「場所をあけてくれないか?」

 俺の声に気がついて、コックピットに居た研究員が顔を上げた。

「何だお前は。ここは遊び場じゃない、子供はさっさと帰った」

 ちらりとこっちを見た後、手をひらひらさせてきた。

「レガール少佐、席を開けてやれ。そいつがそのMSのパイロットということだ」

「こんなガキが、ですか?」

 レガールと呼ばれた男は、胡散臭そうにこっちを見てきた。
 俺は『普通のガキじゃないもんで』と言葉を返しておく。と、そこで。

「ガキのかけた簡単なパスワードが解けない人は、人のこと馬鹿にする前に、さっさとどいてほしいんだけど」

 ……オ願イデス、静カニシテイテクダサイ。
 俺は心底そう思いながら声の主を見た。
 どうやら、こちらが無視したくても、あっちがさせてくれない。

「ほら、さくさく動いてくれないと、の気が変わって、ロックを外してくれなくなっちゃうかもね」

 ……きら先輩、勝手ナ言イ分ヲ作ラナイデクダサイ。
 食堂にいるみんなに危害を加えないという、こちらの提示した条件を守ってもらえたのだから、ハゲ狸の提示した条件に、答えないわけには行かない。
 人のことを『裏切り者』呼ばわりしてくれたにせよ。
 とりあえず。

「あっちの人が何か言ってますけど、気にしないでくれるとうれしいです」

 ちらりと振り返ってみると、頬を引きつらせたキラ先輩が見えた。
 しかし、この場は無視。

「まぁロックを解除してくれるんなら、俺はそれで構わないがね」

 レガール少佐がコックピットから出た後、入れ替わりに俺はシートについた。
 広いMSデッキには、俺のキータッチの音だけが響く。
 しかし、この静けさはもうすぐ破られることになるだろう。
 俺はそういう予感がしていた。






 一方。
 が出した交換条件は、きれいに破られていた。

「俺たち、いつまでこうしていればいいんですか?」

「俺が知るわけないだろう」

 半分唇をとがらせたままのトールに、妬け気味に言い返すチャンドラ。
 さっきの状態から言えば、銃が突きつけられていないだけマシなだけ。
 相変わらずAAのクルーや民間人は一室に閉じ込められ、出入口には見張りの兵が4人ついているという、軟禁状態にあった。

「俺の想像なんだけどさ。
 艦長たちやストライクから情報を吸い出せるだけ吸い出して。
 そこでようやく解放ってパターンじゃないかな」

 ノイマンの言葉に、さっと表情を青ざめさせたのはやはり彼女だった。

「それまで、ずっとこんな状態なの?
 そんなの絶対に嫌よ。私、こんな狭くて汚いところで寝たくなんかないわ!」

「フレイ!」

 厳しい叱責に、彼女の体はビクリと震えた。

「そう思ってるのは君だけじゃない。
 自分の欲求ばかりを叫んでいるのは、何も知らない子供と一緒だ」

「なっ、なによっ……」

 今の自分を最も大事にしてくれるはずのサイからの言葉。
 奇しくもそれは、先にがなじった言葉と似ていた。
 大嫌いなコーディネイターからと、婚約者から。
 同じような意味合いの言葉をぶつけられて、フレイはまたもや言葉を失った。

「艦長達も連れて行かれちゃったし、キラともいないし……」

「これからどうなっちゃうのかな、俺たち……」



黒マント製作機から
 執筆速度が落ちてすみません。

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