「あんなモノを作る時間を与えたのは、お前たち軍なんだからな!」

 アズラエルの子供じみたような責任転嫁の叫び。しかしそれは紛れもない事実であることには代わりない。
 もっと早くに戦争を終決させていれば、もっと早くにプラントを滅ぼしてさえいれば。被害は最小限にとどまり、あんな訳のわからない兵器を作らせることもなかった。―――――彼はそう叫んでいるのだ。

「アレならゆうに地球を狙えるんだぞッ!!!!!!」

 わかってはいたけれども、ナタルたちが考えるのを無意識に排除していた事実。

「何が『ナチュラル共の野蛮な核』だ! アッチのほうがはるかに野蛮で非人道的なものじゃないかッ!」

 憎々しげにアームレストを叩いて立ち上がったアズラエルはきっぱりと。

「絶対に、何が何でも、あの野蛮な兵器をプラント諸共、叩き壊すんだ!
 わかってるな、地球が撃たれてからじゃ遅いんだからなッ!」







「あれは核爆発によって発生したエネルギーを直接コヒーレント化した、巨大なγ線レーザー砲だと思います」

 キラとがエターナルのブリッジに入ると、クサナギのエリカ=シモンズの推論が述べられていた。
 それぞれのブリッジと通信が繋がり、ブリッジクルーと各艦のMSパイロットが集められている。

「もしあれが地球に向けられたならば……。
 巨大なエネルギー幅射が地表を覆い焼き払い、生物の70%以上は死滅するものと思われます」

 その言葉に、ニコルはぎゅっと目を閉じて唇をかんだ。初めて見た海のきらめきを、その時に受けた感動を思い出してしまったせいもある。だからなおのこと、それを消し去ろうとする同胞の暴挙が許せない。

「シモンズ女史の言う通りだよ。
 ジェネシスはNジャマーキャンセラーにより、核エネルギーだけを利用している兵器だ。
 アンテナ状になっているミラーブロックに乱反射させた光を1点に集め、それを撃ち出す。
 もとは『ソーラーセールシステム』と呼ばれ、真空中の舟に風の代わりに光を送るシステムのはずが……」

「……でもそれは軍事転用され、死の光を送るものに成り果てた……と」

 AAのマリューの言葉に、ユーリは小さく頷いた。

「核の光を乱反射させることで、第1層のミラーブロックは焼けただれ、使い物にならなくなる。
 それを換装しなければならず連射ができないというのが、唯一の救いだな」

「また……撃ってくると思うか……?」

 カガリが絞り出すように泣き出しそうな顔で言った言葉に、隣にいたラスティがポンポンと頭を叩いてやる。まるで兄が妹をあやしているように見えてしまう。

「強力な遠距離破壊兵器を作る目的って、脅しだろ? 撃ってきたらこっちも撃ち返すぞっていう」

「わかりやすく言えば、ディアッカの意見が正しいな。あんな力の本来の目的は、牽制と抑止だ。
 でも、もう撃たれちまったからな。核も、アレもさ……」

 ムウの言葉に、3隻の間には沈黙が流れる。

「もう牽制も抑止もできないから、撃つのはためらわれない。……そういうことですか?」

 おずおずと上がったアサギの言葉。

「戦場で初めて人を撃ったとき、俺は震えたよ……」

 突然上がった脈絡のない声、それは聞き入っていたバルトフェルドのもの。

「でも周りから『すぐ慣れる』と言われて……確かにそうだった」

 その言葉は、聞いているものすべての胸に突き刺さった。
 人やMSにためらいもなく銃口を向けられるようになったのはいつからだろう。奪ってしまった命に涙を流さなくなったのはいつからだろう。

「……認めたくないですけれど……地球軍もプラントも、次の使用をためらいませんね」

「うん……、その証拠に地球軍は、第1群のミサイルが撃墜されても、すぐ次を撃ってきた」

「そして今のプラントは、父は、思った以上の結果に満足し、2射目を急がせているんだ―――」

 目を伏せた彼女の肩をキラはきつく抱き寄せた。も空いた彼の手をしっかりと握りしめる。
 またアスランも拳を握ったままでうつむいた。ラクスは小刻みに震えるそれに手を当ててから顔を上げた。

「核ミサイルもジェネシスも、本来ならば撃たせてはいけない力。
 相手を殺し滅ぼすだけの力など、軽々と手にしてよいものではないのです。
 我々は気付くのが遅すぎたのかも知れません。遅れた分だけ、互いに余計な力を与えてしまった。
 ですが、今からでも遅くはありません。
 ……これ以上の悲しみが増える前に、憎しみの鎖を繋げないためにも、止めなくてはなりません」







 地球軍が再び進軍を始めたという知らせを聞いて、エターナル・AA・クサナギも動き始める。
 今度こそ止めなければならない。
 プラントからしても、地球軍から見ても、たった3隻の戦艦と11機のMSというひ弱な勢力でしかない。しかし、願うもののために戦うという彼らは、自らの願いのために望む未来のために力を振う。







 2射目ですべてが終わる。
 そう信じているパトリックの背中を見ながら、クルーゼは小さく笑みを洩らした。
 少したきつけただけで面白いように踊ってくれる相手に感謝している。人が人を撃ち、すべてを滅ぼそうとしていることに、目の前の彼はまだ気がついていない。それこそがクルーゼの求める世界だというのに。

「これも業の形なのだよ」

 その呟きは、まだ慌ただしさの残る室内で聞きとがめられることはない。




「ザラ議長閣下、これですべてが終わりますかな」

「月基地を撃たれてもなお、彼らに反撃する意志が残されているようなら、3射目もありうるがな」

 その言葉に制御室にいた幾人もの兵士の手が止まる。
 月の次に撃とうとしているもの、そこがどこであるかわかったから。
 そして兵士たちは胸の内で願う。パトリックの言葉が間違いのものであってほしいと。
 速やかに抵抗をやめて、母なる惑星を撃たせないでほしいと―――――。



黒マント製作機から
 ザフト兵も本当はこうであってほしいなという願いが最後の1文です。


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