と女がすることは決まってるじゃない。もそのつもりでここにいたんだろうし」

「そんなことない、止めて、ここはお父さんの部屋なんだからっ」

「そんなこと言って、それじゃあ床の上でする?」

 僕は彼女を抱き上げて部屋の中に入ると、ベッドの上に降ろす。そして手早くPSを脱ぎ捨て、逃げようとしていたの自由を奪った。



黒マント製作機から
 この後は裏になりそうなので、やめました。

 にしても、やっぱりキラの押し倒しで話が進んだ……。話し合いに応じないヒロインも悪いんだけどね。


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