「……ここ……」

 デッキに戻るために手を繋いで移動していたとき、立ち止まった

「あ、そういえば……」

 彼女の言いたいことがわかって、思わず僕も声を上げていた。





「……あの、さっきはすみませんでした。キラ先輩の手を掴んじゃったこと……」

「握り返してくれるなんて思ってもみなかったし、初めてだったから最初は驚いたけどね。
 ぜんぜん気にしなくていいよ。むしろ、僕はとてもうれしかったし」

 俯いて赤くなってモジモジしながら言うの意図に気が付いて、僕は笑いながら言葉を続けた。
 そして立ち止まった僕は、彼女の手を振りほどく。

「僕はアスランでも、ましてやの知ってる人たちじゃない。
 代わりが欲しいなら、誰か他の人を探したほうがいいよ」

「……すみません……、やっぱり不快にさせてしまったみたいでごめんなさい」

「まったくだよ」

 向かい合った僕が半歩前に出ると、一歩後ろに下がった。その背中が狭い廊下の壁に触れる。

「僕は誰の代わりでもないし、代わりになれない。わかってる?」

「そ、それはわかってますけど……」

「本当に?」

 そう言いながら、僕はの髪を指に絡めてキスした。

「本当です! っていうか、髪やリボンを触ってキスするのはやめてください」

「いやなの?」

「いやです」

「それじゃ……」

 リボンから離れた手が上にあがる。その次の行動を予測して、彼女はぎゅっと目を閉じて、唇をかんだ。
 しかし、ぺちりと響いた軽い音は想像していなかった穏やかさ。
 そっと瞼をあげたの瞳の中には、小さく苦笑する僕の姿が映る。

「男の前で軽々しく目を閉じるものじゃないよ。
 好きな子にそんなに無防備にされちゃ、理性が飛んで、このまま襲いたくなるじゃないか」

「なっ……。バカなこと言わないでください」

「バカなこと言ってるかどうか、試してみる?」

 必死で顔を背けながら言うに、僕は大きくため息をついた。

「……フラガ少佐に止められたけど、やっぱり僕、送り狼になるかも」

「だから、その単語の意味がよくわからないんです」

「出会ったばかりだって言われるだろうけれど、僕はが好きだよ。だから……」

「だから……なんですか?」

 内心の動揺を必死で隠しつつ、はオウム返しに問いかけてきた。

「だから、初めてはもらっちゃうね」

「え、ちょ、うそっ……」

「嘘なんかじゃない。ちゃんと実行するし」





「「ぷっ!!」」

 互いの唇が触れそうで触れないかの位置で、僕とは同時に吹き出した。そして体勢は変えないままで、顔だけ少し離した。

「覚えてたんですねぇ。しかもセリフもほぼ完璧だし」

だって同じじゃない」

「私は当然ですよ。あれで初めて送り狼の意味を知ったんですから」

 笑うに、僕はちょっと聞いてみたくなる。

「初めて知ったのは送り狼の意味だけ?」

「え?」

「あのときの、『キスなんか経験済みだ』って叫んでたよね?」

「……あ、それも……覚えてたんですね……」

 『ち』とか舌打ちが聞こえたような気がしたんだけど……。

「誰とキスしたの? 僕ののファーストキスを奪ったのは誰?」

「答えなきゃ……だめですか?」

「言わなきゃどうなるかわかってる?」

 僕の笑顔に、ひくっと彼女の頬が強張った。

「言ったらその相手、どうするんです?」

「決まってるじゃない、そんな不埒者はフリーダムでね・ら・い・う・ちvvvvv」

 はぁぁと大きなため息の後、は僕の鼻先に指を突きつけた。

「じゃあ、私はキラ先輩のご両親を撃たなきゃいけませんね」

「へ?」

「どんな子供も、初めてのキスの相手は父親か母親ですよ?」

「……えーっと」

「先輩もご存知の通り、私の両親はすでにいませんけど? どうやって撃つんです?」

 ニコニコと言われて、僕は一瞬反論する術を失う。

「じゃ、じゃあ、それ以外ではっ?」

「え?」

のお父さんやお母さん、レガールさん以外で、にキスしたのが誰が1番最初なのッ?」

「……別に気にしなくてもいいじゃないですか……」

「ヤだ、教えて。……でないとこのままキスするよ?」

「……キラ先輩ですよっ!」

 は少し視線をさまよわせた後、顔を赤らめながら叫んだ。

「やっぱりね」

 僕は彼女を額を重ねた。

は僕が守る。アラスカみたいに、1人で頑張らせたりしないよ」

「キラは私が守るよ。MIAになんかさせないから」

 啄むようなキスを繰り返して、僕達は深いキスと共に互いに誓った。



黒マント製作機から
 今までの反動か、キラとヒロインのラブシーンが書きたい病です。


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