クサナギの展望デッキで、私は1人で流れていく星々を見ていた。

 これからの戦いのことを思って目を閉じると、少しだけ震えてくる。
 訓練も模擬戦も十分でない私がどれだけ通用するのか、正直なところ、まったくわからない。砂漠での実戦経験しかない私は、アサギたちにも劣るだろう。それでもじっとしているのが嫌で、ブリッジで見ているだけなのがもどかしくて、MSに乗ることにした。だが皆の足手まといになるんじゃないかとすら思えて、誰かを死に追いやってしまうんじゃないかという不安が襲ってくる。

「……大丈夫……かな……?」

 コン、とガラスに額を当てる。

「大丈夫ですよ。カガリ様だって恋する女なんですから」

「そうそう」

「恋する女は強いんですよぉ?」

「ちょっ、おまえら何だそれは! 私が誰に恋してるって言うんだよっ!」

 やってきたアサギ、ジュリ、マユラの声に私は一瞬にして真っ赤になった。

「あっれぇ、カガリ様は気がついていらっしゃらないんですか?」

「な、何をだよっ……」

 クスクスと笑いながら言うジュリに、少し薄ら寒いものすら感じながら、私は聞き返した。

「時折、彼のことをじーっとあつぅい眼差しで見つめてるよねぇ?」

「だけど彼には既に両思いの、可愛い年下の彼女がいて」

「それでも報われない思いだとわかっていても、好きになるのは止められない……」

「「「これぞ悲恋よねぇ」」」

「……おい……」

 話を聞いているうちに思い当たって、最後に私は口許を引きつらせながら彼女たちに問いかけた。

「……私が誰を見てるって?」

「彼ですよ。フリーダムパイロットのキラ=ヤマト」

 ……やっぱり。

「お前たち、そんなに撃墜されたいのか?」

「「「え゛」」」

「この間話したばかりだから、3人とも、私とあいつの関係は知っているはずだが?」

「知ってますよ。だから報われない恋なんです」

「マユラッ!!」

 逃げ出す彼女を、私は追いかける。狭いデッキ内は運動場と化した。

「きゃ〜、カガリ様許してぇ〜」

「言うに事欠いて、私がキラに恋しているだとぉ? その考え改めさせてやる!」

 捕まえてもなおじたばた暴れるマユラを私は押えつけながら、私は彼女のブーツを脱がせた。

「覚悟!」

「きゃーっはっはっはっはっはっはっはっ!!!!!」

「うりうりうり!」

「いや〜っ、カガリ様、やめてぇ〜〜〜〜〜っ!!!!」

 涙目になって苦しそうに笑うマユラの足の裏を、私はくすぐり続け。

「ごめんなさ〜〜〜いっ」

 その一言でようやくやめた。立ち上がった私の後に残されたのは、床にへたばって肩で息をしている彼女のみ。

「バカな考えは捨てたな?」

「うぅ……捨てさせていただきました……」

「やっぱりそっちのがカガリ様らしいです」

 にぱっと笑ったジュリの言葉に、私は首をかしげた。

「カガリ様、出生の話を聞いてからどこか浮かない顔でしたし……。
 あの状態で戦場に出ても、集中できていないから、すぐに撃墜されますよ?」

 アサギも言う。

「出生がどうであれ、私達から見れば、カガリ様はオーブの獅子の娘なんです。その他の何者でもありません。
 だから、お父様の名を汚すような顔をしていてはダメですよ?」

「……お前ら……」

「はいは〜い。私から提案がありま〜す」

「あんたはもう復活したの……?」

「えっへん!」

 ジュリの言葉に胸を張ったマユラ。それを見ていて、私は思わず吹き出した。

「カガリ様、後で仕返ししますからね?」

「へっへ〜んだ、マユラなんかに捕まるほどドジじゃないからな」

「ひっどーいっ!」

「……こらこらマユラ、話を脱線していくんじゃないわよ。提案とはなんなの?」

「あ、そだそだ。実はね、ここにいる4人で分けたいものがあるんだ」

「分けたいもの?」

 こっくりと頷いたマユラは、首から下げていたペンダントを外して、パキパキと割り始めた。

「お、おいっ?」

 私もこれには驚いて声を上げるが、割れたペンダントを差し出した彼女は笑っていて。

「これはね、私がいつもしてた4つ葉のクローバーのペンダントの欠片。皆で1つずつ持ってて欲しいんだ」

「いつもしてたって……マユラの大事なものじゃないのか?」

「それを欠片とはいえ、私達に持ってて欲しいって……」

 私とアサギの言葉に、マユラはにっこりと笑って。

「あげるわけじゃないですよ。
 カガリ様も、アサギも、ジュリも……無事に帰ってきて、ちゃんと返してくださいね」

「わかった」

 私はその欠片を1つ受け取る。アサギとジュリも同様に。

「また後でちゃんと4つの葉が揃わないと、私、返してくれなかった人に向かってライフルを撃ちますからね」

「ちゃんと返すって」

「ちゃんと生きて帰りましょうね」

「帰ったらマーナさんの大きなケーキで、ぜひお茶会しましょう!」



 私達は4人で円陣を組んで、帰ってくることを誓い合った。



黒マント製作機から
 今回はカガリ&アストレイ3人娘。ごめんよカガリ、男っ気なしだねぇ……。
 おまけに、また今回ヒロイン名前すら出てこなかったよ。


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