|
「今のうちなら、俺1人でもAAに戻れる」 そんな声が耳に届いたのは、あの仮面の操るMS、ドラグーンとかいう武器から逃げ出して、フライトでストライクを抱えながら移動していた時だった。 プラントへ向かうドミニオンなどを追うAA。それに追いすがって、ようやく目視距離内に入った。向こうでも私たちが近付いていることがわかっているだろう。 「、お前は何かやりたい事があるんだろう」 「失敗は許されませんけど、成功すれば地球軍の進攻は止められると思います。 これ以上核を落としてはならない。だから、命令系統を破壊してしまえば……」 「……確かに失敗はできない方法だな、そりゃ。 でも、口にした以上は成功させる自信はあるんだろ?」 「フィフティー・フィフティーですけどね」 「『できないって言ってやらなかったら、もっと何もできない』と言ったのは、お前の旦那だろ」 「た、確かにそう言ったのはキラ先輩ですけどっ……。私のだ、だだだだだだだだ、旦那って……」 「おーおー、真っ赤になっちゃって。人前で濃厚なキスシーンを披露したくせに、変なところでウブだねぇ」 「ムウ兄!」 なおも笑い続けるムウ兄を、私はモニター越しににらみつけた。 「」 「……何ですか?」 さっきまで笑っていたと思ったら、いきなり真面目な顔つきでじっと見てきたので、私は少しうろたえた。 「キラのこと、いい加減先輩付けで呼ぶのはやめてやれ。お前たちはもう学生じゃないんだぞ。 志願した時点で同じ階級を持った連合兵になり、軍から離反した今は、同じ新型に乗って戦ってる仲間だ。 そして自他ともに認める恋人同士だろうが。……それなのに、いつまでも……」 「わかってるんですけど、なかなか切り替えられなくて。……でも、どうしていきなり?」 「さてね。何かちゃんと言っとかないと後で後悔しそうな気がしてさ。 それより、この距離からならボロボロのストライクでも単身で帰ることができる。 フライトはその手を放して、のやりたい事をやってこい」 「……わかり……ました。ムウ兄、それじゃ、気をつけて帰ってくださいよ」 「だーれに向かって言ってるの。俺は不可能を可能にする男だぜぇ? こそ気をつけていけよ」 声なく頷いた私は、フライトの手を開く。 ストライクがスラスターをふかして離れていくのを見送った後、私は頭上にあるグレーの戦艦・ドミニオンをまっすぐに見つめた。 これからやろうとしていることは、本当に失敗はできない。 失敗=死。 死ぬのは怖くない。だって、私は本当ならばユニウス・セブンで死んでいたはずだから。ううん、それよりも前。何度も地球軍に捕まったときに殺されていたかもしれない。 でもここまで生きてきたのは、そのことに意味があったのだと信じたい。誰かのために生きているのだと信じたい。そして、誰かを生かすために生きているのだと信じている。 「……ミラージュ・コロイド・ネクスト、展開」 ブリッツ・に使われていた地球軍の開発したミラージュ・コロイド。それにユーリ叔父様と私とで共同開発したプログラムを加えた。……それがミラージュ・コロイド・ネクスト。 フェイズシフト装甲を展開したその上から展開できるという、ほとんど掟破りのようなシステムだけれど、しかしその分エネルギー消費が大きい。Nジャマーキャンセラーを持つフライトだからこそ搭載に踏み切れたシステム。 「おまけに、これが初使用だもんねぇ……」 これが成功確率が半分だと言った要因。 十分なテストすらできなかったため、実戦での使用はもちろん初めて。というか、こういう特殊装備をつけたことを他の皆には公にしてないし……。今頃、いきなりフライトの姿が消えたんで、敵味方なく驚いている様が目に浮かぶ。 とりあえず、順調にステルスシステムは作動中。音もなく熱センサーに感知されることもなく、もちろんカメラアイに捕らえられることもなく、フライトはドミニオンの突き出した舷足の間に入り込んだ。 「第1段階突破ってトコ?」 大概どの戦艦も、自艦より少し離れた位置からの索敵になる。そうしないと、自分の艦のエネルギー反応まで拾っちゃって大変だからって聞いたことがある。 私はフライトをしっかりと艦に固定させた後、ハッチを開いた。 目指すは内部突入のためのエアロック。2番艦の割には武装も強化していなかったし、AAをまるごと転用したような印象を受けたドミニオン。だとしたら、エアロックなどの基本的な位置も変わっていないはず。 「ビンゴ!」 プシュッと開いたドアに、私は滑り込んだ。そして気密室内部から艦内へと通じるドアロックも開けて。 「ちょっとぉ……無防備過ぎません?」 簡単に入れたことに素直に喜べないのは、呆れから来るもの。残弾数の確認後、私は床を蹴ってブリッジへと向かった。 ![]() 黒マント製作機から 自分で考えておいてなんだけど……。 ミラージュコロイドネクスト、完全に掟破りだよね……。名前は安直なのにね。 To NEXT 連載TOP |