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血のバレンタインの惨劇を忘れられるコーディネイターはいないだろう。一瞬にして奪われた24万もの命。 しかしそれに対して、核で報復しなかったプラント。 「その思いを、地球連合軍は裏切ったのです!」 エザリア=ジュールの演説は出撃準備をしている兵士らに更なる緊張感と使命感を与え、そしてナチュラルへの憎悪を増幅させていく。 母の叫ぶような声を聞きながら、彼女とほぼ同じ容姿を持った息子は、親友の言葉という疑問を抱えて隊長としての責務を負って宇宙に飛び立つ。 「核を、例え1つでも、プラントに落としてはなりません」 ラクスの澄んだ声が、通信回線を通して各艦のブリッジ、MSのコックピットに流れる。 例え1つでも落ちれば、それは悲しみと新たな憎悪しか生まない。それをわかっているからこそ、今の戦いから逃げるわけにはいかない。 「でも、僕らは戦うだけでしか守れないのかな……」 それぞれのコックピットに別れる前、ポツリと洩らしたキラの言葉が、の胸に残る。 「今は戦う道しか残されていないけれど、この間違った世界を止めるためには必要だと思うんです。 そうでなきゃ、本当に守りたいものが指の隙間から逃げていくんですから」 AAからストライク、バスター、ブリッツ。 クサナギからはストライクルージュ、アサギ・ジュリ・マユラ・ラスティのアストレイ。 そしてエターナルからはフリーダム、ジャスティス、フライトと、宇宙に飛び出した。 「ミーティア、リフト・オフ!」 バルトフェルドの声と共に、エターナルから2機の武装強化パーツがゆっくりと外される。 「……因果なものだな」 「はい……。 核を落とすために、核の使用を止めさせようとしている我々が核の力に頼らざるを得ないのですから……」 外部カメラに映し出されるのは、ミーティアとドッキングを果たしたフリーダムとジャスティスの姿。 それを見つめるラクスとバルトフェルドの口からはため息が零れる。 「これも必要悪なのですよ……。この連鎖を止めるためのね……」 「……私も、アマルフィ博士のおっしゃるとおりだと思います。今はこの力が必要だから。 正しい志を持っている方にならば、この強大な力を御することができると思います」 ユーリの声に、ダコスタがおずおずと自分の意見を述べる。 「使い方を間違えないために、ラクス様は先に完成したフリーダムをキラ君の手に委ねることで。 ジャスティスはアスランさんの手に渡るようにし。 最後のフライトを未完成のまま、専用艦ごとプラントから持ち出す決心をなされたのでしょう?」 「我々はそれが間違いでないと、正しい道だと思ったからこそ、エターナルに乗る決心をしたのです。 大丈夫ですよ。使い方を知らない我々ではありません」 『ラクス、俺は君の選んだ道を信じよう。そしてその助けとなるために、君が望む未来を目指して戦う。 ……それでもまだ悩んでいるのなら、ハロに一撃を入れてもらうか?』 ブリッジクルー達の言葉に、繋がった通信から流れてきたアスランの声。『アカンデー』と騒ぎながら飛ぶハロを、バルトフェルドが『ジャマだ』といわんばかりに捕まえる。 「、聞こえるか?」 『はい、何ですか?』 ユーリの声に、アスランの横に開いた通信回線。 「フライト用のミーティアを完成させることができなくてすまない」 『いえ、元々フライトは近戦用ですから。核ミサイルを落とす役目はキラ先輩とアスランさんにお任せして。 私は道を開こうとするダガーの排除に当たりますから』 「皆さん、必ず……必ず、生きて帰ってきてくださいね」 ラクスの言葉に送られて、11機のMSはプラントを目指す。 彼らが辿り着くより早く、地球連合軍艦隊とザフト軍との戦局は開かれていた。 物量ではザフトが勝っていた。戦場に出てくるジンやゲイツの数も、圧倒的に彼らのほうが多い。彼らの後ろには砂時計と呼ばれるプラントが、彼らの大切な家族の暮らす故郷が広がって並んでいる。たとえダガー1機でも通すことができないことがわかっているからこそ兵士の士気も高まる。 しかし、地球軍側も敵の本拠地を目の前にしたことで高まっていく士気は変わらない。今まではどんなに『プラントが』とは言っていても、実際に目にしたわけでなくイマイチ実感が持てなかったのかもしれない。それが目の前にある現実としてはっきり認識できるようになって、あの忌まわしいものを排除しなければという思いが強まっていく。 両軍のMSが入り乱れる中、イザークも愛機・デュエルを駆って、連合のダガーを次々と沈黙させていた。絶対に引くわけには行かないという思いが、彼を動かす。近くにいた最後の1機を屠って、ぐるりと体勢を変えれば、L4で見た3機のMSが目に入る。 「あいつらァ!」 ジンを次々と打ち倒していく相手に向かって攻撃を仕掛けるが、3機の新型GATシリーズは思っていた以上の動きでビームをはじき、新たなゲイツを頭から半分にする。 激しい攻防戦が続く中、イザークはモニターの端を通り過ぎていくMA・メビウスの編隊に気付いた。それが皆一様に巨大なミサイルを運んでいることを気が付いて、背筋に冷水が伝う。 ―――――あれは、核ッ? 「あのミサイルを撃たせるなぁ!」 半狂乱な彼の叫びに、メビウスに近いジンがそれを落としはじめる。が、次々とやってくるMAすべてを撃ち落とせるわけでもなく、増援のゲイツはカラミティに撃ち抜かれ、別働隊のジンはレイダーの攻撃を受け、デュエルもフォビドゥンに行く手を遮られて辿り着けない。 「ああっ……」 ゆっくりと放たれていくミサイル。それは徐々に数を増やしていく。 あれが例え1つでも落ちれば、そのプラントは―――――。 イザークの頭の中で描かれる最悪のシナリオ、それが現実になろうとしていた。 ![]() 黒マント製作機から 進まないです。すみません。 To NEXT 連載TOP |