進むミサイル、それが1コマ1コマ、とてもゆっくりした動きに見えて。
 このままプラントに辿り着かなきゃいいのにな―――――。
 止めることのできなかった無力さを悔やみながら、イザークは小さな笑みを洩らした。
 あのミサイルの行く手を阻むものはない。今の自分達には止められる術は存在しない。故国へと降り注ぐであろう光に、目を反らしたい。しかし、吸い付いたように動かない視線。







「イザークさん、何を諦めてるんですかっ!!!!!!」

 聞き慣れた声と共に、デュエルの背後から数十条のビームとミサイル。それは3機のGATシリーズの動きを止め、そして今まさにプラントに突き刺さろうとしていたミサイルを撃ち抜く。
 撃たれたミサイルは誘爆を引き起こし、爆発的な光をその場に残してすべて消えうせた。光が消え去った後には、元の姿のままで浮かぶ砂時計。

「地球軍は今すぐ攻撃を止めてください! あなた方は何を撃とうとしているのかお分かりですか!」

 全チャンネルを通して響いた声。プラントに住む者ならば馴染みのある声。停戦を願い平和を訴え続けてきた彼女の名を呼ぶ声が、通信を通してイザークの耳にも聞こえてくる。
 しかし、ラクスの声を……敵であるコーディネイターの言葉を素直に聞き入れる地球軍ではない。再び核ミサイルを搭載したメビウス隊が発進してくる。

「プラントは撃たせないって言ってるだろっ!」

 ディアッカの叫びと共にバスターの長距離ライフルが核ミサイルの真ん中を撃ち抜けば、通り抜けた核ミサイルをオレンジフレーム・アストレイのビームライフルがフォローするように信管を撃ち。
 見慣れた白い機体・ストライクもアグニを使って核ミサイルを沈黙させれば、レッドフレームのストライクが同じレッドフレームのアストレイと共にダガーを行動不能にしていく。
 フリーダム・ジャスティス、そしてフライトは、襲ってくるカラミティ・レイダー・フォビドゥンの相手をしながらも次々と核ミサイルを撃ち抜いていった。

「バカ野郎、そこで呆けてるなんてお前らしくないだろうが!」

「……ラスティ?」

 目の前で動き回るMSに見入っていたデュエルに飛び込んできた通信。それは戦死したと思っていた同僚の声。先に生きているとは聞かされてはいたが、自分を混乱させるための与太話と思っていたことも事実で。だからこそ、彼らしくない間抜けな声で聞き返してしまった。

「話なら後で聞いてやる。今はプラントを守ることが先決だろうが!」

「あ、ああ」







「……小賢しいマネを……」

 もたらされた情報……核を撃ち落しているのがエターナルを中心としたクライン派であること。それをきいて、パトリックは鼻先で笑い飛ばした。
 彼には、ラクス達が地球連合軍に技術を提供し、再び核の恐怖に陥れておきながら、撃たれるギリギリにそれらを堕とし、プラントの危機を救ってみせる―――――。そういう茶番劇を演じているようにしか見えなかった。
 しかし周りはそうは思っておらず、どうすればいいのかわからずにうろたえていた。

「まぁ時間稼ぎをしてくれたことには礼を言ってもよいがな。―――――ジェネしス、最終段階だ!」

 その命令に、制御室の通信士がザフト軍MSへと1つの命令を送る。







「全軍射線上から退避―――――ジェネシスだと?」

 最近は一般兵の間でも噂になっていた最終兵器の名前。まさか実際に使うことがあるのだろうかと考えてもいたのだが、射線上から退避という言葉が何を示すものかわからないわけでもない。
 見渡せば、バスターなどは遠ざかった位置にいるものの、フリーダム・ジャスティス・フライトの3機は自分の近くにいる。イザークは思わず通信回線を開いて叫んでいた。

「お前ら、ここから下がれ! ジェネシスが撃たれる!」







「ジェネシス、だと!」

 イザークの言葉に従って移動したフライトからもたらされた通信。彼女の言葉を聞いたユーリは二の句を失った。あまりのうろたえようにそれの意味を知っているのかどうかが問いかけようとしたとき。

「ヤキン・ドゥーエ後方に巨大な物体!」

 AAのサイが上げた言葉どおり、巨大なパラボラアンテナのような建造物がその姿を具現させる。その巨体は停止している3隻からも肉眼で確認できるほど。

「いかん! 皆逃げ……」

 ユーリはその言葉を最後まで言い終えることができなかった。
 アンテナから伸びた1条の光、それは滞空したままの地球連合軍のMS、宇宙艦を飲み込んでやがて消えた。



「……こんなッ!」

 イザークの指示がなければ自分達も同じ末路を辿っていたであろう。
 先ほどまでいた位置を貫いていった大きなエネルギーがもたらした見渡す限りの惨状、そしてそれを使うことを躊躇わなかった父の決断に、アスランは言葉を失った。そして、キラは止められなかった自分を悔やんで操作パネルに拳を振り下ろす。







 ドミニオンでも。
 滅びの光条を受けることをは免れたものの、ブリッジでは先の光景に呆然としていた。そんな中、アズラエルのみが顔を憤怒で紅く染め、アームレストを色の失った指できつく握り締めていた。
 付近の僚艦から通信を求めるコールが鳴り響き、ナタルは自失状態から立ち直った。カラミティ・レイダー・フォビドゥンの主力MSについての無事は確認していないが、今の状態では生き残った自分達がその場を離れることが先決と考えた彼女は、ドミニオンを中心にして宙域からの撤退命令を下す。
 ……今は命令系統を無視しても、この艦に乗っている男の存在があるから大丈夫だ、と自分を納得させながら。







「MS全機、各艦に戻れ!」

 バルトフェルドの言葉が耳に届く。それに従い帰投しようとした矢先、は目の前で行なわれ始めた光景から目を反らせなくなった。

「……何が野蛮なナチュラルの虐殺よッ!」

 頭の中がクリアになるのは、久しぶりの感覚。それに戸惑うことなく、はフライトを駆る。狙うは戦意を失って逃げ始めたダガーを狙う5機のジン。ロッドを振り回して1度に3機の頭部カメラを破壊して、飛ばした刃が残る2機のライフルを破壊する。
 休むことなく次のゲイツ頭部を蹴り飛ばして、後ろ手に突き出したロッドで新たなジンのライフルを叩き落して破壊する。……しかし、到底全部助けられるわけでなく、助けても他のジンに破壊されるダガー。

!」

 声と共にフリーダムのラケルタが、フライトを取り囲んでいた数機を一瞬にして沈黙させる。

「お願い、今は我慢して!」

「いやっ! キラ、離して! 見てるだけなのは、こんなのはいやなのぉッッッッッッ!」

 フライトの手をとってその場を離れるフリーダム。
 泣き叫んでその場に残ろうとする彼女の叫びは無益な殺戮を繰り返す宙息に残り、キラの胸を大きくえぐった。



黒マント製作機から
 殺戮にキレるのはキラじゃなくてヒロインにしちゃいました。


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