「き……きさま……」

 睨つけるガルシア指令の顔は怒りで赤黒い。
 ……うわぁ、すっごく醜い。
 あんなの、の視界に入れておきたくないな。
 僕は緩んでいたマードックさんの腕をほどいて、前に行った。

「女の子に暴力振るう奴ってサイテーだね。
 おまけに目的達成できたのに掴んでるのは、エロオヤジの証拠」


「キラ先輩、邪魔です」

 はこっちを見ないで言う。

「それはひどいな、ストライクは僕が乗っている機体でもあるんだけど」

「艦長から決められた正式なパイロットは俺です。民間人は口を出さないでください」

「それでも、が1人で出撃したことはまだないよ。
 その点、僕はヘリオポリスでの戦闘もこなしているわけだし」

「経験値が多くたって、敵に捕まりかけたことは隠し切れませんが」

「おまえらっ!!」

 と僕との会話に、口を挟む余地が見当たらなかったのか、すっかり蚊帳の外のエロ狸。
 声を上げたことで、ようやく、その存在を思い出した。
 でも。

「あーあ、すぐ声を荒げるなんて野蛮な証拠だよねぇ。はそう思わない?」

「まぁね。それについては、キラ先輩と同意見」

「ううう……うるさいうるさい!
 いつまでもお前たちの夫婦漫才を聞いている余裕などないわ!」

 叫んだハゲ狸の手がの腕を掴む前に、僕は彼女を後ろ手にかばった。

「悪いけど、あんたみたいなエロハゲ狸おやじに、かわいいを触らせたくないんだ」

「それより、俺はキラ先輩と夫婦漫才しているつもりはない」

「だから、お前等だけで話をするんじゃないっ! 会話が先に進まないではないか」

 ガルシアの言葉に、側近らしき男たちも、AAのみんなでさえもうなずいているのが見えた。
 ま、これは正論ではあったかな。



「とにかくだ。あのMSがお前等のようなガキに動かせるはずはない。
 下手な嘘をついてまでのかばいだては止めるんだな」

「嘘なんかじゃないわよ!!
 だって、その子たち、コーディネイターなんだもの!」

 上がった声に、俺は思わず舌打ちしてしまった。
 甲高い声の主は言わずと知れたフレイ=アルスター嬢。
 ま、あの甘ったれお嬢ちゃんがこんな扱いを受けまくってて、ここまで静かにしていたのが珍しいけどさ。
 どーせ、ストライクのパイロットだって名乗ったときに、ばれるのは時間の問題だって思ってたけどなぁ。

「なるほどねぇ……」

 何も、こんなところでバラさなくてもいいのに。
 ほら見ろ、ハゲデブ、いやらしい笑いを浮かべて見てやがる。

「ここにいる皆の命が惜しかったら、おとなしくついてきてもらおうか」

 うっ、気持ちわりぃ。
 ああいう顔って生理的にだめなんだよな、俺。

「言われなくてもそうする。
 ここにやってきたのは、ストライクのロックが外せないからだろうし。
 その代わり、これ以上みんなに手を出すつもりなら……」

 言葉を切った俺はニヤリと笑う。

「ザフトに、お前等の首を売り渡す」

「ほぅ、それはどうやってだね?」

「どんなものでも完璧に見えて、どこかに必ず隙があるものだ。
 素人の俺が気がついていることを、ザフト本職の軍人が気がついていないとは思わない」

 アルテミスに入港前、ストライクにロックをかける際に見た奪われた4機のMSの仕様書。
 交戦したときに流れてきた声は紛れもなく、赤服隊のやつらだった。
 誰がどの機体に乗っているかは全くわからないが、あのシステムに気がついているはずだろう。
 それを使えば、この基地などあっという間に攻略できることも。

「そんなことがあるわけないだろう。
 アルテミスの傘はとても安全だよ。まるで母の腕の中のようにね」

 あーやだやだ、これだからオヤジは相手にしたくないんだ。
 人の忠告をきれいに無視、聞く耳なんぞ持ち合わせてない。
 いつでも自分が正しいと思っている。言い換えれば、自己中心的。

「そんな増上慢が、いつまで通用するのかは知らない。
 ここが陥落おちたあとで後悔しないよう」

「ここが陥落するわけがないのは、結果が示している。
 今まで大丈夫だった、これからも大丈夫に決まっているではないか。
 それ以上でたらめを言うと、この場で射殺もありえるのだがねぇ?」

「ま、本気にするしないはご自由に」

 俺は話を続けるのも馬鹿らしくなって、ドアに足を向ける。

「どこへ行く!」

「どこへって言われても……MSデッキしかないが?
 ストライクのロックを解除しなければならないだろう?」

 人数分の足音がついてきているのを確認しつつ、俺は食堂を後にした。
 余分な足音が1つ聞こえたが、それは無視した。
 その主がキラ先輩であることは、考えるまでもなく分かり切っていた。
 ……俺はああいった手合いには、とことん無視することを決めた。



黒マント製作機から
 後半、キラとの絡みがないです。
 というより、俺的ヒロインはキラを無視することに決めたようです。
 当分キラとヒロインのラヴな絡みは望めそうにないです。

To NEXT